白髪赤目の少女と黒の剣士
しおりを利用するにはログインしてください。会員登録がまだの場合はこちらから。
ページ下へ移動
アインクラッド編
街と理想と転移 (裏)
sideキリト
「……戻ってきた、この世界に…!」
ソードアート・オンライン正式サービス開始とほぼ同時にログインした俺こと『キリト』は、漸くこの世界に戻ってきたという実感に感動し打ち震えた。
「おーい!キリトー!」
感動に浸っていた俺の方に、そう叫びながら一人の小柄な少年が駆け寄ってくる。
「おー、リィト!」
「ごめん!待たせたかな?」
黒髪の少し癖のあるショートに青い瞳をした、少女に見えなくもないアバターの少年は『リィト』。以前別のゲームで知り合ったのだが、βテストも一緒に参加する程に仲がよく、今日もここで待ち合わせをしていたのである。
「いや、俺も今ログインしたばっかだし気にすんなよ。」
「そっか。なら早速フィールド行こ!僕だって楽しみにしてたんだから!」
「あぁ!早速装備整えて行くか!」
「おー!」
そう言って俺達は走り出した。
sideリィト
「どわぁっ!」
「大袈裟だなぁ……」
「痛みは感じない筈なんだけど……」
一人のプレイヤーが敵Mob『フレンジーボア』に吹っ飛ばされ、痛みに悶えてる姿を見てキリトと僕が続けざまにツッコミを入れる。
「あ、ホントだ……」
そんな大ボケを噛ましているのは『クライン』。
はじまりの街で出会った初心者で、僕らの動きからβテスターと見破り、レクチャーを頼んできた人だ。
「言ったろ、重要なのは初動のモーションだって。」
「そんなこと言ったってよぉ……アイツ動きやがるしよ。」
「いやいや、動かない敵Mobなんていないから。」
バカな事を言うクラインに、僕はツッコミを入れておく。
「ちゃんとモーションを起こして、ソードスキルを発動させれば……」
「プギィッ!?」
キリトがそこら辺に落ちていた小石を拾うと、モーションを起こしソードスキル『シングルシュート』を発動させて小石を投げる。すると、見事にフレンジーボア(以降ボア)へ命中させる。
「後はシステムが技を命中させてくれるよ。」
「モーション……モーション……」
「あはは、そんなに難しく考えなくてもいいのに。」
「どう言えばいいのかな…?」
キリトが、ダメージを与えられたボアの相手をしながらも、クラインへのレクチャーは続く。
「ほんの少し溜めをいれて、スキルが立ち上がるのを感じたらズパーンッて打ち込む感じ!」
「ズパーンって、最後のとこの説明が雑じゃないかな?」
「ズパーンてよ……あ。」
あの雑な説明で何か掴めたのか、クラインはモーションをとってソードスキルを発動させる。それを見たキリトは、ボアを蹴ってクラインへと向かわせる。
「……でぇりゃぁぁ!!」
スパンッ……パリィィン
上手いことソードスキルを発動させられたようで、クラインはボアをきっちり倒せていた。
「うっしゃぁぁぁ!!」
「ナイスキル、上出来だよ。」
「おめでとう。でも今の猪、スライム相当だけどな。」
「えぇー!?何だよ!俺てっきり中ボスか何かだと……」
「んな訳あるか。」
「中ボス相当がこんなはじまりの街近くの原っぱにいるわけないでしょ。」
そんなことを言いつつも、クラインも着々とこのゲームにハマっていた。
そのまま3人で狩りを続け、気付けば夕方になっていた。
「……さて、もう少し狩りを続けるか?」
「僕はもう少しかな。」
「たりめーよ!……と言いてぇとこだが、腹減ってよぉ……一度落ちるわ。」
「こっちのご飯は、空腹感を満たすだけで美味しくないのばっかだしね。」
「へへっ!5時半に熱々のピザを予約済みよ!」
「準備万端だな。」
クラインは一度ご飯を食べに落ちるらしい。ちゃんと用意してる辺り抜かりないと思った。
「おうよ!まっ、飯食ったらまたログインするけどよ。」
「そっか。」
「しっかり食べてきてね。」
「おう!じゃ、マジでサンキューな。これからもよろしく頼むぜ。」
「また聞きたいことがあったら、いつでも呼んでくれ。」
「僕にも遠慮なく聞いていいからね。」
「おうよ!頼りにしてるぜ。」
そう言って僕達はクラインに背を向けて離れようとした。……クラインの声を聞くまでは。
「……あれ?ログアウトボタンがねぇ。」
「えっ…?」
キリトがクラインに話し掛ける中、僕はすぐさまメニューを開いて、ログアウトボタンがあるかどうか確認する。
「……ない……ログアウトボタン、僕のメニューにもないよ…!」
「なっ…!?」
「おかしいよ…!こんな……ログアウトボタンが無いなんてバグ、今後の運営にも関わるのに……」
「ほ、他にログアウトの方法はなかったっけか?!」
「……ない。こちら側からのログアウト方法は、ログアウトボタン以外、マニュアルにも乗ってなかった。」
「こんなの、不自然過ぎる……正式サービス初日に、ログアウトボタンが消えるバグ……まるで、誰かが意図的に消したみたい──」
パァァ…
「「「うわっ!?」」」
僕が冷静に推理していたその時、周りが眩しい光に包まれて、僕達はその場から姿を消した。
ページ上へ戻る