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ソードアート・オンライン~剣と槍のファンタジア~

作者:白泉
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ソードアート・オンライン~剣の世界~
2章 生き様
  15話 単独行動其の二~リア編~

 
前書き
 どうも、白泉です!そして、まず謝らなければ…!2か月近く、放置していてすみませんでした、ほんとに!前回は一か月休むだけで更新停止~なんて言っていたのに…‼‼

 つぶやきに詳しい謝罪と、そして!新たな新連載が始まったことをご存知ですか!?まだ見ていないという方は、ぜひつぶやきをご覧ください!


 なんてことはさておき、さてさて、いよいよ今回はリア編!前回はツカサがバリバリと活躍してもらいましたからね。今度はリアがバリバリ活躍します!ツカサは割合安定なのですが、賛否両論あるリア。正直に言うと、なかなかにこのキャラをうまく描くのは難しいです。なんといいますか、リアの魅力に僕の文才がついて行っていないということを改めて痛感しましたね。まだまだ未熟な僕の小説ですが、あんまり、リアが苦手…という方も、ただ単に、白泉に文才が足りていないだけで、本当はもっと魅力的な人なんだ!と思ってくださるとうれしいですねw

 あ、それと、やっとリアが今回の回で人間だということが証明?されます!ww今までちょっと完璧すぎたので。これで、もう少し親しみがわくといいなぁと思います。


 では、どうぞ! 

 
「はぁ…はぁ…」

 
 リアは右手にある愛剣、ジェノサイド・テンペストを杖代わりにして、かろうじて立っている状態だった。






 ツカサと別れてものの10分ほど。モンスターとの戦闘はまだ一度もないのに、リアの息は、まるで100m走を全力疾走したかのようだ。


 やがて、その足の力もなくなり、手からテンペストが鈍い音を立てて床に転がって、リアも床にへたり込んでしまう。荒い呼吸を繰り返しながら、リアは思わず苦笑して漏らした。


「たった10分でこんなだなんて、あれから少しも成長してないな…」




 あれから。自分はいったい何をしてきただろうか。道を踏み間違えた“憧れの人”でもあり、ほぼ“兄”のような人に歯も立たなかった。自分の弱さを痛いほど実感した。


 だから、こうして荒療治をしているわけだが…まったくと言っていいほど何も変わっていない。




 とにかく、ツカサが隣にいないというこの状況が、怖くて怖くてしょうがなかった。胸の奥からせりあがってくるような恐怖で息がうまく吸えず、膝が笑うように震える。身体は冷水を浴びせられたかのように冷え切っていた。








『はぁ、はぁ、はぁ……』
『haha‼なんだそのザマは?ツカサと離れただけで戦えないとは、笑わせるぜ、baby』
『っ…兄さん、いい加減人殺しだなんてやめてください…!』
『床に這いつくばってるお前に言われたくねぇな、オイ』
『兄さん…!昔のあなたは、そんな人じゃなかった…!』
『aw…笑わせんじゃねぇ。…次に会った時は殺すぞ…』


 下から、フードの中から光るあの2つの目は、恐らく一生忘れないだろう。





 まるで機械のような、冷酷な金属的な冷たい光は…。







「っ!」

 おりかけていた瞼が、一気に開く。あの人を止められるのは、自分しかいない。あの人を止めるためだったら、何だってする。例え、どんなに辛かろうが、自分とツカサに、希望を与えてくれた人だから…


 
 さっきまでの呼吸が徐々に整い、リアは壁に手をついて、多少よろけながらも立ち上がった。自分に残された道はこれしかないのだから…








 ツカサと別れてから、ただの一度もモンスターは出てこなかった。割合、ここのダンジョンはポップ率が高かったはずだ。30分も歩いているのに、こんなことはあるのだろうか。なんとなく嫌な予感がしつつも、リアは歩みを止めない脚に視線を向けた。何とか気力で持ちこたえてはいるものの、若干膝が笑っている。こんな状態のため、今はなるべく戦闘は避けたい。ゆえに、この状況は好都合だった。



