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提督はBarにいる。

作者:ごません
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マメに食べよう!豆料理特集・1

「はぁ……ま~た面倒な事を押し付けやがって、本土のモグラ共め」

 横須賀から帰ってきた。一週間という長丁場の出張だったが、本当に疲れた。肉体的にじゃなく、気疲れだがな。

「お疲れ様。それで、私達はこの後どう動くのかしら?」

 同行していた加賀が、俺を労うように肩を揉んでくれている。向こうにいる間は会議やら会談やらで座りっぱなしだったからな、肩も首もガチガチに固まってしまっている。

「あ?とりあえず食糧掻っ払った連中探すのに探索用の艦隊組んで虱潰しに出撃だろうよ……あ~、そこそこ」

「となると、軽巡と駆逐艦、水上機母艦が主軸ね」

「あぁ。そこに空母やら他の艦種を加えるかは出撃する海域次第ってトコだ……ふぅ、ありがとよ。大分楽になった」

「どういたしまして。じゃあ、私は休ませてもらうわ」

「あぁ、しっかり休んで明日からはまたバリバリ頼むぜ?」

 そう言葉を交わし、首に腕を巻き付けてきてねだる加賀と口付けを交わす。30秒程唇同士を密着させ、舌を絡ませて互いの唾液を貪るように交換する。名残惜しそうに離れる際には、てらてらと光る透明な糸が2人の間に繋がっていた。

「……おいおい、生殺しか?」

「あら、私の所に来ていいんですか?一週間も会えなくて奥さんが心配なのでは?」

「バカ言え、火ぃ点けた責任は果たして貰うさ」

 俺はそう言って部屋を出ようとしていた加賀を捕まえ、執務室の鍵を掛けた。






 明けて翌日。執務室の隣の仮眠室では、まだグチャグチャのままのシーツの上に気絶したように眠る加賀が横たわっている……まぁ実際、最後の方は気絶してたも同然の状態だったが。一応今日の俺の予定はナシ。完全なオフ日の予定ではあるのだが……昨日の夜から『店開けてくれ』コールがやかましいことやかましいこと。たかだか一週間居なかっただけでこの有り様だ。だってお前ら、俺が居ない間も間宮とか鳳翔のトコで飲んでただろうが?と酔っぱらい共に尋ねると、

「提督の店は一味違う」

「鳳翔さんは限界まで飲ませてくれない」

「提督と飲める空間が大事」

 と何とも嬉しいやら悲しいやらな意見が多数。じゃあ仕方ねぇ、店を開けるか……と思ったが問題が1つ。

「食材が……無い」

 一週間も店を開けないってんで、常備菜も生鮮食品も全部出張前に放出してやったお陰で、冷蔵庫はすっからかん。あるのは冷凍庫に入ってる肉や魚がちょびっとに、保存食の缶詰やらレトルトばかり。さてどうしたモンかと頭を捻っていると、コンコンと執務室のドアをノックする音が。

「司令さ~ん、おはようございますぅ~♪」

「おぉ、山雲か。おはようさん」

 やって来たのはウチの食糧生産の要とも言える山雲農園の主、山雲だった。その手には大きな段ボールが抱えられている。

「ゆうべはぁ、お楽しみでしたねぇ~?うふふふふふ♪」

 ネタが古いぞ、ネタが。なんでドラ〇エⅠのネタなんて詞ってんだよ。

「んな事より、抱えてるそれは……野菜か?」

「そうで~す。お豆さんがい~っぱい採れたのでぇ、お裾分けに来ました~♪」

 そう言って山雲の下ろした段ボールの中には、様々な種類の豆が入っていた。蚕豆に、いんげん、エンドウ豆にグリーンピース。それに少しだが枝豆もあるな。豆類には意外と6月辺りから旬を迎える種類が多い。保存も利くし、料理で味を変え品を変え、レパートリーを多くもしやすい。

