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昼のバンパイア

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第四章

「だからね」
「ええ、夜はね」
「絶対にお外には出ない」
「調査はお昼ね」
「お日様が上がってから」
「それからよね」
「お外に出てね」
「調査しましょう」
 二人で話してだ、そうしてだった。
 二人は昼に調査して夜は調査してわかったことをレポートとして書いていき修之に報告して他の調査メンバー達とも話していた、そうした風にしてだった。
 二人は絶対にバンパイアに遭遇しない様にしていた、しかし。
 ふとだ、すみれは自分達の前今丁度人気がないある村の外れのところを歩いている時にだった。不審者を見た。
 その不審者は如何にもであった、あちこちが破れたみすぼらしい服を着ていてところどころに土が付いている。顔は青白く目は虚ろだが血走っている。そしてゆらゆらとこちらに向かって歩いてきている。
 その中年過ぎと思われる男を見てだ、すみれはすぐに自分の隣にいる未可子に言った。
「ねえ、あの人」
「えっ、あれは」
「間違いないわよね」
「ええ、吸血鬼よ」
 どう見てもとだ、未可子に真っ青になって話した。見れば未可子の顔も蒼白になっている。バンパイアと遭遇して。
「どう見ても」
「ええ、けれど」
「今お昼なのに」
「何で出て来たの?」
「こっちに来てるし」
「ここはね」
 二人共怯えきっていたが冷静さは失っていなかった。それでだった。 
 すぐに十字架や大蒜そして聖水を出してだ。そのうえでそうしたものをバンパイアの方に突き出したうえで。
 じりじりと後ろ足で退いてだ、動きは比較的遅いバンパイアから間合いを離してだった。
 相手に背中を向けて一気に駆けて逃げ去った、そうしてだった。
 二人共安全な場所に逃げた、そのうえですぐにだった。
 修之と携帯で連絡を取って彼のところに行って事態を報告した。すると修之は冷静な顔でこう言った。
「そうか、本当にいたんだな」
「あの、冷静ですけれど」
「本当にいたのかって」
「何でそんなに冷静なんですか?」
「お昼に出たのに」
「いや、吸血鬼は昼にも出るからね」
 あっさりとだ、修之は二人にこのことについて答えた。
「だからね」
「あの、お昼にもって」
「吸血鬼がですか?」
「吸血鬼って夜じゃ」
「夜にしか出ないんじゃ」
「それ種類によるから」
 バンパイアのとだ、修之はあっさりと答えた。
「確かに夜にしか出ない種類もいるけれど」
「昼にも出る種類もですか」
「いるんですか」
「そうだよ、逆に昼にしか出ない種類もね」
 バンパイアのイメージ、二人が抱いていたものは夜だけだがというのだ。
「いるんだよ」
「そうだったんですか」
「だからですか」
「チーフは冷静なんですか」
「この事態にも」
「いや、冷静かというと」
 修之はそのヒーローの様な声で二人に答えた。 
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