とある3年4組の卑怯者
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157 交友会
前書き
スケートの全国大会の女子の部、激しい競い合いの中、古宮が、美葡が滑る。そしてリハーサルでは凄い演技を見せなかった有子真羽の本領発揮にはそれを見ていた藤木や瓜原、そして片山をも驚かせた。そして金がその有子、銀は黄花、そして銅は美葡が獲得することになった!!
「いよいよ表彰式だねえ。藤木の晴れの舞台だねえ・・・」
まる子は感動に浸っていた。
「うん、藤木君、今度はカナダに行くのね・・・」
「あ、そっか、今度は世界大会に行くんだ!」
「さすが、スケートの得意な藤木だね!」
まる子とたまえ、リリィはそのような会話をしていた。その一方、たかしは藤木を心の中で称賛していた。
(藤木君、やっぱりあの不幸の手紙が君を変えたんだね・・・!!今まで君はよく卑怯者と言われていたけど、もう君は最高のスケート選手だよ・・・!!)
「藤木、やるわねっ!」
城ヶ崎も藤木が凄いと思っていた。そして清水に帰ったら笹山に伝えようと思うのであった。
表彰式が始まった。リンクの一場所に表彰台が設けられた。男女の出場者達がリンクに集合した。
『出場者の皆様、お疲れ様でした。これより閉会式を行います。最初に表彰を行います』
アナウンス係が呼び掛ける。スケート協会会長が現れた。
『先ずは男子の部の表彰です。銅賞・瓜原かける君』
「はい」
瓜原は前に出た。会長から盾と賞状を貰う。
「瓜原かける君、銅賞おめでとう!」
「ありがとうございます」
『銀賞・藤木茂君』
続いて藤木が会長の元に向かった。
「藤木茂君、銀賞おめでとう!」
「ありがとうございます」
そして金賞の豆尾が前に出た。
『金賞・豆尾亮吾君』
「豆尾亮吾君、金賞おめでとう!!」
「はい、ありがとうございます」
藤木は豆尾に負けた事は悔しかったとはいえ、世界大会への出場権を掴むというノルマは達成できたので喜んだ。また、この場に応援に来てくれた皆も見てくれると思うと更に誇らしくなった。
(リリィ、見ていてくれたかい?僕は世界大会に行けるんだよ・・・!!)
観客から見ているクラスメイト達も爆睡中の小杉と嫌味しか言わなかった永沢を除き、皆拍手していた。
「藤木く~ん、すごいじょ~!!」
先程まで寝ていた山田は既に起きていた。
(お前は寝てただろ・・・)
はまじは呆れた。
『続いて女子の部の表彰です。銅賞・桂川美葡さん』
「はい」
美葡が前に出た。そして会長が盾と賞状を差し出す。
「桂川美葡さん、銅賞おめでとう!」
「ありがとうございます」
『銀賞・黄花蜜代さん』
「はゐ」
次は黄花が前に出た。
『黄花蜜代さん、銀賞おめでとう!』
「ありがとうござゐます」
そして有子が表彰される番となった。
『金賞・有子真羽さん』
「有子真羽さん、金賞おめでとう!」
「あㇼがとうございます」
こうして表彰が終わった。
『続いて会長様より閉会の言葉です』
スケート協会会長が言葉を続ける。
「出場者の皆様、お疲れ様でした!そしてご来場のお客様、様々な選手達の演技をご鑑賞頂きお楽しみいただけましたでしょうか?私は最高の大会になったと思っております。世界大会への道へ進むのは男女合わせて六名ですが、ここで破れ去った皆さんも皆さんなりの最高の演技を見せようと努力してきたのではないでしょうか?開会式の時も言いましたが、この全国大会に来る事も決して簡単な事ではありません。この大会に出た事もきっと誇れるものになるはずです。そして、ここで金・銀・銅を獲得した皆さんはさらに世界大会に向けてカナダへと旅立つ事になります。日本代表としての活躍を私は期待しております。それではこれにて小学生アマチュアスケート全国大会を閉会致します!ご来場のお客様、お忘れ物ないようお気をつけてお帰り下さい!以上です」