 心の底で、この道がボス部屋でなく、ただ地上へと上がる階段だったらいいのに、と思いかけ、寸でのところで首を振った。それを望むことは、=ツカサにボス戦をさせることを望むことになってしまう。


 今頃ツカサ君はどうしてるんだろう…リアはふとそんなことを思いながら、右の耳朶にぶら下がっているイヤリングにそっと触れた。








「ったく、リアのやつ…!」

 そのころ、ツカサが索敵スキルが使い物にならないために、奇襲を受け、リアに毒づいていたことを、知る由もない。


 



 別れてから45分。15分ほど前から下降している螺旋階段に変わり、すでにかなりの段数を下りたはずなのだが、一向に何か現れる気配もない。だが…


「…重い…」

 リアは、普通の人では気づかないほどの、微々たるラグを敏感に感じ取っていた。






 通常のモンスターよりも多くの情報量を必要とするボス部屋周辺では、容量が重くなるため、それがプレイヤーが操るアバターの反応速度に影響するのだ。流石に、ひと昔の容量が重くなったスマートフォンのように、どこか一点をタップすると、それが3秒ぐらい時間をかけてやっと反映されるほどまではいかないが、本当に重い部屋は、ほぼ全員がそのラグを感じられるくらいまでにもなる。

 技術が進歩し、最先端の機器といわれるナーヴギアでも、水などの容量を多くとるものも苦手としている。やはり、容量の問題はなかなか大きなものなのだろう。



 
 

 恐らく、この先にボスがいる。リアは拳を強く握りしめた。







 そしてその数分後、リアの目の前には、巨大な石の扉が待ち構えていた。目測で、縦3メートル、横2メートルほどで、フロアボスの部屋の扉ほどの規模だ。


 そんな大きさにも目もくれず、リアの視線は、その扉の表面に吸い寄せられていた。




 一本の巨大な剣が、描かれていた。恐らく、リアの身長ほどもある。しかし、それはただの剣ではない。恐ろしいほどの禍々しいオーラを纏い、それはリアの目をくぎ付けにした。リアは、一瞬背中を誰かが下から上へ、なでたような感触を覚える。


 

 そして、彼女の顔に浮かんだのは…微苦笑だった。




 そう、リアはすべてを悟ったのだ。



 この部屋は、自分にしか入れない部屋だと。




 “この力”を持つ自分のためだけにある部屋だと。








 リアの白い右手が、その扉をゆっくりと押す。蝶番がきしむ甲高い音と、扉と床がこすれる低く鈍い音。そしてその音に、松明が次々と燃え上がる音が加わる。





 


 通常、ボスモンスターの部屋は、ただの箱の部屋で、四方を囲んだ床や壁しかない。のだが…



 最初にリアの目に飛び込んできたのは、赤く、そしてオレンジに輝く光だった。








 中は、まるで洞窟のような印象だった。天井は高く、ドーム型で、いくつも石柱がぶら下がっている。だが、普通の洞窟にないものがある。それは…マグマの湖だった。




 熱く滾るマグマは、ボコボコとその熱さを証明するように音を奏で、熱風をまき散らしており、洞窟の中は茹だるような暑さだ。まあ、もしリアルでこんな洞窟があったのなら、茹だるようだなんて言ってられないほどの灼熱地獄だろうが。


 湖には、まるで花道のように、一本の道が中心に向かって伸びている。そう、まるでそれは、このマグマの湖が舞台だと言っているように。





「…なぁるほどね」

 
 そうつぶやくと、リアはゆったりとした足取りで、その道に足を踏み入れる。ブーツが踏み鳴らす音が、洞窟の反響効果により、やたらに大きく聞こえる気がした。


 中心にあと数メートルでたどり着くか、という距離になったとき、リアは高らかな涼しげな金属音とともに、愛剣を抜き放つ。




 その瞬間、まるでそれが合図だったかのように、湖の底で、何か蠢き、地の底で低い、低い地響きがする。やがてそれは徐々に大きくなっていき、目の前のマグマの中から、一気に何かが盛り上がった。マグマの滝が流れ落ちると、そこには巨大なドラゴンが、ゆうに数メートル上からリアを見下ろしていた。



