Fate/ONLINE
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第二話 英霊召喚
前書き
今回かなり長くなってしまいました。一応今回一体目のサーヴァントが召喚されます。
ゲーム開始から一カ月で二千人が死んだ。
あいかわらず、何の解決策も見つかっておらずそれどころか現実世界からの連絡すらもない。
俺はベータテスト期間に仕入れていた情報をもとになんとかここまで生き残っていた。
正直情報を一人占めしているようであまり気分が良くなかったけど、この一カ月は自分が生き残るのに必死だった。
そして俺は今現在、第一層の攻略会議に参加している。
一ヶ月たってようやく落ち着きを取り戻したためか、皆攻略に本腰を入れ始めたようである。
「はーい、それじゃあそろそろ始めさせてもらいまーす!」
よく通る声が集会場に響く。
「今日は、俺の呼びかけに応じてくれてありがとう。俺はディアベル、職業は気持ち的に騎士〈ナイト〉やってます!」
主催したディアベルという青年は、最初に軽い冗談などをかます辺りかなり好印象の持てるヤツだ。
ディアベルはさわやかな笑顔で笑いを取ると参加者の心を掴んだ。
正直人付き合いが苦手だった俺にはなかなかできる芸当ではない。
その点俺はディアベルが羨ましい。
そして、参加者の心をつかんだディアベルは突如真剣な眼差しに変え、陽気な雰囲気を張り詰めた空気に変えた。
「今日、俺達のパーティがあの塔の最上階で、ボスの部屋を発見した!」
そうディアベルが言うと、ざわめきが起こる。
「俺達はボスを倒し、第二層に到達して、このデスゲームをいつかきっとクリアできることを、始まりの街で待っている皆に伝えなくちゃならない!それが今ここにいる俺達の義務なんだ!そうだろ?みんな!」
ディアベルは、集会場にいるすべてのプレイヤーの心に届かせるかのように力強く言い放った。そしてその思いは参加者にも伝わり拍手と喝采が起こった。
「OK!それじゃあ早速だけど、これから攻略会議を始めたいと思う。まずは六人のパーティーを組んでみてくれ。フロアボスは単なるパーティーじゃ対抗できない!パーティーを束ねたレイドを作るんだ」
「…へ?」
その言葉に俺は思わず間抜けな声を上げてしまった。
人付き合いのあまり得意じゃない俺は、積極的に自分から話しかけられる程の度胸はない。
それに今までずっとソロで狩ってきたため親しい人間はほとんどいない。
そのため、あっと言う間に取り残されてしまった。
俺は誰か組めるプレイヤーはいないかと辺りを見回す。
と、俺はフードを被った一人の女性プレイヤーを見つけた。
彼女は初めからパーティを組む気はないかのように黙って最上段に鎮座している。
「なあ、……アンタらもアブレたのか?」
「……私はアブレてないわよ。周りがみんな仲間同士だったから遠慮しただけ」
「そうか、なら俺と組まないか?」
俺は彼女にそう声をかけると、彼女も一応了承してくれた。
俺は彼女にパーティ申請のメッセージを送り、パーティを組んだ。
しかし、それから彼女はそのまま黙ったままだった。
どうやらまだ俺たちの間には距離感があるらしい。
「よ~し、そろそろ組終わったかな?じゃあ――」
「ちょっと待ってんかーー!!!」
パーティを組み終わりディアベルが今後の方針を話そうとした時、突然一人の男が広場の前に出てきた。
「ワイはキバオウってもんや。ボスと戦う前にいっぺん言わせてもらいたい事がある」
キバオウと名乗ったその男はプレイヤー全員を指さすように指先をキッと向ける。
「こん中に、今まで死んで逝った二千人に詫びいれなあかん奴らがおるはずや!」
俺はキバオウが何を言おうとしているのか察しが付き、微かに顔をしかめた。
「キバオウさん。君の言う奴らとはつまり、元ベータテスターの事、かな?」
「決まっとるやないか! ベータ上がり共はこんの糞ゲームがはじまったその日に、初心者(ビギナー)を見捨てて消えおった。奴らは旨い狩場やら、ボロいクエストを独り占めして、自分らだけポンポン強なってその後もずーっと知らんぷりや!」
