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リング

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21部分:ファフナーの炎その二十


ファフナーの炎その二十

「急襲を受けたぞ!」
「敵は後ろにもいるぞ!」
「後ろに兵を向けろ!遅れるな!」
 ヴァルターは部下達に次々と叫ばせる。これに帝国軍は乗った。すぐに後ろに兵を向ける。だがここで彼等はミスを犯していた。突然の奇襲で狼狽していた為皆それまで包囲していたジークムントの軍への注意を忘れてしまったのである。そしてここに付け入る隙がまたしてもあったのである。
「提督」
 包囲されていた軍の一人がその中心にいた赤い髪と目を持つ精悍な顔立ちの青年に声をかけていた。見ればこの青年は黒いシャツとズボンを身に着け、黄色いジャケットを羽織っていた。如何にも好戦的な表情が印象的であった。
「ああ、わかってるぜ」
 青年はその者の言葉に頷いた。
「すぐに反撃に出る、いいな」
「はい」
 若々しく、そして荒々しい言葉であった。ヴァルターの言葉とは全く違う、精悍な声であった。
「どこの誰かは知らねえが助かった」
「ですね」
「諦めかけてたけどよ、神様達は俺達をまだ見捨てていなかったてわけだ」
 そう言いながら銃を構える。
「行くぜ!そして帝国の奴等を一人残らず蹴散らしてやろうぜ!今までの分を込めてな!」
「はい!」
 彼の軍も反撃に転じた。帝国軍は挟み撃ちを受けた形になり散々に打ち破られた。こうしてナイティングの帝国軍は壊滅し惑星は完全にヴァルターのものとなったのであった。
 戦いが終わり盆地にいるのはヴァルターと青年の軍だけとなった。ヴァルターは青年の前に進み声をかけて来た。
「卿がジークムント=フォン=ヴェルズングだな」
「ああ」
 その青年ジークムント=フォン=ヴェルズングはそれに応えた。
「その通りさ。俺がジークムント、ジークムント=フォン=ヴェルズングだ」
「そうか。私はヴァルター。ヴァルター=フォン=シュトルツィングだ」
「マイン星系の執政官だったな、確か」
「知っていたのか」
「あんたのことも聞いてるぜ。ニュルンベルクのことは残念だったな」
「ああ」
 それを言われ一瞬だが暗い顔になった。
「大変だったみたいだな、そっちも」
「そちらでも何かとあったみたいだな」
「まあな」
 ジークムントも一瞬だが暗い顔になった。そして彼に応えた。
「連れをな。失っちまった」
「そうか」
「メーロトっていうんだがな。知ってると思うが」
「確かニーベルングの軍を率いて各地の帝国軍に反抗する勢力を殲滅していたのだったな」
「あいつは本来俺の連れだったんだ。だが裏切りやがってな」
「それで今まで追っていたのか」
「そうさ。あいつもニーベルングの一族だったんだ」
「ニーベルングの」
「ああ。あいつの姉貴もな。そうだったらしい。クンドリーっていうんだけれどな」
「クンドリー」
 それを聞いたヴァルターの顔色が変わった。ジークムントはそれを見逃さなかった。
「知ってるみたいだな」
「ああ。ニュルンベルクのことは知っていると言ったな」
「ああ」
「その時に私の婚約者も死んだ。エヴァといった」
「それも聞いてるさ。何て言っていいかわからねえが気を落とすな」
「済まない。そのエヴァの従者の一人がクンドリーだった」
「何!?」
 それを聞いたジークムントの顔色も変わった。
 
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