 赤黒い鱗はマグマの光を照り返すほどに光沢があり、半分開かれた翼は、完全に広げたら洞窟の直径に匹敵するほどの長さだろう。そして、これまた巨大な頭から生える割合短めの角は、一瞬「…ある意味があるのか?」と思わせる。いや、実際なくても何の差支えもないだろう。



 前足から生えている鉤爪はゆうに20㎝を超えていると思われ、かなりの脅威と思われた。






 その巨大なドラゴンは、固有名“インフェルノ・ドラゴン”




 大方相手の体を見終わると、リアはすっと重心を落とし、中段で愛剣を構える。息をゆっくりと吐き、リアとドラゴンの視線が交錯する。



 が




 今にも飛び掛かる体制に入り、飢えた狼のように爛々と輝くリアの目が、驚愕で大きく見開かれる。


 なぜなら…










「まさかここに人間が訪れる日が来るとは思わなかったわい」



 いつも共にいるツカサの、(うら)らかな日差しのような美声とは真反対の、低く、しわがれた声が、洞窟内に反響する。


 インフェルノ・ドラゴンの紅炎の瞳は、本能のままに行動する獣のものではなく、確かな知性の光が宿っていた。



 見開かれたリアの瞳を見ると、インフェルノ・ドラゴンは、フン、と鼻で笑った。

「流石にわしがしゃべるとは思っておらんかっただろう。女剣士よ」

 

 まだ攻撃する気配がないのを察し、リアは剣を下ろし、真っすぐドラゴンを見上げる。


「…そうだね、思いもよらなかったよ。…こんな層のフィールドボスに、高レベルの言語化エンジンが搭載されているだなんてね」


 言語化エンジン。それは、このアインクラッドでも、イベントNPCや、ケアサポートAIに搭載されているものである。それを搭載された場合、ある程度の質問に答えたり、会話をしたりできるが、まだ不自然なところは多いし、未熟なものだ。


 だが、リアの耳に、ツカサの声がよみがえる。


『恐らく、茅場晶彦は、既に言語化エンジンをほぼ完璧に完成させている可能性が高い。その過程が正しいとすれば、アインクラッドの頂、100層のフロアボスには、人とほとんど変わらないほど高性能な言語化エンジンが搭載されるだろう。つまり、それはまるで人のように考えて戦えるということであり、戦いの中で成長する。…そうしたらかなり厄介な敵になるだろうな』




 このドラゴンを見る限り、ツカサの予想は半分当たっていたようだった。

「ほう…流石にこの部屋に入る資格を得た者じゃな。なかなか鋭い」

「…で?そんなことより、あなたが一番最初に言っていたことが気になるんだけど。…察するに、“暗黒剣”が出現する可能性はかなり低かったってこと?」


「そうじゃな。…そなたは、暗黒剣の出現条件を知っておるか?」



 数秒の沈黙の後、リアは首を振った。

「知らない。…でも、暗黒剣っていうんだから、一番人を殺したとかも思ったんだけど、私よりも殺してる人間を知ってるから違うと思う」


 インフェルノ・ドラゴンは、ゆっくり大きな息を吐いた。いや、正確には、不燃焼になった煙だ。これは絶対に業火のブレスがくるなと密かにリアは思った。



「暗黒剣は、茅場昌彦も出現するとはほとんど思っとらんかったじゃろう。何せ、その出現条件がそろう者はほとんどいないと踏んだからじゃ。それは普通に考えて当たり前じゃろう。…1つ目は50層の時点で全スキルのスキル熟練度の合計が最も高いこと、2つ目は同じく50層の時点でレベルが最も高いこと。…ここまでしか出現条件がなかったら、恐らく出現率はかなり高かったじゃろう。…じゃが、最後の一つの条件が最難関なのじゃ」

