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蒼穹のカンヘル

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十二枚目

「よう、待ってたぜ篝。神器の能力が発言したんだって?」

出迎えはやはりアザゼルだった、子供のようにウキウキしながらの出迎えだ。

「うん、あと、コイツの事も結構分かって来たんだ」

シャララララン…という音と共にカンヘルが召喚される。

「マジか!?よし分かった!早く行くぞ直ぐに行くぞ!」

と言ってアザゼルは俺を連れて行こうとするが…

「アザゼルさん、少しよろしいですか?」

「は、はい!何ですか朱璃さん?」

「少し部屋を貸してください。
この人と少しお話がありますの」

母さんが呼び止めた。

「わかりました、直ぐに用意します」

やはり堕天使総督が俺の母さんに頭が上がらないのは間違っている…と、思うのだが言ったら負けだろうか?

「朱乃とヴァーリはサハリエルの所に行っててくれ。篝、行くぞ」

「分かった」

連れてこられたのはいつぞや俺が天撃(偽)を撃ったホールだった。

中には機材等が置いてあるがやはり誰も居ない。

「ねぇ、アザゼル」

ホールに入りスライドドアが閉まると共に俺はアザゼル問いかける。

「どうした?篝?」

「………セルピヌス。聞いた事 、いや、会ったこと、あるよね?」

と言うと予想通りアザゼルは狼狽えた。

「な、な、何故お前がその名前を知って居るんだ!」

俺は答える変わりにカンヘルを見せた。

「まさか、おいおい、嘘だろう?」

たどり着いたようだ。

「アザゼルが思っている通りだよ。
カンヘルに封じられて居るのは祝福の龍セルピヌスだ」

アザゼルは呆然としている。

「そ、んな、バカな…」

「でも事実だよ、今日の朝、夢に銀色の龍が出てきた。
夢にしては首を飛ばされた感覚がリアルだったし内容を覚えてるから、多分だけど神器の中に居たんだと思う」

「ちょ、ちょっと待て、篝、今何て言った?首を飛ばされた?」

あ、そこか

「そうだよ」

「お、おまえ!だ、大丈夫なのか!?
首は痛まないか!?は大丈夫か!?
光力は!?じ、神器の中って!」

う、うわ!?

アザゼルが詰め寄って来て俺の首を摩る。

「ど、どうしたのさアザゼル!?」

「お、お前!神器の中の出来事は現実に干渉するんだぞ!」

あ、そうなのか。

そういえばそうだな、夢の中で首を飛ばされたとしてもあくまでも夢の中の出来事。

セルピヌスの言う『実演』する意味がないからな…

「だ、大丈夫!ほら、ピンピンしてるでしょ?
それにそういう能力なのさ」

と答えるとアザゼルの目が変わった。

「どういう事だ?回復系か?」

「う~ん…『実演』しようか」

「実演だと?」

「うん」

俺はカンヘルの先端に光力刃をだし腕に降りおろ…せなかった。

「何考えてんだ!バカな事はやめろ!」

アザゼルに止められたからだ。

「だから『実演』だって!」

「それでもだ!ちょっと待ってろ!」

と言ってアザゼルは懐から一本の針を出した。

「これで指を刺せ、それ以上の事は却下だ」

「はいはい」

俺は針で自分の指を突いた、じわりと血が滲む…

「?」

「治らねぇな、やっぱり…何してんだ篝!」

俺は針を腕に刺し…腕を裂いた。

「バカ野郎が!待っ…」

【リバース】

硝子の割れるような音と共に腕が結晶に覆われた。

パリィィンと結晶が砕けた後には傷一つ無い腕が有った。

「これが【リバース】。
セルピヌスが言うには俺は不死身らしい。
今の俺にとって生と死は同価値にして同じもの…とセルピヌスは言ってた」

「そう、か…それがお前の…」

「力の一つ、後七つある」

あ、黙り込んじゃった。

「………………俺もう何があっても驚かねぇ自信あるぞ」

失礼な、俺を人外みた…あ、人外か。

「て言うか機材でデータ録らなくていいの?」

「あ、ああ、そうだな」

とアザゼルは機材の準備を始めた。

「篝、準備終わったぞ。
ただし【リバース】は無しだ」

「はいはい、でどれからやればいい?」

「選択肢をくれ」

あ、言ってなかったな…

「防壁の【ウォール】。
転移の【ロスト】。
空間をねじ曲げ攻撃する【ワーム】。
生物以外を引き寄せる【アポート】。
あらゆる物を侵食、糧とする【同化】。
あらゆる力を強化する【アクセル】。
思考速度を上げる【ブレイン】。
そして不死身をもたらす【リバース】」

「トゥルーロンギヌス並みじゃねぇか!?」

何があっても驚かねぇんじゃねぇのかよ…

「じゃぁまず【ウォール】を」

とアザゼルが言った。

「OK」

「よし……いいぞ」

俺はカンヘルを握りしめ障壁をイメージした。

【ウォール】

漆黒の、全ての光を呑み込まんとする壁が現れた。

「そのまま保持してくれ」

「OK」

アザゼルはカタカタとキーボードを叩いている。

「ん?は?どういうことだ?」

いや、お前がどうしたよ。

「どうしたのさアザゼル?」

「篝、その防壁について何かきいてないか?」

「なんで?」

「データがおかしい。異常だ。
その防壁は面であって面じゃない。
線だ、それも線の集合ではなく線そのものだ」

面のように見える線?でも面だろ?う~ん、そうだ!

