レーヴァティン
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第五十四話 吟遊詩人その四
「それ次第で大きく変わります」
「それはな、首都が何処かでな」
「政治はまるで違いますね」
「変な場所に置いてもな」
「どうにもならないですね」
「ああ」
その通りだとだ、久志は当主に答えた。
「その場所を治めるに相応しい場所にこそだよ」
「そうです、そして貴方は何処がいいと思われますか」
当主は久志の目を見ていた、その目は強く光ったままだ。
「それで」
「ああ、それはな」
一呼吸置いてだった、久志は答えた。
「ローマか」
「あの街ですか」
「まだ言ってないしこの島の地理を見てな」
「そうしたうえで、ですね」
「言ってるだけだけれどな」
「あの街がですね」
「交通の便もよくて島の各地に行けてな」
久志は当主にその街のことをさらに話した。
「そしてな」
「そうしてですね」
「商業も盛んだ、あと近くに穀倉地帯もある」
「様々な条件が揃っている」
「街が賑わうな」
まさにそれがと言う久志だった。
「そう考えていくとな」
「島の首都はですね」
「あそこだろ」
ローマだというのだ。
「やっぱりな」
「それで、ですね」
「あとはベルリンか、広い島だから首都は一つでなくてな」
「副都も置くのですね」
「それがいいだろ、ベルリンだけじゃなくてバイエルンやパリ、ウィーンやビザンチウムにもな」
こうした街にもというのだ。
「都の機能を置いてな」
「島全体を治めるというのですね」
「ああ、ただローマがな」
何といってもというのだ。
「中心だよ」
「島全体の都ですね」
「そうしたいって思ってるだ」
「そこまでお考えとは」
当主は久志の返事に少し意外といった顔になっていた、そのうえでの言葉だ。
「思いませんでした」
「副都まではか」
「はい、確かにこの島は大きいです」
「大陸位あるよな」
「東の島と並んでこの世界最大の浮島で」
それでというのだ。
「それだけに人口も多いです」
「何億も人間がいるよな」
「はい、東の島も多いですが」
この島もというのだ。
「相当なものです」
「だからな」
「副都を置かれるというのですね」
「そう考えてるさ、あともう一つ都を忘れてたな」
「そこは何処でしょうか」
「ロンドンだよ」
この街の名前もだ、久志は話した。
「あの街もよさそうだな」
「島の北西のあの街ですね」
「あの街もいいからな」
「北西で最も賑やかな街ですね」
「だからあそこもな」
「副都にですか」
「考えてるんだよ」
その様にというのだ。
「俺もな」
「それもまたいいことです」
当主は久志に笑顔で答えた。
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