『今晩は豆料理でいくか』

 と思い立った。





 思い立ったが吉日、という事で執務室のドアに『開店準備中・邪魔したらキレる』と貼り紙をしておく。これでよし。

「あとは豆料理で何を作るか、だがーー……」

 1週間ぶりに店を開けるとなると、客が押し寄せる事が予想される。というか、確実にそうなる。その場合、1度に大量に作れて尚且つ作りおきできるレシピがいいな。

「うっし、ポークビーンズとかの煮込み系にすっか」

 善は急げだ、早速取りかかろう。

《大豆でもイケる!ポークビーンズ》※分量:4人前

・カレー用豚肉ブロック:320g

・豚肉の茹で汁:100cc

・ブロックベーコン:120g

・にんにく:1片

・玉ねぎ:1個

・ニンジン:1本

・ホールトマト:400g

・トマトケチャップ:80g

・インゲン豆(水煮の缶詰が楽だぞ):240g

・クミンパウダー(あれば):適量

・チリパウダー(無ければ一味):適量 

・塩コショウ:適量

・パセリ(あれば):少々



 さて、まずは豚肉を下処理していく。フライパンに油を引いて熱し、豚肉をサッと焼いていく。軽く焼き目が付いたら、肉がひたひたになる位の水を注ぎ、柔らかくなるまで茹でる。茹で上がったら茹で汁を100cc取っておく。

 豚肉を茹でている間に野菜も下準備しておこう。玉ねぎとニンジンは豆の粒と同じくらいの大きさになるようにそれぞれみじん切りと角切りにしておく。にんにくもみじん切りだ。インゲン豆は生の豆の場合は柔らかくなるまで煮ておくように。缶詰ならそのままでOKだ。

 鍋に油を引いて熱し、ベーコンを炒める。ベーコンが焼けてきたらニンニクを加えて更に炒める。ニンニクから香りが立って来たら、玉ねぎとニンジンを加えて更に炒め、全体に油が回ったらケチャップ、軽く潰したホールトマト、豚の茹で汁を加える。

 豚肉とインゲン豆を加えたらクミンパウダーとチリパウダーを加え、10分程煮込む。味見をして、塩コショウで味を整えれば完成だ。クミンパウダーが無ければカレー粉少々を加えると、米に乗っけて美味しいポークビーンズになるぞ。トーストに乗っけても美味い。……勿論、そのままでも十分美味い。




 一応、1品は出来たが……。

「絶対足らねぇよなぁ、これっぽっちじゃ」

 一応大鍋一杯に仕込んでkg単位のポークビーンズはあるが、一週間ぶりの開店と聞いたらウチの欠食児童どもなら群れを成してやってくるぞ。

「……もう1品作っとくか」

 同じように豆の煮込み料理・フェイジョアーダにしよう。


《ガッツリ食べよう!フェイジョアーダ》※分量4人前

・カレー用牛肉:300g

・玉ねぎ:200g

・ニンニク:2片

・ソーセージ:300g

・黒インゲン豆(水煮の缶詰):800g

・オリーブオイル:適量

・ローリエ:2枚

・水:適量

・塩コショウ:適量


 フェイジョアーダってのは馴染みが無いかも知れんが、ブラジルの豆の煮込み料理でな。肉の入らないフェイジョンって豆の塩煮込みはブラジルじゃあ味噌汁みたいに米に合わせる定番の汁物らしい。……そう考えるとフェイジョアーダってのは豚汁みたいな物なのか?まぁそれは置いとくとして。

 まずは材料の下ごしらえ。玉ねぎとニンニクをそれぞれみじん切りにしておく。牛肉とソーセージも食べやすい大きさにカットしておく。インゲン豆の缶詰を使うならそのままでいいが、生の豆の場合は柔らかくなるまで煮ておくように。

 鍋にオリーブオイルを引いて熱し、玉ねぎとニンニクを炒めていく。香りが立ってきて玉ねぎが透き通ってきたら、牛肉とソーセージを入れて更に炒める。

 肉に火が通ったら、インゲン豆、ローリエ、ひたひたになる位の水を加えて10分煮込む。

 塩コショウで味を整え、ローリエを取り除いたら完成だ。意外と手軽なんだよな、フェイジョアーダ。まぁ、味噌汁的ポジションのスープや煮込みに手間かけていられはしないんだが。そんな事を考えていると、ドアをコンコンとノックする音が。

『山雲か?いや、んな訳ねぇか』

「開いてるぞ~、入ってこ~い」 
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