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空に星が輝く様に

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195部分:第十四話 夏の終わりにその十三


第十四話 夏の終わりにその十三

「一緒にいるうちに」
「ああ、本当に一緒にいるうちに」
「最初はそれ程でもなかったんですけれど。少しずつ」
「そうなっていったよな。少しずつだけれど」
「じゃあ私は」
「いいんだよな、俺で」
 陽太郎は月美に顔を向けた。そのうえで問うた。
「キス。はじめてだよな」
「はい」
「それが俺で」
「御願いします」
 月美は勇気を出した。そうして陽太郎に顔を向けた。そのうえで応えたのだ。
「是非」
「わかったよ」
 ここまで聞いてだ。陽太郎はこくりと頷いた。
 それからゆっくりと近付いてだ。彼は言った。
「今からな」
「はい、今から」
 二人は見詰め合い抱き締め合った。そうして目を閉じて顔を近付け合ってそのうえで。夕陽の中で唇と唇を重ねたのであった。
 それが終わってからだ。月美はだ。真っ赤な顔で陽太郎に言った。
「キス、しましたね」
「うん」
「はじめてのキス。本当に」
「実はさ」
 波止場から街に戻ってきていた。その中での話だった。
「俺もだったんだ」
「陽太郎君も?」
「うん、はじめてだったんだ」
 こう言うのだった。
「実はさ」
「そうだったんですか」
「女の子と付き合ったこともなかったんだよ」
 このことも話した。
「実はさ」
「私と同じだったんですね」
「そうだよな。同じだったよな」
「そうですね。同じですよね」
「それでこうしてキスして」
「はい」
「はじめて同士だったんだな」
 そのことをだ。今心の中で噛み締めるのだった。それは陽太郎だけではなかった。
「不思議だよな、何かキスしたとは思えないよな」
「そうですよね、夢みたいです」
「それでも実際に今」
「はい、キスしました」 
 月美は頬を赤らめさせて述べた。
「確かに」
「そうだよな、俺達本当に」
「嘘みたいですけれど。けれど」
 月美は自分の唇に右手の指を当てていた。そのうえでまた言った。
「感触はまだ」
「残ってるんだ」
「はい、残ってます」
 微笑みは消えない。それはどうしてもだった。
「こうして今も」
「俺も」
 そしてそれは彼もだった。
「残ってるよ」
「ですよね。夢みたいなのに感触は残っていて」
「不思議だよ。あのさ」
「はい」
「また、ここに来ないか?」
 陽太郎も顔が赤くなっている。その顔で月美に対して言ったのだ。
「ここに。この波止場に」
「ここにですか」
「ここって人あまり来ないんだ」
 このことは自然に出た。
「朝に釣りに来る人がいる位でさ」
「それ以外はですか」
「うん、あまり来ないんだ」
 そうだというのだ。言いながら自分の右手を見る。遠くには砂浜が見える。それと防波堤も見える。まさに海の場所であった。
 
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