「多分【ワーム】と【ロスト】を調べたら分かるよ」

「本当か?」

「多分この3つは近い物だから」

「そうか、では【ロスト】から頼む」

「OK、出現位置はなるべくこのホール内にする」

アレ以来試してねぇし。

「あ~分かった」

俺は意識を集中させる、位置は五メートル先ぐらい…

【ロスト】

視界が黒く染まり…俺は元の位置から五メートルの位置に居た。

「どう?セルピヌスは一次元空間に潜るとか言ってたけど…」

「……………………………」

また固まってるし。

「アザゼル、さっきからフリーズしすぎ」

「いや、一次元空間に潜るって…そもそも一次元空間ってなんだよ…線だろ…」

俺が知るか。

「篝、転移するときどんな感覚なんだ?」

「視界が黒くなるだけ、暗闇が消えたら転移してる」

アザゼルは腕を組んで考え始めた。

「………全くわからん」

うん、使ってる俺にもさっぱり。

「じゃぁ次は【ワーム】行くよー。
アザゼル、準備して」

と言うと。

「ああ、どうせ何もわからんだろうがな…」

あれー?なんか凹んでるんだけど…

「あ、【ワーム】って攻撃手段らしいからなんかターゲットちょうだい」

「んー、これでいいか?」

と赤のボールペンを渡された。

俺はそのペンを床に置き少し離れた。

そしてボールペンを意識する。

ねじ曲がれ、と。

【ワーム】

ボールペンが黒い球体に包まれた。

黒い球体が消えた後には無惨にねじ曲げられインクが血のように垂れていた。

「コイツぁまた…」

「今度も同じ?」

「いや、ちがうな…ゼロ次元に向かってネジ切られてる」

ゼロ次元?

「なにそれ?」

「ゼロ次元ってのは無だ。
この世界を包む虚無。天界、地獄、人間界を隔てる次元の狭間と同じだ」

そこで一度区切りアザゼルは続けた。

「そして今お前が出した黒い球体の内部は時空がぐちゃぐちゃになっている。
ペンがねじ切れたんじゃない、空間その物が歪んだんだ。
おそらく後の二つは【ワーム】の応用みたいな物だ」

やっぱりか…俺の、否カンヘルの能力は大きく分けて3つ。

『時空間干渉』『結晶』『強化』だ。

それぞれ【ワーム】【ロスト】【ウォール】、【同化】【アポート】【リバース】、【アクセル】【ブレイン】だ。

【アポート】【リバース】は3つの内二つを兼ねているように見えるが…ちがうのだろうか?

「じゃぁ次はどうする?」

「【アポート】だ」

転移系、つまり時空間干渉だけど結晶なんだよね…

「ん~分かった」

俺は少し離れた位地にカンヘルを置いた、だいたい三メートル位だ。

「いくよ」

【アポート】

パキパキパキパキ!とカンヘルが結晶に覆われ俺の手の中にも棒状の結晶が生まれる。

パリィィン!と結晶が砕け、俺の手の中にカンヘルが収まる。

「どう?」

「ふむ…お前の手の中の結晶がカンヘルと同じ形状になった瞬間に床にあったカンヘルが手の中に移動している。
カンヘルが同時に二つあるわけではなくあくまでも一つが移動している」

「へぇ…で、この結晶については?」

「少し待て」

と言ってアザゼルは結晶を拾い上げ、数歩離れた位地にあった機械にセットした。

ガション、とレバーを押し込んで一分ほどが経ち…

「どうやらこの結晶はケイ素でできているらしい。
それも未知の同素体だ」

ケイ素……土?

「要するに土?」

「よく知ってんな、まぁ、どちらかと言うとシリコンに近い」

へぇ…

「次に【同化】いけるか?」

「う~ん…」

セルピヌス曰く『あらゆる物を侵食し自らの糧とする』だからな…あ。

「アザゼル、羽ちょうだい」

「羽?なんでまた?」

「アザゼルの羽をターゲットにしてみようと思うんだ。
セルピヌスは『自らの糧とする』って言ってたし」

「あ~………いいぞ」

と言ってアザゼルは羽を一枚渡してくれた。

俺は渡された羽を手の平に乗せ…羽を喰らう事をイメージしたすると…

パキ…パキ…パキパキパキパキ!と結晶が表れ、力が流れ込んで来た。

「お、ぉ?おお!?これが『糧とする』って事か…」

パリィィン…と羽を覆った結晶が砕け、後には何もなかった。

「アザゼルー。なんかわかったー?」

「少し待て、それと今お前が作り出した結晶を全てくれ」

「はーい」

俺は手の中にある結晶を全てアザゼルに渡した。

先ほどの機械にセットして何かを調べ始めた

「ああ、これは…成る程な…」

「度したの?」

「俺の羽が完全に結晶になっている。
組成からオーラまでもな。
で、お前自信に何か変化は?」

「力が流れ込んで来た。
多分、アザゼルの羽の分」

「ふむ…アブソープション・ラインと似た力か…」

え~っと…黒い龍脈、だったっけ?

