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真田十勇士

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巻ノ百四十 槍に生きその九

「木の葉隠れ、しかしこれまで以上にじゃ」
「何という木の葉の数じゃ」
「しかも鋭いぞ」
「刀の如き鋭さじゃ」
「何という強さじゃ」
「これ程までの木の葉隠れを使うとは」
「これこそ祖父真田大助より授かった術」
 祖父と孫の絆もありだ。
「この術破れるものなら破ってみよ」
「うう、これは進めぬ」
「あまりにも強い」
「猿飛佐助恐るべし」
「何という者よ」
 敵兵達も戸惑うばかりだった、十勇士達のそのまさに鬼となった戦ぶりに幕府の兵達は退くしかなかった。
 しかもだ、幸村がだ。
「何っ、ここにも真田殿!?」
「ここにもおるぞ!」
「何じゃ、至るところにおられるぞ」
「影武者か!?」
「いや、影武者にしては強いぞ」
「真田殿ご自身の様じゃ」
 幕府の者達は幸村を戦場に何人も見て驚いていた。
「これはどういうことじゃ」
「何が起こっておるのじゃ」
「真田殿が何人もおるぞ」
「忍術か!?」
「これは忍の術か?」
「いや、あれは」
 兼続にはわかった、それが何故かを。
「御仏から授かった術じゃ」
「といいますと」
「それは」
「御仏から授かった術とは」
「どういったものでしょうか」
「噂で聞いたことがある」
 兼続は戦の場で戦う真田の軍勢を見つつ言った。
「修行を極めその時にな」
「御仏からですか」
「力を授かり」
「そのうえで使う術ですか」
「そうなのですか」
「北斗七星の術を使えるという」
 まさにというのだ。
「そうした者はな」
「では」
「真田殿はですか」
「その修行を行い」
「そしてですか」
「術を極められ」
「北斗七星の力を授かった」
「そうなのですか」
「そうじゃ、それでじゃ」 
 それ故にというのだ。
「今真田殿はじゃ」
「七人ですか」
「七人おられるのですか」
「術の力で」
「そうなのですな」
「そうじゃ、北斗七星は七つの星じゃな」
 七耀、それだというのだ。
「それがあるからじゃ」
「それでは」
「今の真田殿はですか」
「その力を使われていて」
「七人になられていて」
「戦われていますか」
「そうじゃ、しかしあの術を使える御仁がおられるとは」
 まさにと言うのだった。
「真田殿恐るべしじゃ」
「ううむ、では」
「今の真田殿は七人で戦われていますが」
「采配も執られている」
「そうなのですな」
「あの真田殿がな」
 兼続は周りの者達にこうも言った。
「だからこそ強い」
「お一人だけでもというのに」
「それが七人ともなりますと」
「余計に強く」
「それで、ですな」
「あの戦ぶりじゃ、しかし」
 ここでこうも言った兼続だった。
「幾ら真田殿がお強く七人おられ十勇士が揃っていようとも」
「それでもですか」
「この度の戦では」
「そう言われますか」
「足りぬ、何が足りぬかは」
 兼続はそれもわかっていた。 
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