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ダン梨・J
前書き
後になって気づいたんですけど、ゲドって所属ファミリア不明みたい。
やっちまった……。彼の所属についてはオリジナル設定ってことにしといてください。
さて、リリを合法的に手に入れつつ皆で幸せになる作戦名を発表しよう。
「名づけて幼女強姦未遂事件冤罪大作戦。相手は死ぬ。社会的に」
「バミューダはどこまでド外道なの?」
ベルは早くもこの先に待ち受ける結末をおおよそ察したのか、据わった目でこちらを見つめてきた。外道に対抗するには自らも外道に成り果てるべし。(社会の)闇の力を見せてやるぜ……!
作戦はこうだ。まず、俺とゲドを通してリリがザニスに手紙を送る。内容は俺の考え抜いた非常に『美味い話』。リリはこれをダシにファミリア脱退を許してほしい、という演技をしてもらうことになっている。もちろん美味い話というのは俺たちにとって美味い話に途中で化ける訳なのだが。
実はある人に協力を依頼して、ここ1週間ほど人目の『少なめ』――皆無ではないが、決して目撃者なしとはならない――な場所でリリとその人を会わせて行動を共にさせ、更にゲドと俺の二人でそのことをそれとなくソーマ・ファミリアの耳に入るように話を流してある。
よってそのことを欠片なりとも掴んでいるザニスは、疑いながらも必ず一度は真実を確かめに直接動くはずだ。なにせ今回の協力者の所属ファミリアは『ガネーシャ・ファミリア』。ここで繋がりを作る事が出来れば将来的にどれだけの利益を得られるか。無視するには余りに大きな獲物だ。ちなみに主神ガネーシャには許可を貰っている。悪党の成敗は吝かではないらしい。さすが民衆の王。
で、話は戻ってザニスである。ザニスをおびき寄せるリリであるが、外道で守銭奴で人を信じる気持ちなどどこかに捨ててきているレベル2程度で慢心しているザニスはリリの要求を呑まないことが予想されるし、そう想定している。まず間違いなく、取引先との話が成立した時点で仲介したリリを蚊帳の外に置くか、あらかじめ脅して奴隷のようにこき使おうとする筈である。
で、ここでどうするか流石の俺も少し悩んだのだが――リアリティを追及するためにリリには一度暴行を受けてもらうことにした。というか、本人が「やるなら徹底的に、でしょ?」と逆に持ち掛けてきた。煽りスキルが高く暴行され慣れしているリリなら間違いなくそういう場面に持っていけるだろう。
で、だ。この際にリリには――偶然を装って服をはだけさせててもらう。
そして、その様子を『偶然』通りすがりの人(通りすがりのリューさん)に見てもらう。
トドメに通りすがりの人に、「ロリコンの強姦魔が出たー!!」と叫んでもらう。
その声を『偶然』聞きつけた高レベル冒険者にザニスを拘束してもらう。
そして、ザニス失脚を狙っていた(という筋書きの)チャンドラがその場にやってきて、「すまねぇ、うちの団長がまさかロリコン強姦魔だったとは……詫びとしちゃ何だが、この歩くわいせつ物は二度と日の目を見ねぇようにウチの牢屋に永遠に閉じ込めて団長の座からも退いてもらうとする。ファミリアの改宗と上納金の話もチャラにするから口外しねぇでくれ」と言ってもらうのである。
さて、強姦魔に仕立てられたザニスは当然罪を否定するだろうが、常識的に考えて明らかに暴行を受けて服が乱れたパルゥムの少女が現場にいて、その子に強姦魔だと言われれば、誰一人として彼のいう事は信じないだろう。騒ぎには一般の立ち見客にも少しは見てもらうが、内部の問題として片付ける以上はギルドからの介入も入らない。ザニスは社会的に封殺されるのだ。
なお、ソーマ・ファミリアにはゲドを経由してリーダーがロリコンで補導された旨を流してもらい、スムーズにザニスに表舞台から退場してもらう。外道は去り、リリは手に入り、ついでにゲドにはザニスの私財の一部がこっそり流れるようにしてある。
――と、作戦の説明をし終えたのだが、何故かリリちゃん以外テンションが低い。
