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愚か者

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第四章

「後でノストラダムスやら占いやら何やら出して」
「はい、そんな漫画もありますし」
「あれだけ後で幾らでも言えるものはないから」
「言ったもの勝ちですか」
「そうだよ、だからこれもね」
 予言もというのだ。
「正直なところね」
「出鱈目ですか」
「巷に出ている予言の本全般がそうだろうし」
「あの教団の予言もですか」
「出鱈目だよ、全部ね」
「そうですか」
「そうして人の不安を煽って自分達の言うことを注目させているんだ」
 その為の撒き餌の様なものだというのだ。
「予言なんてのはね」
「それであの教団もですね」
「予言がどうとか言ってたんだよ」
「それじゃああの教祖は」
「インチキとしか言えないよ」
 これが斑鳩の見るあの教祖だった。
「そして吉本隆明はね」
「それがわかっていないんですね」
「全部ね、思想家だというけれど」
「それじゃあ思想家どころか」
 岩崎は眉を顰めさせて言った。
「本当にうちの生徒の方がずっと賢いですよ」
「ものがわかってるね」
「はい、高校生の方が上ですか」
 戦後最大の思想家よりもというのだ。
「そうなんですか」
「そうだろうね」
 斑鳩は岩崎の半ばヤケになった様な主張を肯定した。
「結局は」
「そうなんですか」
「あんな教団のあんな教理の何処がいいのか」
「それがわかってなくて」
「あんな教祖を最も浄土に近い人とか言えるなんて」
「馬鹿ですよね」
「そう、吉本隆明は馬鹿だよ」
 斑鳩ははっきりと言い切った。
「これ以上はない愚か者だよ」
「戦後最大の思想家じゃないんですか」
「そうだよ、何もわかっていない愚か者だよ」
 またはっきりと言い切った斑鳩だった。
「彼はね」
「そうなるんですね」
「あんなの誰でもわかるじゃないか」
「それこそまだ学んでいる最中のうちの生徒達でも」
「そうだよ、誰でもわかることだよ」
 オウムもあの教祖もおかしいことはだ。
「それでああしたことを言うなんてね」
「馬鹿なんですね」
「そうだよ、僕は吉本の本は数頁で止めたけれど」
「よかったですか」
「よかったよ、戦後最大の思想家でも行き着いたのがオウムならね」
 そしてあの教祖ならというのだ。
「最初からたかが知れてるし」
「高校生にも及ばない位だったんでしょうか」
「そうだったかもね、だから僕は彼の本はこれからもね」
「読まれないですか」
「読む価値もないよ」
 一切、という言葉だった。
「それこそね」
「そうですか、じゃあ僕も」
「岩崎先生もだね」
「読まないです」
 こう斑鳩に答えた。
「元々哲学書は読む方じゃないですし」
「これから読もうって思っていたんだね」
「そうも考えていましたけれど」
 それをというのだ。
「止めました」
「読まないんだね」
「それなら他の人本読んだ方がずっと有益ですしね」
「オウムやあの教祖を立派だとか言う位だとね」
「どうしようもないですからね」
「そうだよ、しかしね」
 ここでこうも言った斑鳩だった。 
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