【完結】猫娘と化した緑谷出久
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猫娘と雄英体育祭編
NO.024 心操戦。苦しい戦い
前書き
更新します。
出久はレクリエーションの時間の間に尾白と部屋で騎馬戦の時の話を聞いていた。……チア姿のままで。
それに尾白は多少顔を赤くさせながらも話す。
「緑谷。とにかくあの心操という奴の声には耳を傾けるな」
「傾けるな……? 騎馬戦の時になにかあったの?」
「ああ。さっきも言ったけど騎馬戦が始まった時にあいつの声を聞いて返事をした以降、もう記憶がほぼないんだ。ここからさっするにあいつの個性は……」
「洗脳の類……かな?」
「多分そのまんまの個性だと思う」
洗脳と言っても多岐にわたる。
だがそのまんまの洗脳なら対策はもう決まっている。
「つまり心操君がなにかを言ってきても無視を決め込んでいけばいいんだね?」
「そうだ。緑谷なら余裕で可能だろ? そして速攻で仕掛けて場外にでもしてしまえばいい」
「そうだね。ただ、心操君はきっと僕になにかしらの揺さぶりをかけてくると思う。そこをどう凌ぐかで対処は変わってくるかな……?」
「そうだな。とにかく頑張れよ緑谷」
「うん!」
「ッ……!」
笑顔を浮かべながら答える出久の表情に尾白は速攻で心を奪われそうになったがなんとか耐えた。
もっとチア服が際どかったら危なかっただろうと後に尾白は語る。
それから時間は経過してセメントスによる闘技場作成もほぼ完了し、ようやく試合が始められる。
『セメントスサンキュー! そんじゃそろそろ始まるぜ! やっぱり最後はガチンコ勝負っしょ! 己の力を信じて最後まで戦い抜けよ!!』
プレゼント・マイクの叫びが聞こえてくる中で出久は会場に入る前の通路で呼吸を整えていた。
そこに背後からオールマイトがやってきた。
「緑谷ガール……ここまでこれて私としても嬉しい限りだよ」
「オールマイト……」
「だからな。ここまで来たんだ。最後まで駆け抜けてみろよ! 君なら十分やっていけるぜ!」
「はい! 頑張ります!」
オールマイトに見送られながらも出久は会場の中に入っていった。
『それじゃ一回戦を始めるぜ! まずは障害物競争や騎馬戦で優秀な成績を収めた多分1-Aの人気者、ヒーロー科、緑谷出久!』
それで会場内のヒーロー達も、
「待ってました!」「出久ちゃん、頑張って!」「応援してるぞ!」
と次々と声をかけられていって少し……いやかなり恥ずかしい気持ちになっている出久。
『VS 対していまのところ目立った活躍はしていない能力は未知数の男子! 普通科、心操人使!』
プレゼント・マイクがこの戦いでのルールを説明している中で出久と心操がそれぞれで向かい合う。
まだ試合開始のコールは言われていないがすでに心操は出久に話を振ってきていた。
「なぁ緑谷……もうここからは心の勝負なんだよ。将来の為には形振り構っていちゃいられない。だから女だろうと攻めていくぜ」
「………」
出久はそれを無言でなんとかやり過ごす。
「そういえばさっきの辞退した尻尾の奴だが、プライドがどうとか言っていたが、チャンスをドブに捨てるなんてどうかしているとは思わないか?」
「……ッ!…………ッ!!」
出久は必死に口を押さえて耐える。
その反応にさすがの心操も対策がされていると気づいた。
だから出久に対してのあまりしたくはないが悪手を使わせてもらうことにした。
「…………ところで、性転換したっていうが、男子から女子になった気分はどうだった……? さぞ自分がだんだんと女になっていくなんて怖気が走るだろう……?」
「ッ!! そんな事はない!! 僕はそれでも僕―――……」
出久はそこまでで動きが止まってしまった。
「これで、終わりだな……わりぃな。お前の弱みを突かせてもらった」
