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【完結】猫娘と化した緑谷出久

作者:炎の剣製
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猫娘と雄英体育祭編
  NO.025 フォウという猫の恩返し

 
前書き
更新します。 

 


一回戦を終えて出久はオールマイトに連れられながら医務室へと訪れていた。
リカバリーガールにステージを陥没させたときの拳の傷つき具合を見てもらっていたのだが、

「うん……これといって激しい損傷はないさね。綺麗な手だよ」
「ほっ……ありがとうございます」
「それよりあんな力任せに力を振るったのに腕に何も損傷がないのが気になるねー。あんたはどう思う? オールマイト?」
「そうですね」

リカバリーガールにそう聞かれて答える今のオールマイトの姿はトゥルーフォームである。出久もいるのに。
これに関してはリカバリーガールが他の生徒達と違って出久達の関係を知っている為に隠していない節もあるのだが、出久もこれに関してはもう知られているという感じで黙って聞いていた。

「ところで緑谷ガール。あの洗脳をどう掻い潜ったんだい? 私でも嵌れば容易ではないものだが……」
「はい。その……幻覚が見えたんです」
「幻覚……?」
「はい。僕の目の前に八人か九人くらいの影と、それと一匹の猫の姿……影の人達はなにも話しかけてこなかったんですけど目で言っていました。『こんなところで諦めるな……』と。
それと一匹の猫の方がこう言っていました。
『イズク……諦めちゃダメだよ。君は私のヒーローなんだから……だからこんな洗脳なんかに負けないで!』って……」

出久は二人にその内容を伝えると、オールマイトはうーん……と悩んでいた。

「そうか。私にも以前にそう言う経験はあったよ。おそらくワン・フォー・オールに宿っている先代の残留思念か何かだと私は思うな」
「残留思念……」

それで出久は拳を握りしめる。
それだったら先代の方々に感謝をしないといけないな、と……。

「それと猫の方はどうしても私では見当がつかないな。リカバリーガールは……?」
「そうだねぇ……。そろそろ緑谷には話しておいてもいいかもしれないかもね」

意味深の言葉を吐くリカバリーガールに出久はなにかを知っているのか知りたくなったので、

「お願いします、教えてください」
「わかったよ。その前に緑谷は5年前に自分で遭遇した事件は覚えているかい……?」

そう聞かれて出久はそこで初めて悔しそうな表情をする。
手で顔を覆いながら、

「忘れもしません……動物を私欲を満たすために殺していたヴィランからとある猫を守ろうとして死ぬかもしれない重傷を負った事は……」
「緑谷ガール。そんな事があったのかい……?」
「はい、オールマイト。なんとか僕自身の命は助かったんですけど僕が守ろうとした猫は死んでしまって、僕は一晩中泣き続けました……」
「そうか……」

小さい生命とはいえ命に変わりはない。
そんな死に遭遇してしまった出久にオールマイトは自身の過去も思い出そうとしている時だった。

「…………緑谷。一つ訂正を入れていいかい?」
「はい? どこを訂正ですか……?」
「私はあの時に緑谷を治療したものだよ」
「ええ!?」

出久は知らなかったために盛大に大声を上げていた。
まさか命の恩人がリカバリーガールだったなんてという思いだった。

「私はね、あの時必死にお前を助けようと努力はしたよ。でも、緑谷の傷はもう私の個性じゃ治せない程にズタズタだった。個性を使って回復させようにもその体力が緑谷にはほぼ残されていなかったからもうどうしようもなかった……。
お前の母親には申し訳ないけど『今夜が峠だよ』と言ってしまったほどだからね……」

リカバリーガールはそれですまなそうに俯く。

「でも! それじゃどうして僕は今もこうして元気でいられるんですか!? 後遺症が残っていてもおかしくはないのに……」
「まだ続きがあるけどいいかい?」
「あ、はい……」

そう言って出久は椅子に座り直した。
リカバリーガールは過去を思い出すかのように空を見上げながら話す。

「ホントはね……緑谷が助けた猫はほとんど傷もなく健康体だったんだよ」
「えっ……」
「だけど緑谷がもう死ぬ寸前かのように息絶えだえだった病室を一回私は見に行ったんだよ。そこで不思議な光景を目にした」

リカバリーガールは話す。
出久の身体の上で猫は涙を流しながらもしばらくして自身の身体からまるで魂が抜けだすかのように白いオーラが出てきて出久の身体にスゥーッと入っていったのだと。
すると奇跡でも起きたのか包帯があちこちに巻かれて痛々しい姿だった出久の身体の傷がどんどんと塞がっていったのだ。
2、3分もしないうちに出久の身体は治って呼吸も正常に戻っていた。
リカバリーガールは慌てて出久の傍らにいる猫を抱きかかえてみたが、もうすでに猫の身体は死んでしまったために冷えてしまっていた……。

『お前さんは……いったい』

猫に問いかけるがもう答えるものなどいないという事実にリカバリーガールは静かに涙を流した。
その猫の遺体はその後に厳重に火葬をして埋葬したと話す。

「それが緑谷が健康体でいる正体だよ。その猫の個性だったのかもしれないけど今ではもう確かめようがないね。でも、今こうして緑谷は個性が出てそんな姿になった。だからもしかしたらその猫は今も緑谷の中で生きているのかもしれないね」
「なるほど……それで緑谷少年は緑谷ガールになったのですね。その猫の正体がまだわかりませんが、おそらく何かしらの特別な個性を身に宿していたために緑谷ガールに持っていた個性を譲り渡していたと……まるで私と同じ、だな……」

そう考察するオールマイト。
だがその話している内容は出久にはほとんど聞こえていなかった。
ただただ自分のために命を捨てた猫。
出久が付けた名前は『フォウ』。
彼女は今も出久の中で生き続けている……。その事実が出久にはとても嬉しかった。
それで涙を流し続けていた。








「リカバリーガール……教えてくれてありがとうございます。フォウが今も僕の中にいるのかは分かりませんがもし今度話しかけてきた時は聞いてみたいと思います」
「そうかい。そりゃよかったよ」
「それと影の中にオールマイトの様な人もいました。……それで僕は思いました。今の僕にはオールマイトだけでなくフォウの意思も宿っているんだから無様な結果は残したくないって……だからこの後の戦いも全力で挑みます!」
「頑張りなさい」
「はい!」

それで出久はみんなが待っていると言って観客席の方へと走っていった。
それを見送った二人は静かに、

「あんたもいたってさ……」
「いい事だと思います……」

出久のこれからの成長にまた一つ大きな望みを抱いたオールマイトだった。


 
 

 
後書き
まだフォウがなんなのかという疑問は当分は話しませんが伏線の一つとして受け取ってください。
次回は各一回戦のダイジェストでも入れて、轟戦に入りたいと思います。

いやー、まだまだ大まかですがオールマイト引退までの話繋ぎはなんとなく頭の中だけですが構想はできているので早く文字に書き起こしたいですね。 
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