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ダン梨・A
ここで大した話でもないが少しおさらいをする。
まず、この段階でリリルカ・アーデを仲間にすると原作にどのような影響があるかという話だ。
ぶっちゃけ俺の私見ではあんまりない気がする。そもそもリリにこれといってパッとする役割がない。俺にとってリリはあくまで変身魔法持ちで経験のそれなりにあるサポーター。準ヒロインとかなんとかといった話はついででしかない。事実、俺は『原作』なんてものは辿る未来の一つ程度の認識だし。
よって次の問題を考えたいと思う。
次の話だが、このタイミングでベルの成長を促そうと拗らせメンヘラヤンデレビッチ神がオッタルにとある命令を下しており、オッタルはそれを実行中だったと思う。内容はレベル2相当の魔物であるミノたんから良さげなのを強制スカウト・育成してベルへの当て馬にする事。これはベルのレベルアップとか装備とかいろんな事が絡んでるし、そもそも現場監修がオッタルなので俺にはこれといって大きく出来る事がない。
えーと、ベルがアイズ何某と修行してー、んでミノたん倒してー、ロキ・ファミリアがそれ見てフラグとかなんとかあってー……レベル上がってヘスティア神が悲鳴……あらやだ、びっくりするほど蚊帳の外。なんもやる事ねぇ。という事はつまり、俺ってば何してもいいじゃん。どうぶつの森で当面の借金を払い終わったかの如き解放感!そうその気持ちとはつまり!
「次の借金しなきゃ……」
「何の使命感に駆られてんのか知らないけどとりあえず聞くよ。何の借金?」
「ホーム改築!」
「……思いのほか現実的な答えに一瞬返事を返せなかったよ。確かに4人じゃ手狭になってきたもんね」
ちなみに改築イベントはまだまだ先なので、暫くはこの襤褸教会に4人鮨詰めである。俺は別に表の薄汚い所で寝てもいいんだけど、ヘスティアが全ファミリア平等という大嘘を唱えて結局ベッド川の字だったりする。「どどどどどこが大嘘なんだいっ!」と怒りのヘスティアが突撃してきたので取り合えず頭を押さえて防ぐ。
「バミューダ、ナイフの件掘り返すのナシだよ。流石にそれは難癖だし」
「わぁってますって。イジワル言ってすんません神様」
「謝意が足りないよ!」
「この度はァ……まことにィ………申じ訳御座いばぜんでじだぁぁぁ~~~~~ッ!!」
「そこまでいくと態とらしさしかないよ!?」
「責任取ってファミリアやめます。さーって明日から何しよっかなー」
「イヤァァァァァァ!!僕が悪かったから出ていかないでぇぇぇぇ~~~~~ッ!!」
「バミューダそれ割と本気に聞こえるから封印指定ね」
「マジか魔術協会最低だな」
悟りの境地に達したベルは「魔術きょーかいって何さ」などというありきたりなツッコミはせずにじゃが丸くん齧りながら銭の勘定を続けた。つまり魔術協会は最低。異議なし判決である。リリはその横でベルの手伝い。整理している金はファミリアの活動資金である。
「ん~、サポーター1人でこんなに違うモンなんだね。これだけ稼ぎがあれば色々出来ることも広がるんじゃない?」
「だな。但し、やっぱ頭数が増えるまでは大きな事はしにくい。暫くはこの調子で個々の能力強化でいいと思う」
「りょーかい。リリはどう思う?」
「リリはヘスティア・ファミリアに助けられた身分ですし、バミューダ様の意見も真っ当だと思うので反対はしませんよ?」
「そんなにへりくだらなくたっていいよ。僕らも助けられてるんだから、ね?」
「……お人好しなんですから」
顔を隠してぼそっと呟くリリ。うーむ、やはりベルスマイルは異性によく効くらしい。原作だともっとベタベタしてた気もするが、まぁ俺がいたからそこまで発展してないんかな。いや、二人きりじゃないってだけの意味だけど。
などと考えていると、ヘスティアが俺の横に座ってきた。
「あんまりボクを虐めないでくれたまえよ!キミのための剣ももうすぐ完成なんだからね?」
肩が触れる距離でぷくっと頬を膨らませる可憐な女神。
そういう気遣いは結構なのだが、とは言わない。
ベルといちゃつく少女に対して一人で突っ立ってる俺、という構図そのものを消すついでに自分の意志も伝え、ベルを優先しているというのが誤りであることも伝える。そんなやりとりが今のヘスティアの行動には含まれてる。
それは同情とかそんなものは一切含んでなく、ただ「自分はかくあるべし」と竈の女神の信念が根底にあるから自然とする動きだった。ってな分析を口にするとひねくれものと言われるのだろうが。
