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とある3年4組の卑怯者

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156 伏兵(ダークホース)

 
前書き
 小学生のスケートの全国大会の女子の部、九州・佐賀県の進藤幸子が演技を披露。しかし、難しいジャンプに偏った構成が祟ったのか、ミスをしてしまう。しかし、それでも現時点で黄花に次ぐ二位につけていた!! 

 
 スケートの女子の部の大会は続く。進藤の後は近畿大会、中国大会、東北大会の金賞者と続いた。そして古宮の番が来た。古宮はリンクへと向かった。
『岐阜県高山中学校、古宮美鈴さん。中部大会金賞』
(次は古宮さんか・・・。頑張ってください・・・。どうかあの進藤って子より越えてくれ・・・!!)
 古宮の演技が始まる。最初はトリプルフリップ、トリプルトウループ、トリプルサルコウの連続だった。どれも綺麗に決まった。片山は彼女もメダル獲得候補の一人ではないかと考えていた。
(女子の中部大会の金賞者・古宮美鈴か・・・そういえば私が藤木と出会った高山のスケート場で滑っていたようだな・・・。点数の低いジャンプとはいえ、見事に決まっていた・・・)
 そしてアップライトスピン。これも高得点に値する。これももまた綺麗に決まった。次に見せるのはダブルトウループからのトリプルループだった。後半に入ると、ステップシークエンスをしてフライング足換えコンビネーションスピンを見せた。その時、古宮の体が一瞬よろけたのを藤木は見た。
(古宮さん・・・。どうか、失敗しないでくれ!!)
 古宮はトリプルアクセル、トリプルルッツからのレイバックスピンを行った。そして彼女が次に行うものは四回転アクセル。これがもし成功すれば構成点を合わせても黄花を超えるかもしれない。古宮が四回転アクセルに挑む。跳んだ。しかし、着地でずっこけた。最後で最高の見せ場を失敗するなんてみっともなくて悔しいだろうと藤木は古宮の気持ちを読み取った。古宮の得点が表示される。140.32。黄花を超えなかった。これで黄花の銅以上は確定した。もし美葡と有子が古宮の得点を上回った場合、古宮も進藤もメダルなしに終わる。

 残るはあと二人。関東大会金賞の美葡の番が来た。
『山梨県小学校桂川美匍さん、関東大会金賞』
「あ、あの子じゃない?堀さんの友達って・・・」
「そうだよね。関東大会で金賞って言ってたもんね」
 まる子とたまえはその会話をしていた。リリィが会話に入ってきた。
「え?」
 リリィが会話に入ってきた。
「前にみどりちゃんの友達の堀さんに会った事覚えてる?」
「ああ、あの凄い可愛い人?」
「うん、その堀さんが藤木に紹介してた子だよ」
「ふうん・・・」
 リリィはみどりとは二度顔を顔を合わせていたが、その堀と言う女子とは一度会ったのみで、よくは知らなかった。ただ、かなりの美少女だった事は知っている。しかし、みどりが藤木の事を知っていて、初めて会った時みどりは「友達に好きな人が獲られたかもしれない」と言っていた。もしかしたらそのみどりが好きな子は藤木で、その友達が堀と言う事は藤木は堀にも鼻の下を伸ばしていたのか?また彼女が暴行を受けたというその時、彼女が藤木に会いたがっていた事も気になる。藤木は不幸の手紙の事件で嫌われた時に彼女がスケートの大会に出る事を藤木に薦めたと言っていた。また、リリィはもしみどりが藤木を好きになっているのならば藤木はみどりをどう思っているのだろうか?しかし、リリィその事について今は考えないようにした。

