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レーヴァティン

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第五十四話 吟遊詩人その三

「まさに伝え聞くレーヴァティン」
「紛いものじゃなくてっていうんだな」
「紛いものがその様に古く、しかも見事な装飾はありません」
「よくわかるな、そこまで」
「私は骨董品等の目利きでもありまして、趣味で集めているの」
 それでというのだ。
「こうしたこともわかります」
「だからか」
「はい、わかります」
「俺のレーヴァティンが紛いものでないってか」
「左様です」
「それで俺達もか」
「はい、この島そして世界を救って下さる方々だと」
 まさにこのことがとだ、グリマルディの当主は久志に話した。
「わかるのです」
「そうなんだな、あとな」
「俺達『も』ですね」
「この言葉わかったんだな」
「はい、まさにその通りです」
「ってことは俺達がこれから会う」
「吟遊詩人の方もです」
 まさにというのだ。
「私はわかりました」
「そうか、まさかと思ったけれどな」
「オルフェウスの竪琴です」
 その吟遊詩人が持っているものはというのだ。
「あらゆるものを魅了する音を奏でる」
「神話のあの詩人オルフェウスのものか」
「それを持っているとなると」
 まさにというのだ。
「十二人のうちのお一人」
「その一人にか」
「今からお会いになられますね」
「ああ」
 久志は当主に笑みを浮かべて答えた。
「そうさせてもらうぜ」
「それでは」
「ああ、しかしこの屋敷はな」
 久志は今自分達がいる部屋を見渡した、紅い絨毯が隅から隅まて敷かれ天井も赤で上等のガラスのシャングリラがある。木製の壁も質がいいもので窓は奇麗に磨かれている。
 その部屋の中を見回してだ、久志は言うのだった。
「いい屋敷だな」
「そう言って頂けますか」
「ああ、外は赤煉瓦でな」
「内装もですね」
「いいな」
「三代前の当主、私の曽祖父が建てさせました」
 当主は久志にこのことも話した。
「そうして出来た屋敷です」
「宮殿みたいな屋敷だな」
「ははは、当時建ててです」
 当主は久志に品のいい笑い声を立ててから話した。
「当家の財政はそれまでの貯金を全くなくしたそうです」
「それだけの大金をかけて建てたものか」
「そう言われています」
「そうなんだな、金もかかってるしな」
 久志はこれまで見て来た屋敷の中を思い出しつつさらに話した。
「趣味もいいな」
「そちらもですか」
「ああ、こうした場所に住みたいな」
 こうも言うのだった。
「是非な」
「いい場所ですよ」
 当主も笑って話した。
「このヴェネツィアは」
「そうだよな、景色もよくて」
「景色だけではないです」
「賑わってもいてか」
「この辺りは全てです、ですから島の都を定めるのなら」
 当主は笑みを浮かべつつその目をきらりと光らせて久志に語った。
「場所は選ばれて下さい」
「首都の場所はか」
「はい」
 まさにという返事だった。 
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