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レーヴァティン

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第五十九話 名古屋の街その三

「薄味です」
「そやな、京都は」
「はい、全体的に」
「それで素材の風味を生かすんやな」
「そうした料理です」
「それ大阪とちゃうな」
「大阪の味は濃いですね」
 こう耕平に返した。
「基本的に」
「ああ、結構以上にな」
「同じ関西であっても」
「辛くはないけどな」
 それでもとだ、耕平は謙二に言葉を返した。
「大阪は濃いわ」
「それで京都は薄い」
「そこは全然ちゃうわ」
「その通りですね」
「その違いがや」
 まさにとだ、さらに言う耕平だった。
「大阪と京都の違いでもあるな」
「味の。そして料理の」
「どうしてもな。しかしほんまに東京の味はあかん」
「貴殿にとっては」
「別の世界の味や」
 耕平にとってはというのだ。
「ほんまにな」
「そこまで違うので」
「好きになれんかった」
「こっちの世界でもか」
 謙二はあえて言った。
「そのことは」
「実は気になってるわ」
「やはりそうですか」
「ほんま関東の味は合わん」 
 どうにもと言う耕平だった。
「それがしには」
「関西や名古屋の味がですね」
「名古屋はええねん」
 こちらの味付けはというのだ。
「ぎりぎり京都もな」
「京都はぎりぎりですか」
「味が薄いけどな」
 尚その味の薄さに怒ったのが織田信長だ、それで料理人を怒鳴りつけた逸話は彼の逸話の中でも有名なものの一つだ。
「それでもや」
「ぎりぎりで、ですか」
「それがしの許容範囲や」
「そうですか」
「けれど東京、江戸の味はな」
 こちらはというと。
「どうしてもな」
「駄目ですか」
「ああ、辛い」
「それもだだっ辛いですね」
「そや、しかも寒いやろ東京は」
 耕平は完全に彼等が起きた世界の話をしていた。
「からっ風で」
「空気も乾燥していて」
「あれもあかん、特にや」
 耕平はきし麺をすすりつつさらに話した。
「巨人や」
「野球ですか」
「あのチームは絶対にあかん」
 他の何よりにも増してという言葉だった。
「金にもの言わせて威張っててしかも優勝して当然やと思ってる」
「毎年優勝して当然だと」
「オーナーも威張ってる」
 正確に言えば『元』である。
「北の将軍様みたいにな、そやからな」
「東京で一番お嫌いなのはですか」
「巨人や」
 まさにこのチームこそがというのだ。
「巨人があるのが一番あかん、東京はな」
「そこまでお嫌いですか」
「うどんより嫌いや」
 東京の辛いそれよりもというのだ。
「絶対にあかん、それでや」
「東京はお嫌いですか」
「江戸もな」
「おうどんも寒さもで」
「巨人もや」
 これが第一というのだ。
「ほんまにな」
「左様ですか」
「ああ、自分も巨人は嫌いやろ」
「この七人全員がとなりますね」
 これが謙二の耕平への巨人についての返答だった。
「貴殿は特にとなりますが」
「ええこっちゃ。巨人は応援したらあかんチームや」
 まさにと返した耕平だった。 
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