ジロリと全体を見回してから、キバオウは更に吼える。
「こん中にもおるはずやで!ベータ上がりの奴等が!!そいつ等に土下座させて!貯め込んだ金やアイテムを吐きだしてもらわな、パーティメンバーとして、命は預けられんし、預かれん!!」
思わず顔を顰める。
この世界に来て、命がけで強くなろうとして敵を倒してきた。
それはベータでもビギナーでも同じように払うリスクのはずだ。
俺の中で何かがモヤモヤと渦巻いていた。
「発言いいか?」
その中で前列、観客席の中段の位置に座る褐色の肌の巨漢の男が手を挙げる。
「俺の名はエギルだ。キバオウさん、あんたの言いたいことはつまり、元ベータテスターが面倒を見なかったからビギナーが沢山死んだ、その責任を取って謝罪しろ、ということだな?」
「そ、そうや……」
巨漢エギルの存在感にキバオウは一瞬怯んだ様子を見せた。
すると、エギルはポケットから小さな本のようなものを取りだす。
「このガイドブック……アンタももらっただろ。道具屋で無料配布してるからな」
「もらたで……それがなんや!」
「配布していたのは、元βテスター達だ」
その言葉が響いた途端、いっせいにざわめきはじめた。
キバオウの方は少しうめいていた。
そして、エギルは周りの方を向き、声を上げた。
「いいか。情報は誰にでも手に入れられたんだ。なのに、たくさんのプレイヤーが死んだ。その失敗をふまえて、オレ達は、どうボスに挑むべきなのか。それが、この場で論議されると、オレは思っていたんだがな」
そして、言い終えたエギルはキバオウを見る。
「フン…」
エギルの言葉を聴き先ほどまで騒いでいた観衆が少しずつ声を出さなくなった。
キバオウも鼻を鳴らすと、皆と同じように段差に座る。
俺はチラリと隣にいる少女を見た。フード付きマントを羽織っており表情は伺えない。
先程俺とパーティを組んだ彼女は一体どれほどの経験を積んできてるのだろうか。
「攻略会議は以上だ。異論はないかな?」
みんながコクリと頷く。
「それじゃ、出発は明日の10時!解散!」
ディアベルのかけ声と共に攻略会議はお開きとなった。
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時は過ぎて次の日の朝10時。
いよいよ第一層の攻略が開始された。
道中、俺はパーティを組んだ少女「アスナ」とフォーメーションのチェックを行っていた。
アスナはパーティを組んだのは初めてらしく“スイッチ”も“ローテ”についても知らないらしい。
俺は、前途多難だと思いながらもボスの扉の前に着くまで俺はアスナにスイッチやPOTローテの仕方などをに教えながら先へ進んでいった。
そして遂にボスの部屋の前に到着。
すると先頭を歩いていたディアベルは俺たちに向き直るとこう言い放った。
「聞いてくれみんな。俺から言うことはたった1つだ。」
そして一言
「勝とうぜ!」
ディアベルはそう言い扉をゆっくりと開いた。
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扉の先で待ち受けていた、第一層のボス、“イルファング・ザ・コボルドロード”は、俺たちが部屋に入った時、部屋の奥にある玉座から大ジャンプをし、襲いかかってきた。
その際“ルインコボルド・センチネル”という取り巻きも一緒に出現してきたのだが、それぞれが自分の持ち場で戦いフォーメーションを組んで対処することにより、ここまで一人も犠牲者を出さずにボスに挑んでいた。
そしていよいよ“イルファング・ザ・コボルドロード”のHPバーも残り一本と言うところで奴が突如武器を捨てた。
攻略本に書かれていたとおりならば武器を変えるのだろう。
「情報通りみたいやなぁ」
キバオウがボソリとつぶやいた。
そして、
「下がれ!オレが出る!!」
ディアベルがキバオウの横を武器を構えながら通り抜けた。
だが、ここで俺にも予想外の事が起きた。
ベータテストでは持ち返るはずの武器はタルアールだったはずだ。
だが、奴が手に持っているのはカタナ。
