転生とらぶる
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ペルソナ3
2016話
「あー……その、すいません。追い出すような真似をして」
病室の扉が開き、順平が顔を出してそう謝ってくる。
その表情は、若干顔色が青くなっているような気がした。
……まぁ、分からないでもない。何だかんだと病室で2人にしてから、既に1時間以上が経っている。
晩夏と呼ぶべき9月ではあるが、既に外は暗くなってすらいるのだ。
そう考えれば、順平がこうして顔を青くしている理由も理解出来るだろう。
「ま、恋人……かどうかは分からないけど、制御剤の副作用が治ったんだ。それくらいはいいんじゃないか?」
そう言いながら、俺はポートアイランド駅の近くにあるパン屋で以前買ったサンドイッチの包み紙を少し離れた場所にあったゴミ箱に投げる。
ちなみに他の面々も、軽くではあるが俺が空間倉庫から出したパンの類を食べている。
まぁ、この時間になれば多少なりとも腹が減って当然だよな。
「あ……あははは……」
俺の言葉に、冷や汗を流す順平。
もっとも、実際には本当に副作用が完全に治っているかどうかはきちんと検査をしないと分からないだろうが。
「まぁ、気にするな。それで、あの少女……チドリとか言ったな。彼女と話す事は出来るのか?」
「あ、はい。大丈夫です」
美鶴の言葉に、順平は即座にそう答える。
取りあえず順平と同様にチドリも落ち着いたらしい。
さて、どんな情報を手に入れられるんだろうな。
そう思いながら、俺は病室の中に入る。
だが……俺達が病室の中に入ったというのに、チドリは全く何の反応も示さない。
ただ、病室の窓から外を見ているだけだ。
何だ? こっちに視線を向けてくるくらいの事は、してもいいと思うんだが。
「チドリ」
「何?」
順平の言葉で、ようやくチドリはこちらに視線を向けてくる。……いや、違うな。こちらにじゃなくて順平に、というのがこの場合は正しい。
チドリの様子を見れば、今のその視界に順平以外の者が入っていない事は簡単に理解出来る。
なるほどな。こうして見た限りでは、チドリというのはかなり個性的な性格をしているらしい。
「桐条先輩達が、チドリに話を聞きたいって言ってるんだけど……構わないか?」
「……」
順平の言葉に、チドリは特に何を言うでもなく再び視線を窓の方に向ける。
それは、順平ならともかく俺達と話す事は何もないと、そう態度で示しているのかのようだ。
さて、簡単にどうにかなるとは思っていなかったが、それでもこれはちょっと予想外だったな。
どうやって情報を得たものやら……
そう考え、何か手掛かりでも病室の中を見回すと、不意に美鶴と視線が混じる。
美鶴もまた、どうしたものかといった風に困っていて、それで俺の方を見てきたのだろう。
どうする? とお互いに視線を向けるも、結局はお互いに順平に話を任せるしかないという結論に達する。
勿論、本当にどうしようもなければ、色々と手段はあるだろう。
だが……それはあくまでも本当にどうしようもなければ、の話だ。
今の状況を考える限り、やはりここは順平に任せておく方がいいだろう。
もし何らかの手段を取るにしても、その場合は本当にどうしようもなくなってからの話だ。
そうでなければ、順平も納得しないだろうし。
「伊織、君が色々と聞いてくれ。どうやら、彼女は君の言葉しか耳に入らないらしい」
「え? 俺が? ……分かりました」
美鶴の言葉に少し驚いた様子を見せた順平だったが、それでも結局はすぐに頷きを返す。
ここで自分が聞かなければ、俺達が何か別の手段に出ると……そう理解したのだろう。
実際、その判断は間違っているという訳でもなかったのだが。
「な、なぁ、チドリ。その……チドリの仲間の事を話してくれないか?」
「……タカヤとジン?」
おお、見事に美鶴の策――そこまで大袈裟なものではないが――は当たったな。
言葉少なに順平に返事をしたチドリだったが、その言葉だけでも重要な情報が隠されている。
つまり、チドリの仲間……ストレガというのは、恐らくチドリを含めても3人だけの集団なのだろう。
もしかしたらもう少し仲間がいる可能性もあるが、ここまで接してきたチドリの性格から、こういう場所で嘘を吐くような真似をするとは思えない。
そうなると、やはりストレガは3人だけの集団となる。
今はそれに幾月が加わっている可能性か。
だが……今の幾月に何かが出来るかと言われれば、それもまた微妙なところだ。
幾月は今まで色々と企てていたようだが、それが出来たのは幾月の能力……もあるが、それ以上に桐条グループの研究者のトップという立場が大きい。
今の幾月は、その桐条グループから抜けているのだから、以前のように色々と企むなどという真似が出来るとは思えない。
ましてや、幾月は影時間の適性こそあるものの、結局はそれだけだ。
直接的な攻撃力としては非常に有効な、ペルソナ能力を持たない。
取りあえず、この一言だけでもチドリを助けた甲斐はあったな。……イクシールの料金を考えると、まだ到底足りないが。
「えっと……その、タカヤだっけ? あいつは何を企んでるんだ?」
「さぁ?」
順平の言葉に、何を考えるでもなくそう告げるチドリ。
これは……誤魔化してるのか? いや、けど今のチドリを見ている限り、特に何かを誤魔化しているようには思えない。
そうなると、もしかして本当に何も知らない?