こうしてスケートの全国大会は終了した。
藤木は着替えてエントランスホールに来ていた。その場には3年4組の皆がその場にいた。
「おい、藤木!お前凄いぜ!」
大野の声がした。
「皆、ありがとう・・・」
藤木は感動のあまりに改めて皆に感謝した。
「おいらもすごい感動したじょ!」
「お前は寝てただろ!」
山田の感想にはまじが突っ込んだ。皆はハハハと笑った。
「ところで僕達は帰るけど藤木君はこの後どうするんだい?」
長山が聞いた。
「僕は出場者の皆で集まる交友会ってのに参加する予定だよ」
「なんだい、こうゆうかいって?」
山田が聞いた。
「それは皆で集まって食事したり、お互い喋ったりして仲良くする集まりだよ」
「何だって??食事だって!!??おい、俺も行くぜ!!上手いもん沢山食い放題なんて夢のようだぜ!!!」
小杉が目を光らせた。
「小杉、お前図々しいぞブー!!」
「何だよ、いいじゃねえか!!」
「小杉君、悪いけど交友会はスケートの出場者とその保護者しか参加できないんだ。悪いけど諦めてくれよ」
「ええ!!??諦めきれねえよ!!頼むよ、俺をお前の保護者として参加させてくれよ!!」
小杉の図々しさに呆れる面子であった。
「小杉クン、悪いけどそろそろ僕達は帰らなきゃいけないんだ。僕達は失礼するよ。Congratulations、藤木クン。それじゃ」
皆は帰っていった。なお交友会に出たがる小杉は大野と杉山に強制連行させられる形で退場した。小杉の「出させてくれよ~!!」という叫び声がいつまでもこだましていた。藤木はリリィと話すタイミング逃した事に少し残念がった。
「茂、それじゃ交友会に行こうか。皆と楽しんでおいで」
「うん、そうだね。母さん、父さん」
藤木家は交友会の場所へと向かった。
3年4組の皆は花輪家の自家用機に搭乗し花巻の空港を出た。たかしはまる子、たまえ、城ヶ崎と共に藤木の話をしていた。
「今日の藤木君、輝いてたね」
「うん、あいつはやっぱり冬の男だねえ!」
「私、明日笹山さんに藤木の事話すわっ!」
一方、リリィは花輪にある事を願い出ていた。
「花輪クン」
「何だい?リリィクン」
「明日一緒に駅で藤木君をお出迎えしてもいいかしら?私今日話できなかったから・・・」
「ああ、いいともさ。僕も明日は暇だから、藤木クン達の荷物を運ぶさ」
「うん、ありがとう・・・」
交友会の場所は盛岡市内のホテルの大広間だった。
「藤木君!」
藤木は振り向くと美葡が両親に幼稚園児と思われる男児と共に来ていた。
「美葡ちゃん」
「私のお父さん、お母さんに弟の桃也よ」
「こんにちは、藤木です」
藤木は美葡と彼女の両親と弟に挨拶した。
「藤木君、お父さんが藤木君の演技をビデオで撮ってくれたワ」
「ありがとうございます」
「ところで藤木君は美葡の友達のこずえちゃんと知り合いなの?」
美葡の母が聞いた。
「はい、堀さんが僕を大会に出る事を薦めてくれたんです。それに僕はスケートしか取り柄がありませんから・・・」
「でもそれで銀賞だなんて凄いよ、藤木君」
美葡の父が藤木を褒めた。
「はい、ありがとうございます」
「桂川さん、息子をそんな褒めてもらい、ありがとうございます」
藤木の母は礼をした。
「いえいえ」
「藤木君、今日は楽しもう」
「うん、そうだね」
藤木も美葡もその両親も楽しむ事に決めた。そして瓜原や黄花とも合流した。
「藤木君。お疲れ様。応援ありがとう。そうゐえば私、藤木君と同じ銀賞だね」
「黄花さん・・・、うん、これって偶然かな?」