ベータテストの時とは仕様が違う。
そしてもう一つ予想外の事が起こった。
「な…なんでもう一体いるんだ……?」
誰かがそう呟いた。
そう、ボスの“イルファング・ザ・コボルドロード”がもう一体出現したのだ。
いや、実際には違う。“
イルファング・ザ・コボルドロード”は赤茶色の体毛であったが、先ほど出現した奴は真っ黒だった。
そして手にはベータテスト時に“イルファング・ザ・コボルドロード”が持ち返るはずだったタルワールが握られている。
そして奴のHPバーが現れ、その横にこう表記されていた。
“ゼノクロウ・ザ・コボルドロード”と。
自体は最悪だった。
“イルファング・ザ・コボルドロード”のHPバーが一本になった途端、突撃したディアベルは二体の獣によって叩き潰され吹き飛ばされてしまった。
「ディアベル!!」
俺は彼に駆け寄り回復ポーションを飲ませようとする。
が、ディアベルは俺の手を抑えた。
「何故1人で…」
「君もベータテスターなら…わかるだろ…」
俺はその言葉を聴き核心にいたった。
ラストアタックボーナス―ボスに止めを刺したものがもらえるレアアイテム―。
「…後は頼む、キリトさん。ボスを倒」
彼は最後の言葉を言い切ることなくガラスの破片のように消えていった。
そしてここからはまるで地獄のようだった。
指揮官を失ったチームはいともたやすく崩壊する。
リーダーの損失と情報とは違うボスの武器とスキル。
加えて新たに出てきたもう一体のボスモンスター。
これだけ揃えば計画が破綻し混乱は必須だ。
このままでは全滅する。
俺は瞬時に悟った。
ディアベルは俺に最後何と言った?
彼は俺に後を託した。
ボスを倒してくれと。
だったら、俺が起こすべき行動はただ一つ。
奴を倒して先に進む。
俺は走り出そうと体に力を込める。
するとすぐ左にアスナが立っているのを視界にとらえた。
「わたしも行く。パートナーだから」
「……解った。頼む」
俺は頷き、アスナと共にボスの方へ目を向ける。
相手は二体、正直な話勝てるかどうかは解らない。
だがやるしかない。
俺がこの世界を生き抜き元の世界に戻るためには。
「全員、出口方向に十歩下がれ!ボスを囲まなければ、範囲攻撃は来ない!!」
逃げ惑うプレイヤーに俺は喉が避けよとばかりに叫んだ。
プレイヤー達は俺の声に反応し、同時に二体のコボルド王も俺たち二人に正対する。
「勝つ確率はかなり低い。それでも行くか?」
「…言ったでしょ。わたしはあなたのパートナーよ」
アスナはそう言うと邪魔だと言わんばかりに着ていたフードを脱ぎ捨てた。
「行くぞ、手順はセンチネルと同じだ」
「解った!」
そう言葉を交わし、俺たちは走り出した。
俺たちはまず最初に赤いコボルド王を相手取った。
奴はスキルを発動させ俺たちに切りかかってくる。
俺は奴が来ると同時にスキルを発動させ、自分の剣と奴の剣を交差させお互いの剣技を相殺させる。
そのすきにアスナは細剣のスキル、<リニアー>を発動させ突進した。
剣は深々と奴の体に突き刺さりHPを僅かに減少させる。
だが、もう一体の黒いコボルド王が俺たちの隙を見逃さず突っ込んできた。
奴は右手に握ったタルワールを俺に対し振り切ってくる。
俺はそれを剣で受け流そうとするが、
「グ……ハッ…」
カタナに比べてタルワールは重く威力も高い。
なので俺は完全に威力を殺しきれずそのまま後方に吹き飛ばされてしまう。
アスナは黒いコボルド王が振り切った直後を狙い首すじめがけ刺突を繰り出す。
タルワールはカタナに比べて威力は大きいがスピードが遅い。
その隙をアスナは狙った。
アスナの突き出した剣は狙いどおり首筋に突き刺さりHPをわずかに減らした。
だがまだHPはほとんど削られていない。
俺が受け流しアスナが奴らの隙を突くそんなことを何度も繰り返していた。
だが、そこまでの集中力も長くは続かない。
しかも二体も相手取っては此方にも隙はできそこを突かれる。
十五、六回そんなことを繰り返した。
そして遂に途切れてしまった。
「しまっ…!!」
毒づき、俺は赤いコボルド王が繰り出そうとしているスキルを見る。