その可能性は十分にあるのだが、それでもすぐには信じられない。
「えっと、その……だな。何か分かる事はないか? 少しだけでもいいんだ。な? 頼む」
必死な様子でチドリに聞く順平。
まぁ、順平にしてみれば、ここで少しでもチドリから情報を聞き出して、これからの待遇を良くしたいと、そう思っているのだろう。
実際、ここでチドリがこちらに協力的かどうかというのは、この後の対応に大きく関係してくるのは間違いない。
「……そうね。滅びの塔がどうとか言ってたけど」
「滅びの塔?」
そう呟いたのは、順平……ではなく、美鶴だ。
滅びの塔という言葉が、何を意味しているのか。それを予想するのはそう難しい話ではない。
実際、俺ですらすぐにその答えに思い当たったのだから。
「タルタロスね」
「だろうな」
ゆかりと荒垣も俺と同様に答えに行き着いたのか、短くそう言葉を交わす。
そう、この辺りで塔と呼ぶのが相応しい建物と言えば、やはり真っ先にタルタロスが思い浮かぶだろう。
勿論ビルとかそういうのも、見ようによっては塔に見えない事はないのだが……
だが、それでもこの近辺で……それも影時間やペルソナに関わっている人物で滅びの塔と表現するのであれば、それは間違いなくタルタロスに関係しているのだろう。
寧ろ、タルタロス以外に、なにを滅びの塔と考えろと言いたくなるくらいだ。
「つまり、タカヤと幾月はタルタロスに何かする……って事か?」
その割には、タルタロスでは最近見ないけど。
当然のように、影時間になれば何度となく俺はタルタロスに挑戦している。
ゆかりやコロマルと一緒に挑戦する事もあれば、俺だけで挑戦する事もある。
……まぁ、俺だけで挑戦する時は、スライムを使って一気にシャドウを倒して宝箱を回収してくるんだが。
たまに刈り取る者を召喚して、好きに暴れさせたりもするが……普通のシャドウ程度で、刈り取る者……それも、俺の血を飲んで強化された刈り取る者に敵う筈もない。
結果として、まさに蹂躙劇と呼ぶに相応しい光景になることも珍しくはなかった。
「他には……何かないか?」
「あのおじさんが、最後の切り札があるって言ってた」
おじさん……それは、間違いなく幾月の事だろう。
だが、切り札? 桐条グループのバックアップを受けて研究していた幾月ならともかく、桐条グループに追われている今の幾月に、一体何が出来る?
実は幾月にペルソナ能力が覚醒していたとか?
いや、それはちょっと考えにくい。
幾ら何でも、桐条グループがそこまで間抜けだとは思いたくない。
「切り札? それは一体何だ?」
美鶴がチドリに尋ねるが、相変わらずチドリは美鶴の言葉には反応する様子を見せない。
徹底的なまでに無視をしているこの様子は、いっそ清々しいとすら思える。
傍から見ているからそう感じるのであって、実際にそういう態度を取られれば腹が立つのは間違いないだろうが。
「……伊織」
美鶴にそう促される順平だったが、美鶴が苛立っているのは明らかだ。
それこそ、寮に戻ってから処刑も覚悟しなければならない程に。
順平が処刑を免れるには、何とかしてチドリから情報を聞き出す必要があった。
もっとも、その情報を聞き出すという行為そのものが難しいんだろうが。
「その、チドリ。理事長……いや、幾月が言っていた切り札って?」
理事長と言い、それからすぐに幾月と言い直す。
順平の中で、幾月を明確な敵だと認識し始めた証拠だろう。
まぁ、今更だって話だが。
ただ、順平の場合は寮でずっと一緒だった事もあるし、どうしてもそこまで敵対心を持つ事は出来ないのだろう。……出来なかった、と言うべきか?