それに、そんな気遣いがまったく嬉しくない訳でもない。俺だって神ならだれでもよかったって訳でもないし、ヘスティアがヘスティアだっていう安心感みたいなのはある。だから俺も、安心して――。
「俺を飽きさせないでくださいね、女神さまっ♪そーれ高い高ーい!」
「ぬわぁー!僕を子供扱いするなぁーーーー!!ばかぁーーーっ!!」
こうして安心してイジれる訳である。いやぁ軽い軽いの軽井沢。今宵はオヤジギャクな気分だ。
「おお、今日のバミューダは上機嫌だ」
「あの人機嫌の善し悪しとかあるんですか?」
「悪いってことはまずないけど、いい時ってあるよ。なんでいいのかは知らないけど、本当に時々だから珍しいんだよねー」
ベルの俺観察眼が鋭すぎる件について。
お前は俺の幼馴染か。……ん?同居してたし似たようなもんか?どこぞのラノベ主人公は小学校で途中から仲良かった奴を幼馴染って言ってたし、同居1年オーバーも幼馴染でいいか。
= =
いつぞや、この世界に於ける『俺』とは何ぞや、という問いをしたと思う。
その答えの片鱗を、俺は見た気がした。
「ねぇ、ルー!君のトモダチ、カックイー魔法覚えたんでしょ!でしょ!」
「俺はバミューダなんですけどねぇ……」
「分かってる!バミューダのルーなんだよね!」
「分かってねぇ分かってねぇ。300%分かってねぇ」
「でね!ズババドカーンってしてるの見て!ちょっとフビョードージョーヤクだと思ったのよ!」
「無視かい。というか誰が何の条約結んでんだよ」
「それでお願いしたんだ!ルーにもズババドカーンって!!」
「誰にお願いしたの?というかそれ言葉だけ聞いたら俺の体がズババドカーンだからね?」
まぁ俺の話も聞いてくれ。
その日俺は「そろそろベルの受難だなー」とか思いつつも普通にベルと一緒に戦ってたわけよ。そしたらダンジョントラップ的なものが発動して分断されて、とりゃーず俺は一度地上に帰還する事にしたのよ。運悪いなぁとか思いながら。ベルとリリ二人でも全然問題ない階層だったし、二人も戻るって言ってたしね。
で、帰ったついでにちょっと近道しようと路地裏に入ったらね。「ルー!」って叫びながら羊頭が俺の腰にヘッドアタックかまして来やがったのね。内臓ひっくり返るかと思う衝撃だったぞ。俺防御ステ低いからこれでちょっとステータス上がるんじゃねと思ったよ。
で、見てみると例のヤツ、可愛いけど電波全開なコルヌーちゃんが何が楽しいのかにこにこ笑って「会おうと思ったら会えた!これって運命?」とかいうのよ。というか今回も馬乗りにされてんだけど。がっちり足で押さえられて抜けられんし、抜けようとするとコルヌーちゃんのスカート捲れてパンツ見えそう。
……こらそこ、捲ってしまえばいいのにとか言うな。故意でめくったらそれは畜生の行いよ。え?お前十分畜生だろうって?そこはそれ、路線の違いよ。俺はスケベ路線とかいいから。ブラックキャットからToLoveるへみたいなのマジいらんから。
まぁそういう訳で、俺は「こういう運命」かと、なんとなく悟ったのですよ。
「で、用意してもらったの!ルーのためのズドドダダンダーを!」
「擬音変わっとるがね」
「という訳で、どうぞ!」
「どうぞってお前それ魔導書……っつーかページを直で見せる奴があるか!?」
こうして俺はズババドカーンでズドドダダンダーな魔法を覚えさせられ、ベル同様気絶したのだった。
「………あー!次に会ったら色々話しよって約束したのに寝ちゃった!コルヌー大失敗!?」
うっさいわ羊頭。お前なんか嫌いや。
ちなみにその後コルヌー氏は俺をヘスティアの教会の中に適当に放り込んで帰ったらしい。物凄い角度で気絶していたとは発見したヘスティアの談である。寝違えたかの如く首が痛い。あいつどんだけ自己中なんだ。
「なんというか、災難だったねバミューダくん……」
「これは流石の俺もキレそう」
「いや、うん。普通にキレていいと思うよバミューダ」
「善意の押し売りというか、いっそゴリ押しですね」
次会ったら絶対泣かすから覚えとけあのアマ。俺はそう呟きながら、ストレスを誤魔化すように梨に豪快に齧りついた。
後書き
A=悪質タックル問題という時事ネタ、のA。
ルー=フランス語で車輪
コルヌー=ラテン語で角
次回、魔法説明とミノたん討伐までやりたい。
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