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真田十勇士

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巻ノ百四十 槍に生きその十

「大坂方自体にじゃ」
「将の将じゃ」
 ここで言ったのは兼続の主である景勝だった、彼が言うのだった。
「総大将じゃ」
「はい、大坂方はです」
「右大臣殿が総大将じゃが」
「それは名目上のこと」
「実際の総大将は違う」
「茶々様です」
 兼続は己の主に述べた。
「そしてあの方は」
「戦も政も何も知らぬ、ではな」
「この度も同じです」
「先の戦、そしてこれまでとな」
「勝手ばかり言われ」
 そうしてというのだ。
「乱すばかりで」
「だからな」
「勝てませぬ、ここで大坂方が右大臣殿も出られ」
 総大将である秀頼がだ。
「御自ら槍を取られ戦われるならな」
「士気も上がりな」
「勝てるやも知れませぬが」
「茶々殿は勝手を言われるわ」
 間違いなくとだ、景勝は言い切った。
「だからじゃ」
「はい、その為に」
「右大臣殿も動けぬ」
「出陣されたくとも」
「おそらく城から出ることは出来ぬ」
「それではです」
「幾ら真田殿や他の御仁が戦おうとも」
 勇猛かつ果敢にだ、今の幸村達の様に。
「しかしじゃ」
「士気が極限まで上がらず」
「そこで遅れを取ってな」
「敗れますな」
「必ずな」
「そうなるでしょう、あの方が総大将であられる限り」
 兼続は茶々のことを苦々し気に言った、城の天守を見つつ。その下に茶々がいることがわかっているからだ。
「大坂は勝てませぬ、そして」
「攻めきれずな」
「そうしてです」
「ここで攻めきれぬとな」
「滅びるだけです」
「そうなるわ、茶々殿を誰かが止められれば」
 大坂にいる者がだ。
「こうはならなかったが」
「大和大納言様がおられれば」
 兼続は秀長のことをここで話に出した。
「そうであっていれば」
「今の様にはなっていなかったわ」
「間違いなく」
「そうであるな」
「あれではです」
 茶々が主ならばというのだ。
「どうにもなりませぬ」
「まことにな」
「そのせいで今もありますから」
 それだけにというのだ。
「まことに残念ですが」
「真田殿もな」
「勝てませぬ、大御所殿の御首も」
 幸村が目指すそれもというのだ。
「取れぬでしょう」
「そうであるな、しかし真田殿はどうなるか」
「おそらく一人また一人とです」
 七人の幸村達がというのだ。
「力尽きそうして」
「討ち取られるか」
「そうなるでしょう」 
 まさにというのだ。
「このままいけば」
「やはりそうなるな」
「他の将の方も落ち延びねば」
「討ち取られていくな」
「そうなります」
 兼続は冷静にどうなるかを読んでいた、今の戦いが。そのうえで彼等も戦に入っていった。その戦の場では。
 幸村以外の大坂の者達も戦っていた、明石もだ。 
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