ともあれ、そんな感じな訳だ。
「分からない。秘密だって言って、タカヤにも教えてなかったみたいだし」
「……まぁ、そうだろうな」
チドリの言葉にそう同意すると、チドリは珍しく……本当に珍しく、俺の方に視線を向けてきた。
だが、それでも俺の方に視線を向けたのは一瞬で、すぐにまた順平の方に視線を向けた。
「幾月は、タカヤと手を組んではいるが、本当の意味で仲間になった訳ではない、そういう事か?」
美鶴の言葉に、頷きを返す。
「そうだな。幾月がタカヤと手を組んだのは、それ以外に手がなかったからだ。幾月も桐条グループの内部監査によって、追い詰められていたしな。そうである以上、手を組める相手は限られている。……いや、1つしか残っていなかったと言うべきか」
一応俺達はS.E.E.Sとは別勢力という扱いになってはいるが、それでも実際には美鶴達と行動を共にする事も多い。
影時間を解決するという意味では、俺と美鶴の利害は完全に一致していたのだから。
タカヤ達は、影時間の解決をしないようにと主張していたので、幾月が頼る事が出来るのは、自然とタカヤ達だけだったのだろう。
「だが……そうなると、切り札というのが気になるな。何だ?」
「さて、それこそ俺に聞かれても分かる訳がないだろう?」
「……桐条先輩、桐条グループの人が理事長の部屋の物は粗方持っていったんですよね? なら、PCとかの中にそれらしいものとかはなかったんですか?」
俺と美鶴の言葉にゆかりがそう尋ねてくるが、美鶴は難しそうな表情で顔を横に振る。
「いや、その辺りは色々と調べられているが、何か怪しいところがあったらすぐに連絡が入る筈だ。それがない以上、恐らくは何も詳しい情報は入ってなかったのだろう。……勿論、今回の件で幾月が何か隠し持っている可能性が高いというのが判明した以上、こちらも相応の手を打つ。改めて幾月から押収した物を調べさせ、何か手掛かりになるようなものがないか探させよう」
美鶴がそう言うと、ゆかりも納得したのかそれ以上は何も言わない。
そんなやり取りを聞きながら幾月の奥の手が何なのかを考えるものの、そこで思いつくものはない。
……実は俺達が知らないペルソナ能力者を隠していた?
その可能性はないでもないが、そもそも、そういう人物がいるのであれば、わざわざタカヤに合流したりといった真似はしないだろう。
もしくは……タカヤを相手に主導権を握るためのブラフ?
何となくそっちの可能性の方が高そうな気がするが、そこには何の証拠もない。
そうなると、やっぱり幾月の行動を警戒しなければならないのは間違いない、か。
厄介な。なまじ研究者として有能なだけに、こっちとしても何らかの手段を用意していると警戒する必要がある。
これが、その辺の何の実績もないような相手であれば、それこそ特に警戒の類もしなくていいんだが。
「ともあれ、幾月が何かを隠している可能性があると知る事が出来ただけでも、情報はありがたい。……チドリ、情報提供感謝する」
「別に……貴方の為じゃないわ。順平の為だもの」
美鶴の言葉に、チドリはそっと視線を逸らしながらも、そう告げる。
今まではどう話しても無視しかしなかった事を考えると、何気にチドリとの仲は進展したんじゃないだろうか。
……恐らく、本当に恐らくだが、最初に順平と一緒に部屋にいさせた事が功を奏した結果だろう。
そう考えると、チドリとの関係としては最善の結果となったのは間違いない。
それがこれからどう影響するのか……特に、情報という一点では、最大の手掛かりになるのは間違いなかった。
後書き
アクセル・アルマー
LV:43
PP:1435
格闘:305
射撃:325
技量:315
防御:315
回避:345
命中:365
SP:1415
エースボーナス:SPブースト(SPを消費してスライムの性能をアップする)
成長タイプ:万能・特殊
空:S
陸:S
海:S
宇:S
精神:加速 消費SP4
努力 消費SP8
集中 消費SP16
直撃 消費SP30
覚醒 消費SP32
愛 消費SP48
スキル:EXPアップ
SPブースト(SPアップLv.9&SP回復&集中力)
念動力 LV.10
アタッカー
ガンファイト LV.9
インファイト LV.9
気力限界突破
魔法(炎)
魔法(影)
魔法(召喚)
闇の魔法
混沌精霊
鬼眼
気配遮断A+
撃墜数:1389
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