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愚か者

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第三章

「理解出来ないものは評価しようがないね」
「それはそうですね」
「だからね」
 それでというのだ。
「僕はもうね」
「評価の外でしたか」
「そうだったよ、しかし今岩崎先生が言ったことは」
「はい、とんでもないこと言ってたんですよ」
 その雑誌の中でというのだ。
「オウムの教祖が偉大な思想家とか最も浄土に近い人だとか地下鉄でサリンを散布した理由がわからないとか市民の側にだけ正義があると思うなとか」
「全部間違いだね」
 斑鳩が岩崎が話した吉本隆明の発言を全て否定した。
「完全に」
「やっぱりそうですか」
「そうだよ、今うちの学校でも生徒達が言ってるね」
「はい、拉致とかサリンとかポアとかで」
「あの教団の教理もおかしいってね」
「皆胡散臭いって言ってますね」
 この学校のどの生徒達もというのだ。
「それこそ」
「そうだね、まだまだ若い子達でもね」
「それはわかりますよね」
「オウムはカルトでその教理もね」
「胡散臭いですね」
「あらゆる宗教の自分達に都合のいい部分だけ切り取ってつなぎ合わせただけだよ」
「そうした教理ですよね」
 これは岩崎が見てもであり生徒達が見てもだった。
「やっぱり」
「僕もそう見ているよ」
「それでお金に愛人に美食にって」
「最終解脱とかも言ってるけれどね」
「最後の解脱者ですか?それとも解脱の最終段階ですか?」
「どっちも間違いだよ、解脱する人がいるかどうかはともかくとして」
 斑鳩はそれはわからないとした。
「あの人が最後か」
「イスラムのムハンマドじゃないですよね」
「預言者と解脱は違うからね」
 また別のものだというのだ。
「また別だよ」
「そうなんですね」
「そう、そして解脱の最終段階もね」
「ないですか」
「お釈迦様は解脱してもまだ修行をしたよ」 
 それこそ涅槃に入るまでだ。
「ましてああしてメロン食べて愛人何人もいてパーコー麺食べたりお金集めたりとかね」
「解脱してる人じゃないですね」
「解脱している人は権力も求めないよ」
 そもそもその時点でないというのだ。
「私利私欲の為に人を大勢殺さないよ」
「全然違いますよね」
「そうさ、あの髭だってね」
 あまりにも有名になっている長く伸ばした髭もというのだ。
「キリストだっていうけれど」
「十字架のですね」
「あのキリストはラテンの顔だね」
「あっ、そういえば」
 言われて岩崎もそのことに気付いた。
「そうですね」
「キリストはユダヤ系だね」
「はい、確かに」
「当時のね、絶対にラテン系の顔じゃないから」
「ですよね」
「中世以前のキリストの肖像画は髭がなかったし」
 このことも話す斑鳩だった。
「あんな髭である筈がないんだ」
「あの教祖はそれもわかっていなかったんですね」
「そう、それに予言なんて幾らでも言えるね」
 今度は教団が熱心に言っていたこれの話もした。 
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