異世界にやってきた俺は、チート能力を駆使して全力でスローライフを楽しむ!
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安定
町のすぐそばの森。
目的の場所の少し離れた場所に一度俺たちは降り立つ。
空から直接飛び込んでいって敵を殲滅するのは、前の世界ではよくやったが、それは先手必勝という部分があって、しかも次から次へと敵が現れて大変だからといった理由がある。
だがこの世界はそこまでの状況になっていない。
だから気づかれないようにこっそりと近づいて攻撃する余裕もあるし、そこ背の妨害用の罠もなさそうなのだ。
となると、安全に攻撃できる方がいい。
とはいえ、と俺は思う。
これだけ町に近ければ気づきそうなものだが、そういえば妨害用の結界も貼られている。
それに、そもそもこの世界では“闇の魔力”事態をそんなに知らないようなのだ。
“闇の魔力”が噴き出ていてもなんだか変なものを感じる、といった程度かもしれない。
その間に事態はどんどん悪化しているのだが、この世界の人間は知るすべはあまりない。
そこで俺は気づいた。
「エイダはあの結界から洩れる“闇の魔力”が分かるのか?」
「ええ、変なものを感じるわ」
「それなら神聖魔法といった浄化系の魔法の才能もあるかもしれないな」
「そうなの? 魔法は火力で押し切るのが一番効率がいいから、攻撃魔法ばかり選んで勉強していたから考えもしなかったわ。それにそのタイプの魔法はかなりマイナーなタイプだから手出ししなかったの」
「かなりマイナー……マイナーか」
エイダの返しに俺は小さく呻いて考える。
前の世界ではマイナーどころか必須の魔法に近かったが、この世界ではそういったものではないようだ。
とはいえこうやって“闇ギルド”という存在が噴き出した“闇の魔力”を使ってこの世界でやらかしている。
そうなると潜在的には“闇の魔力”の影響も出てきて、それに対する対処法も本来ならば発達するだろうと容易に想像できる。
だが、そうはならなかった。
そもそも“闇の魔力”事態がこの世界ではそれほど観測されていないようなのだ。
「ああ、なるほど。ハデスのせいか」
「私がどうかしたのでしょうか?」
「“闇の魔力”がこの世界に影響しないように、何らかの手を打っていたんだろう?」
「……うん」
そこでハデスは頷く。
稀な能力を持つ闇の女神の力のおかげで、この世界は影響が今まではほとんど現れなかったのだろう。
そう考えると、闇を操る能力の女神が世界にいる場所といない場所では、“安定”に影響が出るのかもしれない。
それがこの世界の“平和”をもたらしているのだろう。
そう考えるとこの“闇ギルド”の連中を倒してしまえば、俺は思う存分スローライフを堪能できるかもしれない。
ゆるく平穏の中で都会の喧騒を忘れてのんびり暮らしたいといって何が悪い!
と思った所で俺はそこで違和感を感じる。
妨害用の結界が張られている、それは事実だ。
そしてそれは、まだ準備が整っていないからだと俺は考えていた。
だが、もしもそう思うだろうと相手が予測をしていたなら?
ここに敵が自分たちの居場所を知らせるにはどんな意味がある?
瞬時に脳裏によぎった疑問が俺の足をその場から飛びのかせていた。
すぐそばにいたエイダ達の腕もつかむようにしてその場から後ずさる。
同時に……俺の先ほどいた場所に、炎が吹きあがったのだった。
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