「で、誰が悪者なんでしたっけコレ?」
「今回裁きを受ける悪者はザニスですが、私はこの場で一番邪悪なのはバミューダ様だと思います」
「最初から嵌める為の強姦の冤罪………エグすぎる………」
三人とも完全に悪事の片棒を担がされている人たちの目だ。ゲドに至っては普段の自分たちと全く違うベクトルでの罠に顔を青くしている。というのも、この手口はもしもゲドがこちらの仲間に入っていなければ自分に使われていてもおかしくないからだ。
「あの団長をリリが嵌める………ゾクゾクしちゃいますねぇ♪」
リリは危ない扉を開きかけているのか恍惚の表情で舌なめずりしている。大分原作と違うキャラになり始めてないかこれ。あまり闇に染まりすぎるとアレなのでベルの浄化作用に乞うご期待だ。紐神と一緒にいれば悪党のオーラも少しは抜けるだろう。うちは基本ゆるいファミリア目指してるし(勝手に決定)。
と、リューさんから質問が出た。
「ちなみにこの計画、私は戦力側かと思ったのですが、目撃者側なのですね。高レベルの協力者とはどなたで?」
「今回の件に協力してもらってる『ガネーシャ・ファミリア』の金仮面の人ことクロさんです」
「ガネーシャ・ファミリア……金仮面………『象神の牙(クロ・ガネーシャ)』!?レベル4冒険者ではありませんか!!いったいどこでそんな伝手を!?」
「怪物祭の時に偶然知り合いまして」
怪物祭の際にモンスター解説をしてくれた親切のっぽ黄金仮面さんこそ件の『象神の牙(クロ・ガネーシャ)』ことクロさんである。
クロさんは3,4年前からこのオラリオに居る冒険者で、ファミリア内でも高位の人だ。実は目が片方見えないらしく、目と傷痕を隠す為にガネーシャから直々に賜った黄金仮面をつけっぱなしにしているそうだ。二つ名の『象神の牙(クロ・ガネーシャ)』の由来はガネーシャに手持ちの愛武器である大鎌を「像の牙のようだ」と称されたこと。彼は元々名無しだったらしく、以来自らもクロと名乗っているという。
ちなみにタダで協力してもらってるわけではなく、俺の秘蔵産廃コレクションの大鎌イーラナーを報酬としている。何故か「ウチナーグチ的にはハンドサイズの鎌の事じゃなかったっけ?」とよくわからないことを言われたが、快諾してくれた。
という訳で作戦を決行し。
そして。
『容疑者確保!容疑者確保です!見えますでしょうか、容疑者が同ファミリアの副団長に連行されて今姿を見せました!頭から上着をかぶって表情は伺えませんが、その両手にはしっかりと縄がかけられています!……あっ、後ろ見えますでしょうか!被害者と思しき少女が白髪の少年に保護されています!その顔には暴行の痕と見られる腫れが出来ており、痛々しい様子です!少年に泣きつく少女!体の傷は癒えても性暴力で受けた傷は時を重ねても癒えることはありません!一刻も早く、この痛ましき犯罪を犯した卑劣な犯人に社会的相応な罰が下ることを願って、現場からは以上です!!』
現場から数百m離れた場所から双眼鏡で女神ヘスティアと一緒に様子を見ていた俺は一通り実況を終えて、神様に向かい合って笑顔で告げた。
「そういう事でして、あのリリちゃんうちのファミリアに引っこ抜いていいですか?」
「きみ、絶対に碌な死に方しないと思う。今からでも遅くないから改心しない?」
そう言う神様の顔は、今まで見た中で一番マジだった。
ちなみにゲドは「都会コワイ」という謎の言葉を残し、少なくない量のザニスの資金を報酬に田舎に帰った。あっちさえよければうちのファミリアに来ても良かったのだが、まぁ団長売ったのに一枚噛んだと周囲にバレながらの生活も面倒だし正しい選択だと思う。田舎で元気にやれよ。たまに遊びに行くから。
そういうと「絶対に来んな!いや来ないでください!」と念押しされた。釈然としない気持ちを残しつつ、とりあえず梨の苗だけ選別に渡した。
後書き
J=邪悪の化身バミューダ!!、のJ。
ゲド生存ルート。やったぜ。
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