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ダン梨・W
前書き
気が付いたら暁で連載始めた頃に一緒に並んでた人達はどんどんいなくなって、なんか一人相撲してる気分になることがあります。自分自身よそのサイトでの活動が主になってて……寂しいなぁ。
バミューダはレベルアップした!
……まぁ、そういうことだ。
俺がレベルアップしたもんだから、当然ベルもレベルアップしてる。
個人的にはちょっと疑惑の判定だ。二対一だったし、勝ち筋があって戦った。一歩間違えば死ぬ激闘だった事は認めるが、それでも勝ち筋をなぞった勝利だ。果たしてアレはランクアップに相応しかったのだろうか。
まぁしかし、ロキ・ファミリア曰くミノたんmk-Ⅱの動きは平均的なミノタウロスの2倍はヤベー感じだったらしい。だよね!あんなフロムゲーみたいな動きのミノたんおかしいよね!あいつレベル2.9くらいいってたんじゃねーの?
まったく、やられた。
ダンジョン帰り、一瞬――ほんの一瞬だが、バベルの頂上から首の後ろがチリチリするような視線があったのだ。あのヤンデレメンヘラビッチ神、俺には興味ないんじゃなかったのか!話が違うぞオイ!……なーんてな。遅かれ早かれ、ベルの近くにいれば巻き込まれるわな。予想よりは早かったけど。
そう考えると、コルヌーが魔法プレゼントしてくれなきゃ俺の冒険マジで終わってた可能性もある。ま、コルヌーに魔法貰ったから難易度上げられた可能性もあるけど。やはりベルと同じく、俺のバックには何やら神の気配がチラ付いてるとみていいな。やだなー、話通じる神ならいいなー。……コルヌーの主神だと思うと絶望で心が折れそうだ。
ちなみに帰るなりベッドでぶっ倒れて丸一日眠った俺らは、目が覚めるなりヘスティアにひっぱたかれた後に大泣きしながら抱きしめられた。リリにも似たようなことされた。前述のとおり別に無茶やった感覚はないんだけどな。ベルも俺と二人なら勝てると思ってたから無茶した感は薄いらしい。やだ、うちのベルくん原作より熱血成分足りてないわ。
で、その後なんやかんやあって、ヘスティア神は神会に行った。
「二つ名、どんなのがいい?」
「無難な奴でお願いします!」
俺のせいだろうか、感性が変わって変な名前は嫌だ、変な名前は嫌だ、とホグワーツの組分け帽子被ったポッターみたいな状態になってるベル。まかり間違ってもトマトとかは嫌だろうな。にしても、遂に俺もレアモノか。
「俺に相応しいのをお願いします。何とか具体的には言わないけどヘスティア様なら分かるよね!」
「ふっ、そうやってボクにプレッシャーかけようったってそうはいかないぞ!だっさい名前選んじゃうぞ!」
「そうっすか。いいっすよ」
「淡泊ッ!?」
「なにせヘスティア様が直々に選んだ名前ですから?他人になに言われてもヘスティア様に選んで頂いた俺の最高の名前だって胸張って言いますよ」
「ば、バミューダくぅん……!キミって奴はそんなにボクの事信じて……」
「神様ー、感動するところじゃないですよー。遠回しにお前にも恥かかせてやるって言ってるだけですよー」
ぐるぐるパンチで全力抗議してきたヘスティア様を適当にいなして豊穣の女主人に行った。ふはは、俺にそういったからかいで噛みつき返そうだなんて100年早いわ。神にとっての百年とか瞬きくらいだけど、俺が先に寿命でくたばるので勝ち逃げ確定だ。神に勝った男、バミューダ。うん、墓にはこれを書いてもらおう。帰ったら遺書に書き足しとこ。
え?何で遺書なんか書いてるかって?いや、俺が死んだ時に色々細かい注文つけまくって悲しむどころじゃなくしてやろうと思って。もちろん死ぬ予定がないけど、死んだ後にオチをつけておくのも道化の仕事よ。
という訳で俺は、ミアさんたちの厚意で開いてもらったレベルアップ記念パーティを全力で楽しんだ。酒を飲まされたらしく途中から記憶飛んでたけど。
以下、ベルに翌日訊いた俺の様子。
「自由だ民主主義だ、飲めや歌えのどんちゃん騒ぎ!そうさ、俺はこのオラリオが大っ嫌いだ!お前だってそうだろモルドォォォッ!!時代だ、時代がいつだって俺たちが俺たちであることを叩き潰して虫けらみたいに飲み込むッ!!世界でただ一人であることを否定しようとして、こう、内在的な可能性を摘んで整った形にして、時代の歯車に無理やりはめ込もうとするんだ!ふざけるな、俺は玩具じゃねえ!番号振られた歯車じゃねえ!!人間って違うだろ!!遺伝子とかじゃねぇ、脳構造がそうじゃねぇ、アーキテクチャなんてクソ喰らえ!!俺は俺だと叫ぶことの何が悪い!?気に入らねぇものにクソ塗りたくって唾吐きかけることの何がいけない!?人間ってのは刹那の生き物だろうが!!刹那に全部突っ込んで、やりたいことやって気持ちよくなるのが自分だろうがッ!!それが本当なんだよ、欲望が俺たちなんだよッ!!だから立てぇ、モルドォォォッ!!目の前の可愛いメイドにあっさり店を叩きだされていいのか!レベルアップして浮かれポンチになってる若ぇの調子に乗らせていいのか!違うな、そこで何も出来なきゃ俺たちは時代に流されるだけだッ!!気に入らねぇ、難癖つけてやるって立ち上がってクソみたいな嫌がらせすんのがお前の本当だろぉ!?観念的な、イデア的な、もっと本質的に人が人である事の証左として、効率だの正解だのって綺麗な言葉を超えた先にある『生きてる』って事の証明の為に立て、モルドォォォッ!!」
