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空に星が輝く様に

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194部分:第十四話 夏の終わりにその十二


第十四話 夏の終わりにその十二

「とても」
「そうか、そこまで気に入ってもらってよかったよ」
「それでなんですけれど」
「それで?」
「何かこうした場所にいますと」
 月美の言葉がだ。少しずつうっとりとしてきていた。そうしてだった。
「いいですよね」
「うん、そうだね」
「何か。ロマンチックで」
 声は次第にうっとりとなっていっている。そうして。
「あの」
「今度は何だい?」
「陽太郎君がよかったらですけれど」
「俺がよかったら」
「はい、よかったらですけれど」
 こう言ってであった。
「いいです、私は」
「えっ、何がいいって」
「恋人同士ですよね、私達」
 顔を俯けさせてだ。そのうえでその顔を赤くさせていた。
「そうですよね」
「うん、そうだけれど」
 それは陽太郎も頷いた。まさにその通りである。
「それは」
「そうですよね。だったら」 
 言葉は中々出ない感じだった。しかしそれでも月美は言うのであった。
「キス・・・・・・ですけれど」
「キス?」
「はい、キスです」
 それだというのである。
「キスを御願いできますか」
「あの、キスって」
「駄目ですか」
 顔を俯けさせたまま陽太郎に問うてきた。
「それは」
「いや、嫌じゃないけれど」
「恋人同士ならキスをするって」
 また言ったのだった。
「そう聞きましたから」
「それでなんだ」
「私こういうことはよく知らないです」
 これは恋愛というものに疎い月美らしい言葉だった。
「ですけれど。それでも」
「いいんだよな、本当に」
 陽太郎も俯いてしまった。それでも言ったのだ。
「あのさ、俺が相手で」
「はい」
 陽太郎の問いにだ。月美はこくりと頷いてみせた。
「そうです。御願いします」
「俺なんかでいいんだ」
「陽太郎君だからです」
「俺だからって」
「はい、恋人ですから」
 そしてだった。さらに言ってきたのだった。
「好きですから」
「俺のことが好き」
「言うことが凄く恥ずかしいですけれど」
 実際にその顔が真っ赤になっている。それは否定できなかった。
「それでも。好きです」
「俺のことが好きなんだ」
「陽太郎君はどうですか?」
 月美からの問いも来た。
「それは。私のことは」
「あのさ。俺もさ」
「はい」
「言いにくいんだけれどさ」
 自然と前置きせざるを得なかった。そのうえでの言葉である。
「俺も。月美のこと好きだよ」
「私のことがですか」
「何か。一緒にいるうちにさ」
「そうですよね。少しずつ」
「好きになったよ、本当に」
「私もです」
 そうして意味においてだった。二人は同じだった。そうした自然に形成されていく恋愛感情だった。それが二人の恋愛感情だったのだ。
 
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