真田十勇士
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巻ノ百三十八 仇となった霧その五
「そして少将様の本陣もおられます」
「それではですな」
「勝てる筈がありませぬな」
「山を制してそこから戦うのは見事じゃ」
高い場所を制してというのだ。
「それはな、しかしな」
「それでもですな」
「衆寡敵せず」
「そうなってしまいますな」
「我等の数の前では」
「やはり戦は数ですから」
「勝てるものではないわ、大坂方は先の戦よりも数を大きく減らした」
十万から六万を切った、そこまで減ってというのだ。
「そしてじゃ」
「岸和田の方でも先の八尾の方でも敗れましたし」
「その様じゃな」
木村の戦のこともだ、政宗は聞いていた。
「つい先程忍から話が届いたわ」
「左様ですな」
「どうやらです」
「井伊殿が勝たれましたな」
「そして木村殿は」
「その様じゃ、おそらく木村殿はな」
政宗は彼の結末は予見した、それはというと。
「見事にな」
「散られましたか」
「そしてですか」
「見事にですか」
「名を残されましたか」
「そうなられたであろう、そして後藤殿はな」
今戦っている彼はというと。
「おそらくな」
「これからですな」
「敗れそうして」
「見事に散られる」
「そうなってしまいますか」
「そう思う、このままじゃ」
まさにというのだ。
「数で押し切られて敗れてしまうわ」
「そして午後はですな」
「後から来られる真田殿、毛利殿の軍勢とですか」
「戦いそして」
「今度はですな」
「真田殿と毛利殿、特に真田殿じゃ」
幸村、彼がというのだ。
「あの御仁を討つことが出来れば」
「大坂は後藤殿、木村殿と並ぶ将を失い」
「その分力を落としますな」
「そしてそのうえで」
「我等はですな」
「後はかなり楽に攻められる」
大坂城、豊臣家の心臓であるこの城をというのだ。
「ましてや今のあの城は完全な裸の城じゃ」
「攻めるのは楽ですな」
「それも実に」
「特に南からは」
「幕府の大軍で攻めれば実に容易いですな」
「勝てまするな」
「そうなる、もうじゃ」
それこそというのだ。
「その時程楽なことはないわ」
「では」
「今日で後藤殿、真田殿を討ち」
「戦を決めまするか」
「そうしたことになろう」
まさにと言うのだった。
「万事ことが進めばな」
「万事ですか」
「そうなればですか」
「戦はその様には進まぬわ」
こちらの思惑通りにというのだ。
「だからな」
「ここはですか」
「まずは後藤殿の軍勢を攻めるのですな」
「数を頼みに」
「そうすべきですな」
「そうじゃ、そして小十郎に伝えよ」
彼の右腕であった片倉の子だ、美男として知られる彼のことも話すのだった。
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