異世界にやってきた俺は、チート能力を駆使して全力でスローライフを楽しむ!
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夜の街は人気が完全になくなっていた。
昼間通った時は活気の溢れる商店街であったけれど、今は人影もなく、空気がやけに冷たく感じる。
とはいえ、こんな状態だったら人が巻き込まれにくいだろうと俺は思いつつ進んでいく。
先ほどからまったくエイダとレオノーラとは口をきいていない。
やはり戦闘となると気が引き締まるのかもしれない。
油断するよりはいいと俺が思っているとそこでエイダが、
「ソウタはこの、今回で会った敵について詳しいみたいだけれど、どんな怪物なの? 弱点はある?」
「俺が知っているのは草系の魔物だった。だから炎系の魔法を打ち込んだこともあったが……切り裂いてしまった方が早かったな」
「切り裂く? そういえば初めて会った時にとてもよく切れる剣をもっていたようだったわ。まさかあんな簡単に切り裂いて倒してしまえるとは思わなかった」
「……あの時は加減が分からなかったから。でも今回はたぶん町の外だ。だったら魔法で攻撃して一気に片を付けてしまった方がいいか」
そこで俺は、この世界での特殊能力の類を使う練習もしておかないとと思う。
でなければ、いざというときに使えないからだ。
あの剣に頼るよりは今回は魔法で押し切った方がいいかもしれない。
そう考えた俺はエイダ達に、
「まず初めに様子見として、炎の槍のようなものを100本ほど生み出して攻撃してみようと思う。火柱が上がるだろうが、周囲に延焼しそうになったら氷や水系の魔法で消せばいいから……」
「ちなみにその温度はかなり高温だと思うけれど、それはいいわ。どれくらいの大きさのものを作る気なの?」
「一本が俺の身長くらいか? さすがにそれだけ打ち込めば灰も残らずに消し去れるんじゃないのか?」
「……そこまでする必要があるの?」
「いや、確か前の世界でもどんどん防御が強化されていたようだから念には念をと」
「そう……」
そこでエイダが深々と嘆息した。
だがそこで俺は気づく。
危険すぎる相手なので、つい炎の槍百本などと言ってしまったが……これは多すぎるのではないだろうか。
つい前の世界の癖で、そう言ってしまった。
どうする? どう誤魔化す? そう俺が思っているとエイダが、
「何を思いついたらそんな魔法を使おうとするの? 100本は多すぎるわ」
「あ~えっと、そ、そうだ。俺たちの世界だと“ゲーム”内では過剰な表現がされる場合があるのです」
「ゲーム?」
「はい。……俺のいた元の世界では、俺たちは仮想空間でしか基本的に魔法は使えないのです」
「仮想空間?」
「別の情報密度の低い世界を作って、“遊ぶ”“娯楽”です」
「……それはもう、神々の領域ではないかしら。それが魔法のない世界? ……やっぱり異世界はよく分からないわ。だからそういった100本といった話になるかしら」
「では通常ではどれくらいがよろしいでしょうか」
そう俺はエイダに聞く。
一般的な常識は目立たないために必要だから。
そういった理由で俺は十分の一の量に減らして攻撃しようと決める。
もちろんいざとなったら百本だが。
やがて街を抜けて、周囲にうっすらと霧が見える。
濃い霧の発生している場所まではまだあるが、この程度まで先ほどの“子機”への攻撃でひかせることができたらしい。
この場所の“闇の気配”は大分薄れている。
また復活させられては大変だから、早目に倒そう、そう俺は思って親玉に向かって走っていったのだった。
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