外伝・少年少女の戦極時代
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デューク&ナックル編
ラスボス≠黒幕
全身打撲と、長く浴びた雨による肺炎の発症。
文句なしに入院直行コースである。
それはいい。ザックとて納得できる。雨の中を生身でドックファイトした自分が悪い。病室のベッドに寝そべる我が身を宥めすかすには充分な理屈だ。
だが、そのザックの隣のベッドにいるのが、何故よりによってシュラなのか、という部分まで納得したわけではない!
「――――」
シュラは仰向けのまま天井の一点を見つめるようにして動きやしない。隣のザックを睨むこともなければ、背中を向けてふて寝することもなかった。
気まずい。ザックにはその一言に尽きる環境だ。誰でもいいからこの空気をぶち壊してはくれまいか。
そんなザックの切なる祈りが天に届いたのか、病室のドアがスライドして、人が入って来た。
「お前ら……」
「よう、ザック」
「「ちゃーっす」」
「……っす」
ペコ。それに、リトルスターマインのコドモたちが3人。ナッツ、モン太、チューやんだ。
意外にも程がある組み合わせの見舞い客に、ザックは目をしばたくしかなかった。
ペコはともかく、女子であるナッツの前で寝転んだままでいるのは男の沽券に関わるので、ザックは上半身をベッドの上で起こした。
「見舞いに参上したっすー。ヘキサとトモは補習の関係で来れないそーっす」
「これ、城乃内さんから預かってきたケーキ。ほんとなら2時間は行列覚悟のレアもんね」
ペコはともかくコドモ組とは、帰国してからちゃんと顔を合わせるのはこれが初めてだ。ナッツにせよモン太にせよチューやんにせよ、会わない内にすっかり中学生らしく成長していた。ちょっとしみじみした。
小さな感慨はすぐに終わった。
赤と黒のユニフォームを着たペコが、シュラに話しかけたのだ。
「シュラ。俺、ネオ・バロン抜けるから」
「……そうか」
シュラはそれだけ言って、腕で目元を覆った。
「一度追い出された人間は、どう足掻いたって元の居場所には戻れないってことか」
「そんなことないッ!」
ペコが叫んだ。これだけ必死な叫びは、ビートライダーズのオールスターステージに出たいと戒斗に訴えた時以来だ。
「俺はネオ・バロンに、お前のそばにいた時、昔に戻ったみたいだってずっと思ってた。戒斗さんがいた頃のバロンにいるみたいだって。お前が、昔の戒斗さんに、似てたから」
「――俺が、戒斗に?」
「似てた。ザックが来た時、『まだここにいたいのに』って思っちゃった程度には。……悔しいけどさ。そこだけは自信持っていいって、どうしても、伝えたかったんだ」
――ペコのほうがザックより男らしいかもしれない。気弱な弟分だと思っていた彼は、会わない内に、自分の考えを言葉にして相手に伝える勇気を持っていた。
「そんだけ。あと、退院したらアザミ姉ちゃんに謝りに行けよ。じゃ」
ペコは口早に告げてそそくさと病室を出て行った。
(俺も、勇気出さねえとな。でないと戒斗が帰ってきた時にぶん殴られちまう)
「シュラ。二度とバロンを騙るな」
踊らないことも、違法な組織を作り上げることも、それがシュラの信念と意志に基づくものならばザックに止める権利はない。ザックが止めるべきことがあるとしたら、“バロン”の名と誇りを貶めさせない、この一点に尽きる。ザックはチームバロンのリーダーだ。
「ああ。もう――追いかけるのも疲れた」
シュラがベッドの上に体を起こす。
「ザック。一つだけ聞かせろ。駆紋戒斗は、変わったのか?」
「少なくとも、お前が知ってる時点からは見違えたぜ。お人好しな元フリーターの神様とちびな天使サマのおかげでな」
パンパン!
「はいはーい。シリアスモード終了のおしらせー」
「ナッツ……お前な」
「サーセン。おれたち実は別件で来たんすよ」
「……聞くことが、ある。あんたに」
3人の顔が一糸乱れずシュラに向けられた。
季節柄以上に、ぞくりと、した。
(お前らそれ、中学生の目つきじゃねえぞ)
「ネットとコネ総動員して調べた結果、シュラさんがロックシードをもらってた相手が厄介っぽいって判明してね。ネオ・バロンが解体された今、別の、似たような集団や組織を見繕って、おんなじことをする可能性大なの。ビートライダーズから第二第三のネオ・バロンを出さないためにも、そこを叩いておきたいの」
「そーゆーことでおれたちが派遣されたってわけ。だからさ、聞かせてよ。あんたが裏でつながってたのは『誰』だったのか」
シュラが沈黙した時間はそう長くなかった。
後書き
相変わらず読者様に優しくないぶつ切り仕様でお届けいたします。
戦闘シーンは皆さま各自原作で補填してくださいませm(_ _)m
終盤で決戦シーンを予定しておりますので本格的なバトルはそこまでお待ちいただけると幸いです。
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