普通だった少年の憑依&転移転生物語
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【ハリー・ポッター】編
232 引導
SIDE ロナルド・ランスロー・ウィーズリー
「……で、次の〝個人授業〟は1ヶ月後あたりで──次はロンも連れて来いってさ」
「何でロンが今になって? ロンだって〝予言〟に触れられていたのよね?」
「……ダンブルドア校長の事だから情報の精査でもしてたんだろう」
アニーの話が終わり、ハーマイオニーからご尤もな疑問が出てくるが、俺は俺はそれらしい言葉でハーマイオニーを宥める。
……実際には、アニーに〝カップ〟と〝髪飾り〟を渡したことから判ることかもしれないが、俺が意図的〝そう〟仕向けたところもあり──そろそろダンブルドア校長と対面して、色々と詳らかにする時が来たと云うわけだ。
……勿論のことながら、〝詳らかにする〟とは云っても、馬鹿正直に全部が全部をぶっちゃけるわけではなく隠すべきところは隠すのだが…。
閑話休題。
4回目かになるダンブルドア校長からの〝個人授業〟だが、昨日アニーはダンブルドア校長と3度も〝憂いの篩〟で〝記憶〟の旅に出掛けたらしい。
一度目はスラグホーン先生から得た〝分霊箱〟についての話で、二度目は〝ロケット〟と〝カップ〟の元所持者を主としていたホキーなる屋敷しもべ妖精の記憶。三度目はダンブルドア校長自身の記憶でトム──〝お辞儀さん〟がホグワーツへ就活に来た時の話だったとか。
一度目についてはおおよそ〝知識〟通りであったし、アニーに〝幸運の液体(フェリックス・フェリシス)〟を渡したのは俺である事から割愛。
そして二度目の〝旅〟の概要はヘプジバ・スミスと云う老魔女が【ボージン・アンド・バークス】で働いていた〝お辞儀さん〟に“サラザール・スリザリンのロケット”と“ヘルガ・ハッフルパフのカップ”を見せびらかしたと云う話だ。
……その二日後、ヘプジバ・スミスは、ホキーが〝誤って〟毒をいれてしまったココアを飲んでしまい、〝亡くなった〟と云う話もついでとばかりに添えられたが──いくらホキーの証言があろうと、〝カップ〟と〝ロケット〟が無くなっていたことから〝真犯人〟なんて判りきっていることだろう。
十中八九、ホキーは〝お辞儀さん〟に記憶を弄られていたと見ていいのだが、当時の魔法省の役人達は詳しく捜査しなかったようだ。……ホキーが屋敷しもべ妖精だからだ。
……この話を俺と共に聞いていた≪屋敷しもべ妖精福祉振興協会≫──≪S・P・E・W≫の言い出しっぺであるハーマイオニーが憤怒したのは言うまでもない。
閑話休題。
三度目はダンブルドア校長の記憶で、その概要は上記の様に〝お辞儀さん〟が面接に来た時の話だ。アニーの話ではその時の〝お辞儀さん〟は、すでに眉目秀麗だった顏を既に喪っていたらしい。
……蛇足だが、〝お辞儀さん〟を追い返して以来、ずっと〝闇の魔術に対する防衛術〟の教師がホグワーツで一年以上勤められた事はなかったそうだ。
また閑話休題。
(さて…)
コーヒーを傾けつつダンブルドア校長への釈明について思考を沈めるのだった。
◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆
「こんばんは、アニー、ロン。……適当にお掛け」
俺とアニーはダンブルドア校長の指示通り、すぐそこにあった長椅子に隣り合わせで座る。
時にして今学期の終わりも見えてきた4月の半ば。〝姿あらわし〟の試験を間近に控えた今日、アニーからの言葉通りダンブルドア校長から〝個人授業〟──とはもう呼べないだろうが、俺とアニーは校長室へ呼ばれていた。
いつもの様にダンブルドア校長が淹れてくれたホットコーヒーを口にしてから、会話の先導性を取りたかった俺が一番に口を開いた。
「……俺がここに呼ばれたと云うことは、ついぞ腹を割って話しあわなければならない時が来たと云うことですね」
「……そうなるの」
『ロン、本当に校長先生にぶっちゃけていいの?』
「(ああ──ってより、寧ろここである程度〝知識〟を出しとかないと、ダンブルドア校長から変に怪しまれる。……まぁ、折衝モドキは出来ない事もないから、そう心配すんな)」
隣のアニーが不安そうな顔をしながら念話でそう訊いてくる。俺もまた念話にて返事をしながら首肯を返してやると、その顔を引っ込めた。
「ダンブルドア校長がどこまで俺の〝異常性〟についてご推察いただいたかは存じじませんが、取り敢えずこれだけは言えます。……〝断片的に〟とな前置きは付きすが──俺は未来を〝予見〟しています」
「……ほう、〝予見〟か」
「はい、〝予見〟です──いえ、〝〝予見〟した〟と云ってしまえば少々語弊がありますね」
まずはジャブ程度であるが、どうもダンブルドア校長からのリアクションは芳しくない。……しかしその程度なら、まだ想定内だったので矢継ぎ早に訂正するための言葉を付け加える。
「〝語弊〟とな?」
するとダンブルドア校長は〝語弊〟と云う言葉に食い付いた。
……俺の狙い通りに。
「今から大体10年でしょうか。朝起きたら自室に〝こんなもの〟が在ったのに気付きました」