「そうかもね」
「藤木君、わいの演技よりも凄かったで。まさか負けるなんてな」
「いや、でも瓜原君のジャンプも僕よりずっと凄いよ。僕なんて四回転のジャンプは跳べないからね」
「まあ、きっとできるようなるで」
「でも、瓜原君と藤木君、僅差だったワよ。結果は藤木君が上になったけど私はどっちも互角に見えたワ」
「え?おおきに・・・」
瓜原は美葡に照れた。
「あ、会長さんが入ってきたよ!」
黄花が会長の姿を見つけた。会長が言葉を発する。
「出場者の皆さん、そしてその保護者の皆様、お越しいただきありがとうございます。この交友会で交流を楽しみ、情報を交換してください。では、皆さん、ドリンクを片手に持ってください!」
参加者は茶やジュースを、保護者の一部はアルコールをグラスに入れていた。
「準備はできましたか?それでは、乾杯!」
皆は乾杯した。藤木はその場にいる瓜原・美葡・黄花とグラスを当てた。
「そうだ、瓜原君、住吉さんはどうなったんだい?」
「ああ、来とるようやが・・・」
その時、住吉がその両親と思われる人物と共に現れた。
「あの、貴方が瓜原君?」
その母親と思われる人物が瓜原に話しかけた。
「は、はい」
「すんませんねえ、うちの子が貴方に高圧的な態度を取って・・・」
「いえ、でも住吉さんの演技も凄かったです」
「ええ、おおきに」
その一方、住吉は何も口を開かなかった。
「ほら、重彦、謝んなはい!!」
「ああ、すまんかったな・・・」
「いえ、ええんです・・・。お疲れはんでした・・・」
「瓜原君、世界大会、頑張ってね」
「はい、おおきに・・・」
一方、藤木は古宮を探していた。
「古宮さん」
「藤木君。ごめんな、一緒に世界大会行けなくなって」
「いえ、気にしないで下さい。僕、古宮さんの分も頑張ります!」
「ありがとう、代表を獲った君もその友達も応援するよ」
「はい・・・」
一方で、美葡と黄花は進藤の所に向かっていた。
「進藤さん・・・」
「なんや、あんた達か」
「転倒、残念だったわね」
「うん、私は勝てんかったばい・・・。やっぱ九州は下手っちょなんかな・・・」
「そんな事ないワよ、男子の銅賞の子は大阪出身だし、スケートやるのに出身地なんて関係ないと思うよ。入賞は逃しても進藤さんは全体で五位じゃない。それでもきっと自慢になるワ」
「あ、ありがとう・・・。それから挑発してごめんなさい」
「ううん、でも進藤さんのスピンは確かな実力的だったわ」
「え?うん、あのスピンは地区大会の前から練習したんだ」
「だから凄い上手なのね」
美葡と黄花は進藤と仲良くなれて良かったと思うのであった。その時、会長がマイクで喋べり出した。
「えー、皆さん、お楽しみな所を失礼します。ここで、入賞した六人に前に来てもらいます!」
「ええ!?」
藤木は驚いた。
「ほら、藤木君、行ってきな」
「はい・・・」
男子では藤木、瓜原、そして豆尾が、女子では美匍、黄花、有子が皆から注目を浴びる位置に立った。
「ここに立った君達にはカナダのバンクーバーで行われる世界大会での活躍が期待されます。その前に君達は東京で一週間の合宿を行う事になります。ではその合宿でお世話になるコーチをお呼びしました!どうぞ!!」
会長はドアを手で指した。ドアが開く。一人は女性だった。そしてもう一人訪れた男性の方は・・・。
「か、片山さん!?」
後書き
次回:「期待」
交友会を満喫する藤木達はカナダ人の国際スケート連盟会員の人間から活躍を期待される。翌日、清水に帰って来た藤木を出迎えたのは・・・。
一度消えた恋が蘇る時、物語は始まる・・・!!
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