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異世界にやってきた俺は、チート能力を駆使して全力でスローライフを楽しむ!

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魔王よりも恐ろしいものがある

 日雇いのアルバイトを終わらせてから、エイダと移動する。
 そう俺が隊長に告げると、

「……そちらの水竜様のおかげで桶もいっぱいになっていてこのくらいの客の量なら……あとは俺達でやれば十分でしょう。今日の分の仕事は終わったということで印をつけますから、ギルドにもっていって仕事終了を伝えてください。仕事を放棄したとみなされると、ペナルティが課されてしまいますから」
「いいのですか?」

 俺はそう隊長に聞き返すと隊長は肩をすくめて、

「事情が事情ですし、これで俺の実家の仕事は終わりそうですから、終わり次第すぐに我々も城に向かいます。とはいえ……異世界人である貴方が全て解決してしまいそうですが」
「いや、俺はそこまでの力は……」
「謙遜されなくていい。貴方が自分の力を“隠そう”としているのは我々全員が初めて魔法を使ったのを見た時に気づいていますから」
「……もっと俺が隠すようにした方がよかった、と?」
「いえ、常人であれば気づかないような物ですが、こう見えても我々騎士団は、城の中ではちょっとしたものなのですよ」

 そう得意げに隊長は俺に言ってくる。
 だがそれは何となくわかる。
 この人たちは、“強い”と。

 前の世界に俺の周りにいた人間があまりにも“規格外”すぎて忘れそうになるが、“強い”部類の人物たちかどうかぐらいは俺だって判断できる。
 そう思っているとそこで隊長がにたりと嫌な笑いを浮かべた。

「だから君の力がどの程度か分かるのだよ。今後、今回の件が終わったら勧誘させてもらおう。わが騎士団には絶対に欲しい人材だからな!」

 などと隊長が、俺のスローライフへの夢を打ち砕くような、それこそ魔王が現れて何かを口にしたような絶望的な言葉を俺に告げたのだった。








 この世には、魔王よりも恐ろしいものがある。
 それは、“人間”だったのだ。
 俺はギルドに行って日雇いの仕事が完了したのを確認してから、全てを諦めるのは絶対に嫌だ、俺のスローライフ……なんだか無理そうだ、といったことを考えながらふらふらしていた。

 一応はお給料はもらえたが、それよりもこれからの事を考えると気が思い。
 そう思って深々と俺がため息をつくとエイダが、

「どうしたの? 隊長に会ってから元気がないわね」
「俺のスローライフが駆け足で遠のいていっている気がして」
「……巻き込んで申し訳ないと思っているわ」
「いや……まあ、本当に困っているなら少しくらいなら、いい。それに“魔王の傀儡”はミシェルが治すのは……大変そうだし」

 そう俺は返した。
 あのミシェルは脳筋だから、本当に殴ってそれを解除する。
 あの光景はいまだにちょっと、俺はもう少し平和的な解決方法があるのではと思い出すたびに思う。

 そう思っているとそこでエイダが、

「せめて暇なときはその、ソウタにつけられている拘束の魔法を解くお手伝いをさせてもらうわ」
「そうなのか? よろしく」
「うん、そういった意味で力になれると嬉しいわ」

 エイダがそう言って微笑み、そこで、俺たちは都市に向かう馬車の乗り場にたどり着いたのだった。


 
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