おぢばにおかえり
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94部分:第十三話 詰所へその八
第十三話 詰所へその八
「昔からずっと小さく」
「まあそれも気にしないでね。それに」
「それに?」
「やっぱりお腹空かない?」
先輩の顔がまた苦笑いになります。
「部活の後だし歩いていたら」
「そうですね。そういえば」
私もです。天理高校の吹奏楽部って凄いハードですから。
「何か私も」
「じゃあ決まりね。詰所に着いたらね」
「はい」
「私のお父さんとお母さんがいるから」
「先輩のですか」
そういえば高井先輩はお母さん似だって聞いていますけれど。何かそれを考えるとすっごい美人母娘なんですね。お父さんは羨ましがられているんじゃないでしょうか。
「そうよ。だから何か御馳走してもらいましょう」
「何かそれって」
けれどそれはやっぱり。
「悪いですよ」
「いいのよ」
その奇麗なお顔で微笑まれると。男の子だったら間違いなくノックアウトだと思います。
「そういうのは気にしないで」
「そうなんですか」
「だって折角だし」
こうも仰います。
「ここまでついて来てくれたじゃない」
「それはその」
「詰所にお菓子もあるし」
お菓子がですか。それを聞くとそれだけで。
「うう・・・・・・」
「ちっち甘いもの大好きよね」
「それはまあ」
嘘はつけません。特に甘いものの前だと。
「だったら無理しないの。私だってそうなんだし」
「ですか」
「さっ、見えてきたわよ」
ここで前の右手に見えてきました。それが先輩の大教会の詰所です。
「何があるかしらね。多分」
「多分?」
「黍団子は絶対にあるわ」
岡山だとどうしてもこれになるみたいです。そういえば岡山っていえば桃太郎だけじゃなくてあの星野仙一さんの出身地でもあるんですよね。
「あとは何かしら」
「桃でしょうか」
「またそれ?」
先輩に思わず苦笑いされてしまいました。
「ちっちも好きね」
「違いますか?」
「確かに桃はよく食べるわ。マスカットもね」
「はい」
やっぱり食べることは食べるみたいです。
「けれどね。それだけじゃないから」
「他のもですよね。やっぱり」
「神戸でも明石焼きばかり食べないでしょ」
「ええ、まあ」
確かに。しかも私実家は長田ですし。
「そういうことよ。お菓子なら」
「お菓子なら?」
「チョコレート菓子があるかしあ」
「チョコレート、ですか」
自分の目が動くのがわかりました。実はチョコレートも大好きなんです。何か好きなお菓子や果物が本当に多いと自分でも思いますけれど。
「ちっちってチョコレートも好きなの」
「えっ、それはその」
「隠さなくてもいいわよ」
笑顔で言われました。
「甘いのが好きだっていうのはもう知ってるし
「すいません」
「謝る必要はないし。それにね」
「それに?」
「女の子は皆甘いものが好きなのよ」
確かに。そういえば寮でも甘いものを嫌いな人っていません。学校でもお菓子食べたりしていますし。それで口の悪い男の子にそんなことしていたらフカキョンみたいになるぞって言われた娘もいます。あの人は奇麗ですけれど確かにちょっと肉感的な気もしないではありません。
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