蒼穹のカンヘル
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二十八枚目
管理室に転移すると、カオスだった。
「にゃ~!ひどいにゃ~!」
「お帰りなさい篝」
黒歌がツルペタロリになってるし、ヴァーリはデカくなっている。
しかもセラフォルーの所に行く前は不機嫌だったヴァーリがニコニコしてる…
「これどんな状況?」
「生意気な仔猫に"躾"をしただけだよ」
「お、おぅ、そうか…黒歌?」
ヴァーリに聞くのは不味い気がしたので黒歌に問いかける。
「にゃ~!」
「だめだこりゃ」
しょうがない…
「アルビオン!説明求む」
『その猫がヴァーリを煽り、ヴァーリがディバイン・ディバイディングで猫の胸部やら身長やら魔力やらを半減・吸収しただけだ』
………………………
「篝?どうかした?」
「アルビオン」
『なんだ?』
「愚痴なら聞くぞ」
『今晩頼む』
マジかよ…
ツルペタロリになり、へたり込んでいる黒歌を見下ろし、ボンキュッボンになったヴァーリを見上げる。
「どうしたの篝?」
「いや、なんでもない」
俺の身長が120前半。
今のヴァーリは…目測でも160はあるだろう。
「おい黒歌、黒歌!白音の事で話がある…おーい?黒歌ー?」
この後にゃーにゃー泣いてる黒歌を宥めるのに数分を要した。
「でだ、黒歌。白音はどこだ?」
「にゃー…人間界に隠したにゃ…」
「場所は?」
「……クオーっていう土地にゃ」
クオー…駒王?
「その場所は日本か?」
「そうにゃ」
ふぅー…
安堵のため息を漏らし、神に感謝する。
ヤハウェではなく、運命という神に。
「駒王町はリーアちゃんの土地だ。
彼女なら恐らく、上手くやるだろう。
兄の方に頼むよう言ったが…もしかするとリーアちゃんが独力でなんとかするかもな」
「リーアお姉ちゃんの土地?」
「そうそう、あと今代の赤龍帝が居る所でもある」
『それは本当か篝!?』
とアルビオンが食いついたが…
「はーい、落ち着こうねアルビオン。
私は赤龍帝に態々仕掛ける事はしないからね?」
『正気かヴァーリ!?』
「まー…あっちから来たなら禁手でも覇龍でも何でも使って撃退するけどね。
最近覇龍も少しくらいは制御できるようになったし」
禁手に覇龍ねぇ…
ん?そう言えばカンヘルの禁手と解放は何なんだ?
『抜かせ、お前は既に至っているではないか』
は?
『<龍化>は禁手の亜種だ。今まで至った物が居ないのに亜種というのも可笑しな話ではあるがな』
え?じゃぁ俺って鎧着れないの?
『お前がイメージすればできると思うが』
じゃぁ暇な時に試すか…
『暇潰しで禁手しようとするお前には感心するしかないな』
なぁ、知ってるかセルピヌス? そう言うのは『呆れ』って言うんだぜ。
『そうか、覚えておこう。解放については知らん。
だが止めておいた方がいい』
そうなのか?
『馬鹿者。我の力は全ての天使、堕天使、悪魔の総力に匹敵するのだぞ?』
あぁ…そうか…セルピヌスの役割は天使に力を与える事だったな…
『怨念が無くとも、我が力を受ければ、その魂は砕け散り、お前とて命を落とすやもしれん』
なぁるほど…
セルピヌスと会話していると、ヴァーリとアルビオンが揉めていた。
『先にドライグの宿主を殺さねばお前が死ぬのだぞ!』
「だからって力に目覚めていない…無力な一般市民を殺すの!?」
『そうだ!それにお前はすでに禁手に至っている!