俺はそれに〝しめしめ〟と思いつつ、懐からA4ほどのサイズの羊皮紙を二枚取り出しながら続け、その羊皮紙をダンブルドア校長とアニーにも読めるようにした。
羊皮紙に書かれている概要は、こんな表現はあまり好ましく無いが──要は〝巧い立ち回り方〟や〝〝お辞儀さん〟を斃すまでのスケジュール表〟で。
例とするなら[フレッドとジョージから“忍びの地図”を入手する][3年になるまでに〝守護霊の呪文(パトローナス・チャーム)〟修めておく][〝在ったり無かったり部屋〟は超便利]などの文が箇条書き的に記されている。
……もちろん、〝対外的には最後の〝分霊箱〟〟である〝ロケット〟の経緯についての詳細な記述や──ダンブルドア校長の事も記されている。
「……ふむ…」
「ロン、〝これ〟って…」
数分羊皮紙てにらめっこしていたダンブルドア校長とアニーはとある一文に目が釘付けとなったのが判った。
その一文とは[6年の終わり頃アルバス・ダンブルドア、ドラコ・マルフォイを庇う為にセブルス・スネイプに討たれれる]と云う一文で、ダンブルドア校長はその一文を指しながら俺に訊ねてきた。
「……君がこの情報を出し渋ったのは、この一文が在ったからかな?」
「……はい」
俺は言葉少なに頷く。ここは変に言葉を付け足すべきところでは無いと判っていたから。
……ちなみ、にこの羊皮紙を作成したのはここ1ヶ月のことで、念には念を押して〝魔法〟とは違う系統の力である時間操作系のスキルで羊皮紙自体の時間も弄ってあったりする。
閑話休題。
さらにちなみに──10年前といえば、〝記憶〟を継承出来た年でもあったのも丁度良かったとも云える。
また閑話休題。
ダンブルドア校長は羊皮紙の紙面で視線を左右させるのを止めると十数秒ほど黙りこみ、軈て口を開く。
「……色々疑問は有るが取り敢えず訊きたい──ロンはなぜ、儂にこの重要な情報を見せてくれたのじゃろうか?」
ダンブルドア校長もあるべきであろう──[アルバス・ダンブルドアに〝この羊皮紙〟を見せる]と云う文が見当たらないのに目敏く気付いたのか、そんな事を訊いてくる。俺の答えは決まっていた。
「ダンブルドア校長と〝定めている未来〟が一緒だからではないでしょうか」
「っ!!」
(………?)
「……校長先生?」
〝定めている未来〟。それは云うまでもなく〝〝お辞儀さん〟の討滅〟である──はずなのだが、ダンブルドア校長は息を呑み、俺を見たまま固まった。アニーも心配そうにダンブルドア校長を見て、それから確認する様に俺を見るが俺はそのアニーのアイコンタクトに対して首を横に振ることで応える。
地雷でも踏んだかと思ったが、ダンブルドア校長の顔には〝憤怒〟とかそういう負の感情めいたものは感じられなくて、寧ろどちらかと云えば〝驚愕〟とか、呆気に取られた様な表情であったのだが、どちらにしても全くもって検討がつかなかった。
そしてそれも束の間で、今度は何かを悟った表情となって訥々と語り始めた。
「つまりじゃ。……つまりロンは儂にこう言いたいのじゃな? ……〝アルバス・ダンブルドアよ死ね〟──と」
「……〝アルバス・パーシバル・ウルフリック・ブライアン・ダンブルドア〟と云う名前は強すぎるのです。……良くも悪くも」
「ロン!」
俺の言外なダンブルドア校長の死を唆す言葉に気付いたらしいアニーが声を荒らげるが、そんなアニーをダンブルドア校長が宥める。
「良いのじゃよアニー。寧ろ儂はロンに礼を述べねばならぬじゃろうて──漸く肩の荷が下りた」
「しかしこれでは…」
「……スラグホーン先生の話を聞いたアニー──それとロンなら判ることじゃろうが、〝殺人〟と云う行為は人の道理に背いた行為じゃ。行き先短い老い耄れの命で〝とある少年〟の命と魂の健全性が買えるなら安いものじゃ」
ダンブルドア校長の本気度を感じたアニーは〝ぐぬぬ〟、と黙りこむ。ダンブルドア校長は今度は〝その瞬間について〟俺に訊いてくる。
「しかし、〝かの少年〟が策も無しに儂の前に立つとは思えぬ」
「〝彼〟は今、ホグワーツにある〝姿をくらます飾り棚〟と【ボージン・アンド・バークス】にあるそれを繋げようとしています」
「っ──確かにそれなら〝増援〟望めるじゃろう。……いやはや、これは〝かの少年〟に一本取られた──本当に賢いやり方じゃ」
アニーも夏休みに【ウィーズリー・ウィザード・ウィーズ】へと行った時の事を思い出したのか、「……そういえばそんな事もあったけか」と俺の証言を補足しながら頷いている。
……すると、またもやダンブルドア校長は「ロン、最後に訊きたい」と云う前置きで俺に訊ねてきた。
「ロナルド・ウィーズリー──君にとって〝死〟とはなんじゃろうか?」
「……〝死〟ですか。……目の前に来た時に正しく抗うべきものでしょうか」
「〝正しく抗うべきもの〟──なるほど、これまた興味深い考え方じゃ。……漸く君のことがほんの少しだけじゃが判った気がする」
ダンブルドア校長からの問い俺の気持ちで以て答えれば、ダンブルドア校長は、いっそ朗らかな表情となる。
そして「二人とも今日はお帰り」と言われたので、その指示通りアニーと共に校長室から退室するのであった。
SIDE END
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