『おおっと!? 最初の戦いでいきなり緑谷、完全停止!? これはどういうこった!?』
今の出久には周りの声が頭に靄がかかったかのように聞こえてこない。
そこに心操の声が聞こえてきて、
「そのまま振り向いて場外まで出て行ってくれ……」
「…………」
出久はそれで振り返ろうとして、だがそこで出久の動きがまた止まる。
その反応にさすがに心操も焦ったのか、もう一度同じセリフを言うが出久の身体は命令に逆らっているかのようにプルプルと震えている。
「バカなっ!? 俺の洗脳に耐えているだと!?」
心操は出久の精神力の強さにひどく驚いていた。
そして今の出久の頭の中では謎の人達の影と、それにとある猫の姿が映し出されていた。
謎の人達は何も語らないが何も言わなくても目が語っていた。
『こんなところで諦めていいはずがないだろう』と……。
さらには猫の方がこう言ってきた。
『イズク……諦めちゃダメだよ。君は私のヒーローなんだから……だからこんな洗脳なんかに負けないで!』
その一言に、出久の精神は急速に靄が晴れるように開けた。
そして出久はワン・フォー・オールを起動して腕を思いっきり地面に叩きつけた。
出久の拳で盛大に陥没するステージ。空へと巻き起こる嵐……。
そんな光景に会場の全員は驚いた。
まるでオールマイトのような、そんな錯覚を覚える。
ジンジンと叩きつけた拳が痛む感覚を味わいながらも出久は意識を取り戻して心操の方へとゆっくりと向き直る。
「く、羨ましいな! たとえ一年しか鍛える期間がなかったとはいえそこまでの威力を発揮できるなんてな!」
「…………!」
出久は答えない。
ただひたすら高速移動をして心操の服を掴んでそのまま身体強化・怪力でステージ場外まで投げ飛ばした。
心操は抗える術などなくそのまま場外まで落ちて尻餅をついていた。
「心操君、場外! これによって緑谷さんの二回戦進出!」
『意外と地味だったけどこれにて終了だ!!』
そして再度二人は向かい合って、
「…………まぁ、お前の気にする事を言って悪かったな」
「いいよ……苦しかったのは本当の事だったから。それより心操君はどうしてヒーローに……?」
「なりたいと思ったんだから仕方がないだろう……」
それを聞いて、もし個性が目覚めていなかったら出久にも何か言えたのだろうけど、今では彼に話しかける言葉は少ない。
だが、それは代わりに同じ普通科のクラスの生徒達が彼の事を褒めていた。
『お前は普通科の星だよ』と……。
それだけで心操は少しだけでも嬉しい気持ちになった。
ヒーロー達も心操の個性は対ヴィランに使えると言っていたので、見てもらえている事がなによりも将来の役に立つことになる。
「確かにヴィランみたいな能力だろうよ。それでも俺はヒーローとして駆け上がってやる。いつか絶対にヒーロー科に上り詰めてお前らより立派なヒーローになってやる……それまで足元掬われないように注意しておけよ? 入試主席さん?」
それだけ言い終わって心操は会場から出て行った。
出久はただただ苦しい戦いだったと思った。
通路に戻るとそこにはまたオールマイトが立っていた。
「オールマイト……僕、僕……」
「いいんだ緑谷ガール。苦しかっただろう…………だがこれも糧に君はまた成長できる。まずは勝利を喜ぼう」
「はい……」
「それから少し拳をリカバリーガールに見てもらおうか。きっとフルカウル制御時以上の力を出していたと思うからね」
「わかりました」
こうして出久にとって苦しい第一回戦は終了した。
それとさっそくステージが壊れたので修復作業で少し時間を使うとの事であった。
後書き
少しだけ違う感じで書いてみました。
どのみち地味な戦いですから描写も控えめですかね。
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