「ヴリトラ?」

「よく覚えてんな、もう一年は前だぞ」

テメェが龍系神器一覧押し付けたんだろうが。

「絶対読んどけって言ったのはアザゼルでしょ」

「ああ、うん、そだったな」

それで…

「【アクセル】と【ブレイン】はどうやって示せばいいの?」

「………………………」

「考えてねぇのかよ…」

「ん…百枡計算でもやるか?」

「【ブレイン】はそれでいいとして【アクセル】は?」

「エクソシスト用の光弾銃で試すか」

「おーけー」

アザゼルは待ってろと言って端末で誰かを呼び出した。

そして二分程経ち…

「篝、久しいな」

表れたのはブロンド、エメラルド、そして八重歯が特徴的な合法ロr……

「篝、何考えてんだ?」

わーバレてる…

「な、なんでもないよ。
久しぶり、グザファン」

「ほら、持ってきてやったぞ。
『三十四式光力式祓魔銃』」

そう言ってグザファンが差し出したのはSFチックなハンドガンだった。

「おう、わりぃな。篝、外に向けて射て」

「はーい、グザファンも見てく?」

「そうだな」

ピーピーピーピー!と警告音を出しながらゲートが開く。

いつぞや俺が山を吹き飛ばした時と同じようにだ。

「じゃぁ先ずは普通に撃つね」

「ああ」

トリガーを引くと光力が強制的に吸い上げられる感覚がした。

パシュッと気の抜けるような音と共に光の粒が吐き出される。

「ショボッ!」

吸い上げられた光力の割にショボい。

「そう言うな、それは人間が造った物だ。
下級悪魔に五発叩き込んでようやく倒せるレベルだ」

うわーこんなので戦ってんのか…成る程。

悪魔がそれほど衰退してないのは敵の実行部隊が弱いからか…

「じゃぁ、いくよ」

「ああ」

とアザゼル。

「いいぞ、見せてみろ」

とグザファン。

握りしめたハンドガンに意識を集中させると俺の手から結晶が生まれハンドガンを呑み込んだ。

【アクセル】

トリガーを引く、ドシュゥゥ!とレーザーのような光力弾が放たれた。

ドォォォォォォン!と以前俺が吹き飛ばした山より遠くの山が吹き飛んだ。

それと同時にハンドガンが砕け散った。

完全に結晶化しておらず、所々金属のパーツのまま砕けた。

「またか…はぁ…」

いや、山が吹っ飛ぶのは分かってただろ。

「おー!コイツぁ派手にやったなー!たーまやー!」

おいグザファン何故日本の伝統的掛け声をしっている。

ビービービービー!

「はぁ…」

これはたしか…端末の着信音だったか?

「ほれ、アザゼル、さっさと出ないと小言が増えるぞ」

とグザファンが茶化す、それを受けてアザゼルは嫌そうに応答した。

「おう、おr…」

『今度は何をやったんだ!』

と端末から声が響いた

「おーおー、シェムハザの奴怒ってんなー」

グザファン、少しはアザゼルの心配もしてやれよ…

「う、ぐぅ、耳元で叫ぶな…………ああ………分かった………いや!待て!………話を!………おい!………ああぁ…」

な、なんだ!?アザゼルからすげぇ負のオーラが…

「どうしたアザゼル?シェムハザからなんか言われたか?」

「グザファン……酒あるか?」

「くっ、くく、そうかそうか、あっはっはっはっは!またか!」

な、何?今ので笑うとこあるのか?

「お?篝、訳わかんねぇって顔だな。
アザゼルは禁酒を言い渡されたんだよ。
この前コイツがやらかした時にこれが効いてな!」

あー成る程。

「ん?コッソリ呑めばよくね?」

「そうもいかねぇのさ、シェムハザがコイツに酒を出さねぇように言ってるしコイツはこの前の事もあって酒を一本も隠せてねぇ」

うわーシェムハザさん怖えー、一回会った時は気のいいお兄さんってイメージだったな。

「ま、そんな訳さ。もしアザゼルがお前の家に酒を貰いに来たら追い出していいぞ」

「OK」

「あ、あぁぁ…」

アザゼルがめっちゃ凹んでる、やっぱり家に来る積もりだったようだ。

「おい、篝、アザゼルは放っておいてメシ食おうぜ」

「ん…姉さん達も一緒なら」

「よし、行くか」

その後は本部内の食堂で昼食を取った、母さんの拷m…ゲフンゲフン、尋m…ウォッフォン、O★HA★NA★S…ゴホゴホ、御話はまだ終わらないようなのでこれから先生の所にいく。

色々、聞きたい事があるしね。
 
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