上下ランダムに発動する技<幻月>。
俺はそれを受け止めようとアニールブレードを引き戻そうとするが間に合わない。
奴のカタナが俺の体を真正面からとらえた。
HPゲージはそのまま一気に三割削り取られる。
俺が吹き飛ばされた時、アスナが赤いコボルド王に突っ込もうとした。
だが、それをもう一体が許すはずがない。
黒いコボルド王はアスナが突っ込もうとした瞬間、横からタルワールを振りおろしてきた。
それに気付いたアスナはガードしようと、レイピアをタルワールと体の間に引き戻す。
だが、タルワールの一撃はアスナからレイピアを奪い取った。
タルワールとぶつかりあったレイピアは威力を殺しきれずアスナの手から吹き飛ばされてしまった。
そしてアスナ自身もガードしたとはいえ、タルワールでの一撃。
ノーダメージとはいかなかった。
「く……あぁぁぁ…!」
アスナもレイピア同様後方へと吹き飛ばされる。
そして赤いコボルド王は俺にとどめを刺そうとカタナを振り上げスキルを発動させた。
黒いコボルド王もアスナに追い打ちをかけるようにアスナの居る方向へ突進する。
しかもアスナの手には今武器がない。
まさに絶体絶命。
カタナが俺の体を切り裂こうとしたその時、
「ぬ…おおおおおお!!」
太い雄たけびが聞こえ、両手斧がタルワールの一撃を防いだ。
両手斧系のスキル<ワールドウインド>。
それが奴のタルワールのスキルを相殺したのだった。
割って入ったのは褐色の大男エギル。
エギルは俺に笑いかけると、
「あんたがPOT飲み終えるまで、俺たちが支える。ダメージディーラーにいつまでも壁やられちゃ、立場ないからな」
「……すまん、頼む」
俺は短く答えると回復ポーションを口に流し込む。
ふとアスナの方に目をやると、黒いコボルド王を何人かのプレイヤー達が囲んでいた。
どうやらアスナの方も彼らに助けられたらしい。
俺はアスナと視線を合わし、そのまま後方で回復に専念する。
プレイヤー達が戦場に復帰してから少しずつだが戦況が変わってきた。
壁の奴らがコボルド王の攻撃を受け、俺たちが奴らに攻撃を与える。
そんなヒットアンドアウェイを繰り返し徐々にだがHPを削っていった。
だがそんな簡単に倒せるほど奴らも甘くはない。
赤いコボルド王は壁の奴らを飛び越え、スピードに物を云わせて切りかかってくる。黒いコボルド王も壁の連中が受け止めているのにも関わらずそれをいとも簡単に吹き飛ばす。
幸い今のところディアベル以外の犠牲者は出ていない。
だがそれもいつまで続くか。
とその時だった。
「ぐああああああ!!」
悲痛な叫び声が俺の耳に届く。
声の出所に顔を向けるとそこには黒いコボルド王を相手取っていた壁のプレイヤーがいた。
彼はタルワールの威力を殺しきれずに吹き飛ばされて地面に叩きつけられたのだ。
すると、黒いコボルド王は大きな雄たけびを上げタルワールを振り上げ、そして壁達に叩きつける。
当然彼らはガードする。が、
「「「うわぁぁぁぁぁ!!」」」
彼らは全員その一撃で吹き飛ばされてた。
明らかにベータの時とは威力が段違いに上がっている。
まさか武器ごと吹き飛ばされるとは。
それを皮きりに再び混乱が起こる。
黒いコボルド王が武器を振り上げればガードできないと悟ったプレイヤー達が一斉に回避に回る。
だがその隙を赤いコボルド王が突き、カタナでプレイヤー達に襲いかかる。
マズイ、これはかなりマズイ状況だ。
せっかく息を吹き返したのにこれではまたプレイヤー達は逃げ惑いそして挙句の果てに全滅するだろう。
それだけは防がなければならなかった。
そのためにはあのタルワールの威力をどうにかするしかない。
でもどうすればいい?
受けようとすれば吹き飛ばされ、回避してもそこにカタナが襲いかかる。
正直この状況は立て直しようがない。
他のプレイヤー達にもその考えが頭をよぎったのだろう。
次々とその場から逃げ出し始めた。
ふと頭にディアベルの最後がよぎる。
まるでガラスの破片のように崩れていく体。
人間の死に方ではなかった。
嫌だ、あんな死に方だけは嫌だ。
(負けてたまるか…!)
