共和制
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第四章
「日本は人民共和国になってな」
「世襲はしない」
「今後はか」
「そうあるべきか」
「そや、絶対にや」
こう言うのだった、日本の皇室については。そして北朝鮮の国家システムと日本の資本主義を比較して日本のそれを批判し続けた。
だがその彼についてだ、彼の友人達も勤務先の教師達もだった。えも言われぬ違和感を抱かずにはいられなかった。
「日本は資本主義だ」
「資本主義では君主制の国もある」
「イギリスやオランダがそうだ」
「だから日本に皇室があってもいい」
「しかしだ」
それでもと言うのだった。
「北朝鮮は共産主義だ」
「共産主義で世襲はないだろ」
「それの何処が共産主義だ」
「幾ら人民が支持していると言っていても」
既にそんな支持なぞ共産主義国家特に北朝鮮ではある筈がないということに気付いている者もいた。
「有り得るものか」
「しかも一番後継者に相応しいといっても」
「自分の息子を選ぶものか」
「カストロは自分の子供は一人も政治家にしていないぞ」
キューバ革命評議会議長、つまりキューバの国家元首である彼はというのだ。
「弟のラウル=カストロは政治家だが」
「ラウル=カストロは彼と一緒に戦っていた」
「同じく革命の闘士だった」
「だが金正日はどうだ」
「ただ息子であるだけではないのか」
ラウス=カストロと違ってというのだ。
「それで後継者にするなぞ」
「どう考えてもおかしい」
「あの国は共産主義か」
「そして共和国か」
「世襲なら君主制とどう違う」
「日本の皇室より遥かにおかしくないか」
こう言うのだった、そして村本に教わっている生徒達もだった。
村本についてだ、何だという顔で話をしていた。
「おかしいよな、あの先生」
「そうだよな、どう考えても」
「北朝鮮はいいって言ってな」
「我が国の皇室は駄目って」
「おかしくない?」
「あそこ世襲でしょ」
「日本の皇室と同じじゃないか」
世襲ならというのだ。
「それでどうしてなんだ」
「日本の皇室はあそこまで批判するの?」
「それで北朝鮮はいいって」
「おかしいだろ」
「どうにも」
「何かあの先生他にも変なこと言ってるし」
「ソ連が平和勢力とか」
ひいては共産主義全体がだ。
「うちのお祖父ちゃんシベリアに連れて行かれて死にそうになったのに」
「ソ連が満州に攻めてきて」
「ソ連が一方的に攻めてきたんだろ」
「そんなソ連が平和勢力?」
「それで北朝鮮も」
「北朝鮮って拉致やってるんだろ?」
生徒のうちの一人がここで眉を顰めさせてクラスメイト達に囁いた。
「そうだろ」
「えっ、それ本当?」
「あの国日本人攫ってるの?」
「それ犯罪じゃない」
「そんなことしてるの」
「まさか」
「何か新潟とか鳥取とかで」
北朝鮮に近い日本海側でというのだ。
「そんな噂あるらしいぞ」
「おい、本当かよ」
「日本人を攫ってるって」
「それ洒落になってないぞ」
「北朝鮮そんなことしてるのか」
「まさか」
生徒達はここで北朝鮮に決定的に違和感を持った、村本が言う様な国ではないかも知れないとだ。だがそれでもだった。
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