「バミューダさんがぶっ壊れた!?」
「二人の為に邪魔者を追い出してるのに何で敵側扱いなの……」
「てめーモルドの兄貴に難癖つけられたのにウェイトレスよりアニキをなんで俺らより圧倒的に訳分からん熱さで応援してんの!?頭イカレてんの!?いやイカレてるな、うん!!」
「アーニャ、バミューダさんに何飲ませたのぉッ!?」
「うわっ、これ確かに味ジュースっぽいけど度数キッツイ奴よ!!」
「情熱思想理念頭脳気品優雅さ勤勉さぁ!!そんなもん知らねぇ!!俺たちは突っ走る事しか知らねぇ!!死んでも前のめりになって進んで足がもげても芋虫みたいに邁進して進んで進んで自分と言う存在がただの電気信号の集積体となっていつか滅ぶ現実がくるその日まで魂だとかなんとかいう目に見えない本当を求めろッ!!いつだって『それでも』って言い続けろ!!妥協なんてみっともねぇ、妥協するのが大人なら俺は大人にならなくたっていい!俺らは永遠にネバーランドの子供たちさ!人間は可能性だ!無限の意識だ!!無限のテロメラーゼがなくたって無限力信じてりゃいつか刻だって支配できる日が来るんだよ!!未知なるオデッセイ、人間の夜明けだ!!プロジェクト・オーバーロード!!世界を超えろモルドォォォォォォォォォッ!!!」
「一言一句意味分かんねんだよぉ!!」
「命をぉぉぉぉおおおおおおお、ン燃やせェェェェェェェェェェェッ!!!」
「って感じだったんだけど覚えてる、バミューダ?」
「ごめん、覚えてない。仮に覚えてたとしてもその内容ならしらばっくれるけど」
「そう……いや、いいんだ。元はと言えばアーニャさんが悪いし。でもバミューダはこれから一生お酒は控えてね。途中からリューさん相手に知らない冒険者のおじさんと一緒に戦ってたからね、バミューダ。びっくりすることにちょっとリューさん押されてたよ」
悲報・俺、成人前に早くも酒を飲めない体になる。
というかモルドってあいつだろ。原作で酒場追い出された逆恨みでバカやった冒険者の。黒光りゴライアスと戦う羽目になったの殆どあいつのせいであり、あいつをそそのかした屑野郎のせいだ。よーし、ヘルメスから慰謝料絞り取る算段今のうちにしておくか。俺、ああやって自分は関係ないですみたいな面してるやつの顔引き攣らせる為に原作知識使ってるみたいなところあるから。
で、数日後。ベルと俺に二つ名が授けられた。
ベル――どこか初々しさを感じさせながらもランクアップ最速記録を塗り替えた経歴から、授けられた仇名は「未完の少年」。
バミューダ――ランクアップ後の酒盛りでとんでもない酔っ払いっぷりを発揮して、しかもなぜか素面より強かったという経歴から、授けられた仇名は「酩酊の化身」。
「ってサラっと嘘付け加えるのやめてくれませんかねぇシルさん」
「ごめんごめん。アレは悪戯したアーニャが悪いもの。バミューダくんが壊した店の備品も――まぁ酔っぱらいつつもそんなに壊さなかったんだけど――アーニャ持ちになったから」
「実行犯はバミューダなのに納得いかないのにゃぁぁぁーーーッ!!」
酒を盛った張本人のアーニャ氏は店の雑用全部やる大作戦を一人で実行させられている。今は床磨き中だが、モップでなく雑巾使わされてる辺りに罰則感を感じる。というかアーニャさん雑巾がけの態勢のせいでちょっとパンツ見えそうなのでそれ以上見るのはやめておいた。
ちなみに二つ名候補として他に上がったのは「リトルルーキー二号」「梨値切魔人」「ロキ・アヴァター」などがあったそうだ。そのちょくちょくアヴァター挟んでくるの何なの?ここ仮想現実で3D技術なの?
「それで、結局何になったの?」
他の豊穣の女主人の面々が興味深そうにのぞき込んでくる中、俺は梨のタルトが出てくるのを待ちながらさらっと告げた。
「投票者が当日神会に来れなかったから手紙だけ寄越してた案なんだけど……どーゆーわけかそれがくじ引きで通って決まった名前が『運命の車輪』、だってさ……意味わかんねー」
内心で、尻尾捕まえた、と呟きながら、俺はタルトを待った。
後書き
W=ホイール・オブ・フォーチュンって言葉の響き超かっけぇ、のW。
バミューダは酔っぱらうとやべーやつ。
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