俺はアニールブレードを強く握りしめた。
「ううううううおおおおおおおおおおお!!!」
二体のコボルド王に突っ込んだ。
どうしようもない状況かもしれない。
けど俺は死にたくなかった。
このゲームをなんとしてでもクリアして生きて帰る。
そう思って俺はスキルを発動させ黒いコボルド王に切りかかる。
「グ…ガアアアアアアアア!!」
だが赤いコボルド王がすぐさま反応し俺をカタナで切りつけた。
俺はそのまま地面に叩きつけられる。
「はあああああああ!!」
アスナも俺と同じように二体の王に突進する。
俺を吹き飛ばした隙を突き赤い王に剣を突きたてた。
けれどその攻撃も無駄だと言わんばかりに赤い王はレイピアを防ぐとアスナにカタナを振り下ろす。
「ぬおおおおおお!!」
アスナを切り捨てようとしたカタナはエギルによって防がれた。
この隙にアスナは赤い王に切りかかり、俺も起き上がり同じく赤い王に切りかかる。
「グ……!」
「あぁぁぁぁ!」
けれど黒い王も俺たちの動きを読んでいたかのように赤い王に切りつけた剣をガードし、そして俺たちを吹き飛ばす。
俺たちは地面に叩きつけられ剣も手から離してしまった。
「がああああああ!!」
エギルの方も赤い王の一撃を喰らい、そのまま後方へと吹き飛ばされる。
そして赤い王と黒い王は俺とアスナの方へと向き直るとそのまま刃を俺たちに向けて突進してきた。
もう無理なのか…。
ふと、そんな考えが頭をよぎる。
このまま相手してもただ無意味に生きながらえているだけではないのか。
もういっそ諦めてしまおうか。
俺は頑張った。
そう、頑張ったんだ。
でも叶わなかった。
それでいいじゃないか。
“本当にもういいのかね?”
何やら妙な声が頭に響く。
“自分は頑張った。でも敵わない。もう戦わない。本当にそれでいいのかね?”
何を今更。もうどんなにやってもあの二体には勝てない。無理なんだ。
“君は無理だと解ったらすぐに諦める人間なのか?”
無理だと解って行動する人なんていないよ。
“…そうか、ならば君はあの男の言ったことを蔑ろにする気なんだな”
……!!
“あの男は最後に何といったのかな?”
……
“君はあの男の最後の頼みを破り捨てるというのだな”
……
“君にとってあの男の言葉はそんなに軽かったものなのか?”
………ああ……そうだったな
“…………”
俺は約束を果たさなくちゃ。
“……立ちあがるのか”
ああ…俺はディアベルの頼みを聞かなきゃならない。
ディアベルは俺に頼んだんだ。
勝ってくれって。
“それが勝ち目の無い戦いでもか?”
……ああ
“ふむ、なるほど。君は確かに一番目にはふさわしい”
なに?
“その心、その意気込み、実にいい。その在り方に私は敬意を称そう”
な…何が言いたいんだ?
“君にぴったりのサーヴァントがいる。受け取りたまえ。
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突然だった。
急に頭に妙な言葉が流れてきたと思ったら、次の瞬間俺の目の前につむじ風のような突風が起こりだした。
そしてそのつむじ風を中心にまばゆい光が辺りを照らしはじめる。
二体の王はその風と光に怯みその場から後方へ下がるように跳躍しようとする。
だが何かが二体の王を吹き飛ばした。
吹き飛ばした何かは目視できない。
ただ、風と光の間から人影のようなものが見えたような気がした。
風と光が収まり始めるといつの間にか地面に魔方陣のようなものが存在している。
そして魔方陣の中心、そこに“彼女”はいた。
蒼いドレスのような衣服を身にまとい、その上から銀の甲冑を身につけている。
その甲冑は俺たちが身につけているものとは明らかに質が違う。
その姿もそうだが、明らかに俺たちとは違う何かであるということも俺は一瞬で理解した。
彼女の周りからにじみ出るようなオーラ。
そして圧倒的な存在感。
明らかに桁が違うのだ。
彼女は二体の王を一瞥すると俺の方に向き直りこう問いかけた。
「問おう、あなたが私のマスターか」
後書き
はい。ごめんなさい。都合上ボスを二体にさせていただきました。
ちなみにキリト君があのサーヴァントです。
次回彼女が活躍します。
3月24日、加筆修正しました。
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