サトシ「25歳」〜理想と現実の先にあるもの〜
しおりを利用するにはログインしてください。会員登録がまだの場合はこちらから。
ページ下へ移動
553
館内(生活広間)にて
サクラ:「さぁ、上がって♪」
サトシ:「お邪魔します」
アヤメ:「いらっしゃ〜い♪おひさしぶり♪」
ボタン:「あのサトシ君ね♪」
サトシ:「お久しぶりです」
久しぶりにハナダ三姉妹の揃い踏みを
目の当たりにしたサトシは少し
遠慮しつつも挨拶を交わし、
リビングのような生活スペースの中で
サクラに言われ腰を下ろした。
サクラ:「ここを訪れたって事は
勿論カスミに何か用があったって事よね?」
サトシ:「はい、、大した事じゃないですけど」
アヤメ:「いいのよ♪あの子は未だフリーだし♪」
ボタン:「サトシ君が彼氏になって
くれるなら、私達も文句なんて何一つ無いわ♪」
サトシ:「いや、そうじゃなくて、、」
サクラ:「あの子の事なら
何だって聞いてちょうだい♪
内面の事はこれから知って行った方
楽しみだと思うからあまり話さないけど、
成長過程なら何だって教えてあげられるから♪」
ハナダ三姉妹:「さぁ、何か質問は?♪」
テーブルを挟み正面に仲良く座る三姉妹。
まるで面接のように見えるが、
サトシはとりあえず質問する事にした。
サトシ:「えっとあの、カスミは今どこに?」
サクラ:「あの子なら、今はジョウトの
ラジオ塔に居るわよ?」
サトシ:「ジョウトのラジオ塔に?」
アヤメ:「そうそう♪ラジオキャスターに
なるって言って、もう8年になるかしら」
ボタン:「ラジオかけても未だに声は
聞こえないけど♪」
サクラ:「それでも、音響を担当しながら
合間を縫って練習してるみたいよ?♪」
サトシ:「ラジオキャスターか、、、」
アヤメ:「まぁ、ここ(ジム)あの子も
色々あったからねぇ、、私達もだけど」
話を聞くと、カスミは15年前の事件を境に、
水族館共々ハナダジムの経営を中止し、
同時に三姉妹の世界旅行も中断。
今後の件について家族会議を開いた結果、
三姉妹はそれぞれ自由に仕事につき、
カスミもまたラジオキャスターの夢を
抱きジョウトへ向かったとの事だった。
サクラ:「あの子、負けん気が強いでしょ?
だから何年経っても自分の夢が叶うまで
戻って来ないと思うわ」
アヤメ:「ほんと強情な子で、
困っちゃうわよね♪まぁそれがあの子の
良いとこなんだけど♪」
サトシ:「、、そうなんですか」
(あいつ、俺の見えないとこで
ちゃんと目標持ってやってたんだな)
ボタン:「ところで、話を戻すけど
あの子に何か伝えたい事があって来たのよね?」
アヤメ:「そうそう♪サトシ君の言葉を
聞かせてちょうだい♪それとも、あの子の
連絡先を教えよっか?♪」
サトシ:「いや、大丈夫です。
渡す物があったついでに話をしようと
思っただけなので」
ボタン:「なら連絡先教えるわよ?」
サトシ:「、、いや、連絡先をもらっても、
すぐに連絡出来ないと思いますから、、、。
とりあえず今日は渡す物があったので、
それを受け取って頂けないでしょうか?」
アヤメ:「そう、、。いいわよ♪
なら気が向いたらいつでも
言ってちょうだい♪すぐ教えるから♪」
サクラ:「それで、あの子に渡す物って?」
サトシ:「これです」
アヤメ:「これは指輪!、、ではなさそうね」
ボタン:「、、自転車の引換券?」
サトシは三姉妹に、自転車の引換券を渡した。
サクラ:「なぜ自転車?」
サトシ:「昔、俺がカスミの自転車を
壊しちゃいまして、、。
遅くなって悪かったと、カスミには
そう伝えて下さい」
自転車の引換券に目を通す三姉妹。
そして、サトシは立ち上がった。
サトシ:「、、あと一言、”頑張れ”って
伝えておいて下さい。お前なら出来ると」
サクラ:「、、サトシ君」
サトシ:「お話しを聞かせていただき
ありがとうございました。では、俺はこれで」
そう言い残すと、サトシは三姉妹に一礼し、
背を向けドアに手をかけた。
すると、、
サクラ:「待ってサトシ君」
サトシが去る間際に長女のサクラが
呼びとめ、サトシは振り向いた。
すると、サクラは神棚からある物を取り出し、
サトシに見せた。
サクラ:「引換券の代わりに、
私もあなたにこれを預けるわ」
アヤメ:「お姉さん、、」
ボタン:「、、なるほど♪」
サトシ:「これは、、」
サクラがサトシに差し出したもの、
それは、一つのモンスターボールだった。
サクラ:「これはあの子にとって、そして
私達にもとって大事な宝物、、。
15年前、あの子のポケモンはタマゴを産み、
私達はここで育てた、、。この中には、
あの子と私達の意志が入ってる。
その意志を私達はいま、貴方に託します♪」
サトシ:「、、、どうして、、」
サクラ:「サトシ君は今、
何か大きい事を成し遂げようとしている、、。
貴方の心の中に広がる海。そして
暖かくも力強い波が、私にそう
語りかけてる♪」
サトシ:「サクラさん、、」
アヤメ:「そうね♪、、あの子がもし
ここに居たのなら、その子を連れて
サトシ君について行ったと思うし♪」
ボタン:「あの子の分まで宜しくね♪」
サクラ:「、、行きなさいサトシ♪
貴方ならきっと大丈夫♪その子がきっと
力を貸してくれるわ♪」
サトシ:「サクラさん、、」
三姉妹は、サトシが何かをしようと
している事に薄々気づいた様子であった。
それは恐らく、カスミの口から
サトシという人間を昔から聞かされている
事から推測したと思われるが、
それだけでは無い。神棚に置かれていた
そのモンスターボールは、サトシが去る間際に
カタカタと物音を立てており、サクラには
それが何かを訴えようとしている様子に
見えていたからであった。
サクラ:「お品物と伝言、確かに承りました♪」
アヤメ:「気をつけてね♪」
ボタン:「私達、応援してるから♪」
サトシ:「サクラさん、アヤメさん、
ボタンさん、、ありがとうございます。
、、絶対に、返しに来ますから」
サトシは深々と頭を下げると、部屋から出た。
サクラ:「それじゃあ、行ってらっしゃい♪」
サトシ:「はい。行ってきます」
アヤメ:「フレー!フレー!サートーシ♪」
ボタン:「水も命も大事にね♪」
サトシ:「ははっ、、はい!」
三姉妹に見送られ、
サトシはハナダシティを後にした。
ページ上へ戻る