奴が目覚める前に全ての決着を着ければ!』
まぁ…アルビオンの言うことにも一理…いや、アルビオンの言うことが絶対的に正しい。
だけどまぁ…今代に限れば…
「アルビオン」
『なんだ篝!』
「今代の赤龍帝は方っておいても問題無い。
断言しよう」
『何故そう言える!』
原作知識とは言えない。
「理由は言えんが知っている。
何ならセラフォルーかアザゼル辺りに頼んで調査してもらうか?」
『…………』
アザゼルなら、『今代の赤龍帝の情報いる?』って聞いたら多分大喜びするだろうな…。
『アルビオン、私も断言しよう。
今代の赤龍帝は放置しても…いや、放置する事こそが最良であるとな』
『セルピヌスまでか…』
「そういう事だ」
「そうだよ。私は篝と居れたらそれでいいの」
『ここは「ヨッイロオトコー」というべき所か?』
棒読み止めろや。
それにヴァーリのは多分恋心じゃないぞ。
多分、兄や姉への信頼だ。
『……………』
「篝は?」
「え!?あ、うん。俺も自分の周りが平和ならそれでいいぞ」
「だよね~」
あれ?ヴァーリの目からハイライトが…?
「そーれ!」
「わぷ!?」
ヴァーリに抱き締められた。
「ちょ、ちょっとヴァーリ!?」
「私は篝と居たいの。
篝は私と居たくない?」
「え?あ?そりゃ、居たいけど?」
いきなり何だよ…?
「うん…今は、それでいいや」
何か含みの有りそうな言い方だなぁ…
「つーか離してくんない?
いろいろ当たってるんだが?」
「こういう時って『当ててんのよ』って言うんでしょ?」
「アザゼルか?」
「うん」
よし、あとでアザゼル秘蔵のエロ-異本を燃やそう。
たしかグリゴリ本部地下四階プライベートルームの-4107号室の押入れだったはず…
-4283号室のも燃やしとくか…
「おっきい体っていいね。
全身で篝を感じられるよ」
「良くねぇよ。戻せ。
俺のプライド的に戻せ」
「やだ」
『言っておくと篝の身長はもう伸びない。
朱璃を助けた代償に肉体の<人間性>を差し出した。
堕天使も龍も成長しないしな』
「元々私の方が大きいから今さらだね」
「うっせ」
「あ~私を放っといてイチャイチャしてるにゃぁ…。
私メインの筈だったのに空気にゃ…
にゃ?変な"でんぱ"でも拾ったかにゃ?」
side out
手のひらを正面にかざして、念じる。
「やっぱり来ないか…」
どうやら、私のクイーンはとんだじゃじゃ馬らしい。
キングの権限による駒の召喚。
それに応じない。
「駒その物を書き換えるなんて…前代未聞だよ…」
ドラゴンを模した緑色のイーヴィルピース…
ミューテーションピースなんてレベルじゃない。
そしてそれを成した要因…
「セルピヌス…」
私は会った事がない。
だけど、もしかすると初代シトリー達は会った事があるのではないだろうか?
神が造り出した全ての天使に祝福を与えた祝福の権化。
それを宿している彼ならば、もしかすると…
〈オリジネイト-天上回帰〉
悪魔が長らく研究していた…
悪魔を天使に戻す術。
「そこら辺は、アジュカちゃんに聞こうかな…」
だけどなぁ…アジュカちゃんの所に行ったらピースを奪ったってバレちゃうんだよねぇ…
「まー、でも…ゲームに出ないならいいかな…」
手元にある四枚の書類。
二人の超越者に向けた物。
一枚は、先の少年の依頼…白音という悪魔の保護に関する物。
もう一枚は、少年のピースの調査を依頼する物。
最後の二枚は同じもの。
少年を『冥界』の切り札として隠匿したいという旨。
その為に少年には正式ルートで悪魔領に入らせていない。
「サーゼクスちゃんとアジュカちゃんの印章紙は…あったあった…」
二枚ずつ重ねた書類の上に、それぞれの印章紙を置き、魔力を流す。
光に包まれ、跡形も無く消えた。
こういう時、教会の者ならば、神に願うのだろう。
だけど、私達は神に叛いた者。
だから私は願う…
「運命の名の下に、冥界に幸多からん事を…」
運命という、気紛れで、誰にも手を差し伸べ、何者をも弄ぶ、この世の真理に。
後書き
高校が2時に終わってもバスの関係で家に返りつくのは5時…
つくづく田舎にすんでんなぁヲイ。
とおもう今日この日。
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