「……」

「それはのう、“通常行動は常人でありながら、異常行動に対する心理的壁が最も薄い者”じゃ」



 リアの表情は、それを聞いても一切変わらなかった。しばしの沈黙ののち、詰まっていたリアの顔に浮かんだのは、ほぼ人間に近いAIであるインフェルノ・ドラゴンも想像しなかったものだった。




 それは、黒い光が底光りする、どこまでも沈む沼のような瞳に、皮肉気に口角が上がった笑みだった。





「…なるほどね。確かに私にはぴったりかもしれないね。…そう。私はツカサ君のためにだったら何でも捨てられるし、なんにでもなれる、どんなことでもできる…」




 インフェルノ・ドラゴンは、その様子をじっと見つめていた。やがて、



「確かに、そなたに暗黒剣が渡ったのは運命的だったのじゃろうな。…さて、そろそろ話は終わりとしようかのう。わしは暗黒剣を持つ者の相手をするように作られた。そのお役目を全うしなければならないのでな。…すまぬな」


「別に。私もあなたを倒しに来たんだから、戦ってもらわなくちゃ困る。…さあ、少しは楽しませてくれるのかな!」


 


 リアは、下げていた愛剣を構えなおし、ゆっくりと体重を落とす。





 



 まずインフェルノ・ドラゴンの初撃は、先ほどリアが見切った通り、ファイアブレスだった。通常のドラゴン型モンスターと変わらず、大きく後ろにのけぞる。これだけ大きなモーションがあるのだから、避けられるにきまってる…思った瞬間だった。




 リアはその時思い出したのだった。




 自分は半径1メートルほどしかない、マグマの湖に浮かぶ島のような足場に立っていることを。



 たとえ入り口のほうに戻ったとしても、縦に避けても意味がない。横に避けなければ。








「うっそでしょ…⁉」

 思わずリアは毒づくが、そんなことをしてもドラゴンがブレスをやめてくれるはずもなく。


「っ‼‼」


 これはもう、タイミングにかけるしかなかった。時間内に、できるだけ下がると、リアは助走をつけ、思いっきり地面を蹴った。



 この世界の跳躍は、敏捷値よりも、筋力値に依存している。ゆえに、STR寄りのリアにとっては得意分野である。




 大きく首をのけぞらせたインフェルノ・ドラゴンは、まだリアが飛んだことに気が付いていない。そして…









 その口から放たれたブレスは、今まで数々の修羅場を駆け抜け、強力なモンスターたちを次々と粉砕してきたリアでも、さすがにここまでの威力かつ広範囲のブレスは見たことがなかった。


 ざっと目測で、長さが6メートル、角度はおよそ45度程度。一級品である。



「いや、もはや殺すつもりしかないでしょ、茅場昌彦さん…」


 ぼやきながらも、リアは地面(といっても下はマグマの湖なのだが)に垂直に、切っ先を下にして剣を構える。リアの跳躍力がなくなり、その体は重力加速度に従って、どんどん加速していく。そして、テンペストがオレンジのライトエフェクトを纏う。



「ギャアァァァァァ!!」



 片手剣 3連続下段刺突技 スランティング




 リアのほぼ全体重を乗せた強烈な突きは、真っ赤なエフェクトがはじけ飛ばせ、ドラゴンの悲鳴が洞窟中に響き渡る。





 振り落とされる前にリアはドラゴンの頭から飛び降りたと同時に、ドラゴンは痛みに耐えきられないというように頭をぶんぶんと振っている。







 ドラゴンがそんなことをしている間にも、リアは構えの体勢を崩さずに、だがその頭はフル回転していた。



 今の攻撃で、10本あったHPバーのうちの1本の、約0.5割削れた程度だった。全体重が乗っていたうえに、まったくの無防備の頭にクリーンヒットしたのだから、普通はもっと削れていていいはずなのだが、このドラゴンはなかなかに耐久値が高いらしい。





