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おぢばにおかえり

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51部分:第八話 はじまってからその七


第八話 はじまってからその七

「それだと」
「そう言われたこともあります」
 それも昔からです。小学校高学年の頃から。
「けれど」
「あえてそれをしてみているのね」
「そうです。一応牛乳も飲んでいますけれど」
「それで効果はどう?」
「どうでしょうか」
 その問いには首を捻るしかありませんでした。
「そこの辺りは」
「わからないのね」
「はい、今のところ効果はないです」
 悲しいことに。背も胸ももっと欲しいのに。
「どうしましょう」
「そのまま続けてみたら?」
 先輩のアドバイスはこうでした。
「それでも」
「続けるんですね」
「豆乳も牛乳も身体にいいしね」
 それもそうです。少なくとも最近全然身体の調子が悪いってことはありません。
「やってみたらいいわ」
「わかりました。それじゃあ」
「それにしても。あれね」
 ここで先輩は私をちらりと見て言ってきました。
「背の高いちっちってちょっと想像できないけれど」
「これでも子供の頃は普通より大きかったんですよ」
「そうだったの」
「はい。それが」
 成長が止まっちゃったんです。それで今は。
「こんなふうに。何でなんでしょう」
「ひょっとしてお母さん小さいのかしら」
「はい」
 お母さんの家系は皆小さいです。本当に。
「女の人は皆」
「それよ、だからよ」
 遺伝だって言われました。
「遺伝だからそれは」
「仕方ないでしょうか、これって」
「何でかわからないけれどうちの高校も小さい娘多いわよね」
「そうですね」
 これはずっと前から思っていました。それだけじゃなくてそもそもおぢばにいる女の人全員がそうです。何でかわかりませんが小さい人が多いんです。
「私もそうだし」
「先輩もですか?」
「大きく見えるのかしら」
「はい」
 私にはそうとしか見えません。
「先輩背もあるし。だから余計に」
「私だって小さい方よ」
 けれど御本人はそう仰います。
「実際のところはね」
「そうなんですか」
「わからないのもまあ仕方ないけれど」
「はあ」
「女の子同士じゃ結構わからないかもね。私も小柄なのよ」
「ですか」
「やっぱり私も背が伸びなかったの」
 神殿の南門のところで一礼して。そのまま神殿に向かいながら話を続けます。
「結局はね」
「中学からですか?」
「そうね、その辺りから」
 先輩もそうらしいです。
「伸びないのよね、どうしても」
「ですよね、どうしても」
 これは私もですから本当によくわかります。けれど。
「それでも先輩は」
 ちらりと先輩の胸をここで見ました。
「胸も」
「大きいって?」
「はい。大きいじゃないですか」
「別にそうは思わないけれど」
 こういうのって自分では気付きませんよね、本当に。
「そうかしら」
「そうですよ、大きいです」
 奇麗でスタイルもよくて。私なんかと全然違います。
「それだけで男の子寄ってきません?」
「甘いわね、ちっち」
 神殿に入る前に一礼してから私に言ってきました。勿論私も一礼しました。
「男の子もそう簡単じゃないのよ」
「そうなんですか!?」
 胸が大きいのがいいんじゃないんですか。それはかなり意外でした。やっぱり胸が大きい方がいいに決まっていると思っていたんですけれど。
 
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