 美葡が滑り出す。まずはトリプルサルコウ。そして着地するとすぐ様フライングシットスピンを決めた。そしてステップシークエンスをしてトリプルルッツとトリプルトウループを決めた。ターンした後、トリプルループ、しかし、これが転倒。そして足換えコンビネーションスピンを見せた。今度はダブルアクセル。そして彼女の必殺技ツイズルでターンし、そのままのキャッチフットでレイバックスピンを決めた。そして締めにトリプルサルコウをした。美葡が滑り終えた。
(どうか、美葡ちゃんの演技、高得点になってくれ・・・!!)
 藤木はそう祈った。何しろ美葡は堀の友人であり、堀は不幸の手紙の事件で自分と友達になってくれた。その縁があってか、藤木は彼女も応援している。どうか彼女も全国大会の切符を掴んで欲しいと言うのが藤木の切実な願いだった。
 美葡の得点が出る。140.50。古宮よりもわずかに上回った。同時に進藤の敗退は確定した。そして美葡は黄花を超えなかったため、金は無理だったが、銀か銅は決まった。後は有子の結果次第で古宮が銅を獲得できるかどうかである。現時点で古宮は三位の為、金と銀の可能性は消えている。
「なあ、藤木君」
「瓜原君、どうしたんだい?」
「あの有子って人、気にならへんか?わいはもしかしてあの人が金になりそうな気がしてうんや・・・」
「そういえばそうだね。リハーサルでは本気出していなかったって言ってたもんね・・・」
 もしかしたら彼女は出場者達を驚かす番狂わせの伏兵になるのだろうか?藤木は彼女がより気になった。

『北北海道宗谷小学校、有子真羽さん。北海道大会金賞』
 有子がリンクに現れた。そして滑り出す。ターンし出してすぐに見せたジャンプはトリプルループ。まさに美しい。瓜原が見せたジャンプより高く跳んでいるかもしれない。華麗にターンしていく。そして、ストレートでステップシークエンスをしてトリプルルッツ、トリプルトウループ。これも失敗がない。さらにフライングキャメルスピン。これもまた美しく決まった。
「凄い、ノーミスの上にこんなに綺麗に決まるなんて!!」
 藤木は驚いた。
(リハーサルとは全然違う演技・・・。まさか本番の為にリハーサルでは無気力なふりをしていたって事!?)
 古宮は有子に何かあるとは感づいていたが、彼女の演技があまりにも素晴らしすぎるので驚いた。もしかしたら彼女が上位に来て自分は敗退するかもしれない。そう思ってしまった。
 有子の演技が続く。キャメルとレイバックのコンビネーションスピンを行った。そしてトリプルルッツ、ダブルトウループ、ダブルループを綺麗に決めた。そして今度はレイバックスピン。これもレベル4は確かだ。そして最後に決めたのが、何と四回転アクセル。それも完璧に四回転で跳び、転倒する事もなかった。それどころか着地時にイナバウアーの姿勢になっていた。これは観客が盛り上がった。片山も驚くばかりだった。
「す、凄ゐわ・・・」
「もしかしたらあの人が金賞かも・・・」
 美葡と黄花は有子の演技に驚くばかりだった。そして進藤はこの有子はリハーサルではこれといった目立った演技がなかったため全国大会に行けたのはマグレだろと思っていたが、彼女の本物の演技を見て、そして自分の演技の直後に自分の焦りを説いただけの事から彼女はただ者ではないと思っていた。そして古宮はこれは負けてしまったと思った。
 そして有子がリンクから引き上げる。点数が出た。なんと171.98。黄花の得点を大きく更新。そして今大会の最高得点だった。古宮は悔しがった。なぜなら自分のスケートはこれで終わってしまったのだから。
「凄いな、あの人・・・」
「うん・・・」
 藤木も瓜原も驚くしかなかった。片山も驚いた。
(あの有子真羽・・・。リハーサルではこれといった所がなかったが、本番で見せた本気は凄い・・・。これが俗に言うダークホースって奴か・・・)
 これで女子の部の大会は終了した。後は表彰と閉会式を残すのみとなった。 
 

 
後書き
次回:「交友会」
 全国大会銀賞という成績を収めた藤木は大会後に行われる交友会に参加する。出場者達と交流する中、スケート協会の会長はある人物を招待していた・・・。

 一度消えた恋が蘇る時、物語は始まる・・・!! 
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