「ドラゴンの弱点…ドラゴンの弱点…」


 


 つぶやきつつも、ドラゴンの狭い来る噛みつき攻撃を、たった半径1メートルほどの踏み場で避ける。が、わずかに腕をかすり、HPが削られる。どうやら攻撃力もかなり高いようである。



 その時、リアの頭に一つのことが思い出された。








 それは、ある魔法学校を舞台にした一人の少年と闇の帝王との戦いの物語だ。日本に帰ってから、ここにログインするまでの間に、「本は読んでおいたほうがいいよ。ほら、これなんか、有名だし読みやすいだろう」とか言う、胡散臭い眼鏡のお役人に勧められて読んだのだ。その本の4巻のトライ〇ィ〇ードトー〇メントという試合で、主人公がドラゴンに守られた卵を盗み出すという課題があった。そこで、ダー〇スト〇ングのビク〇ール・ク〇ムがドラゴンの目に結膜炎の呪いをかけたのだ。そしてそれに対してあのハー〇イオ〇ーが「ドラゴンの弱点は目よ!」とか言っていた気がするのだ。









「そうだ、目は鱗に守られてない‼‼」


 




 3度目の噛みつき攻撃の時、うまくかわし、紅炎の右目に、片手剣で唯一の突進技“レイジ・スパイク”を突きさす。


 その攻撃に、ドラゴンは悲鳴を上げてのけぞった。HPバーを見やると、先ほどの3連撃よりも多く、2割も削れている。それは、このドラゴンの弱点が目だという確かな証拠だ。



「よし!このパターンで行けば…!」





 だが、この時リアは重要なことを一つ忘れていた。




 そう、このドラゴンが人工知能を持っていることを…













 リアがそうつぶやいた瞬間だった。まったくもって、ほんとうに一瞬だった。何か風を切る音がする。そう思ったコンマ数秒後、リアの体は吹っ飛び、洞窟の壁にたたきつけられていた。



「っ!?」


 リアも一瞬自分の身に何が起こったのか理解ができなかった。ドラゴンがその長い強力な尾で自分を薙ぎ払ったのだと気が付くのに数秒の時間を要した。HPはそれで軽く4割そがれている。

 危うくマグマの海に落ちるところだったが、何とか石筍にしがみつき、落下することは避けられた。恐らく落下しても即死ではないだろうが、やけどと同じ継続ダメージ型で、あっという間にHPを削りきられると予想できるので、それに大差はない。つまり、落ちたら死ぬ。



「わしの弱点が目だとばれてしもうたわい」



 ドラゴンがリアのいるほうにマグマを優雅に泳ぎながら言う。



「だが、逆を言えば目さえ守り抜けばよいというもの。…マグマに落ちて死ぬがよい!」





「ちっ!」


 リアは思わず舌打ちをし、ドラゴンが噛みつく瞬間ギリギリに飛び上がり、ドラゴンの体を踏み台にして、また湖中心にある踏み場に着地する。が、ドラゴンが振り向く前に、もう一度その巨体に飛び乗り、頭の部分まで飛び上がりながら、右脚の太もも部分に手をかける。引き抜いたその手にあったものは、刃渡り30センチはあろうかというほどの鋭利な短剣であった。テンペストとその短剣を逆手に持ち、頭に飛び乗った瞬間それを身体側に刃を向け、両目に突き刺した。


 ドラゴンの悲鳴が響き渡る。



「守り抜けばいいだって?…できるものならやってみればいいじゃない」



 再びドラゴンの体から離れたリアはそう言って2本の刃をぎらつかせ、不敵な笑みを浮かべた。













 こうして、戦闘が始まってから、ゆうに1時間は過ぎた。戦況は、ドラゴンの残りのHPは1本と少し、リアは6割程度残っていて、どちらかといえばリアが押している、といえるだろう。





 鮮やかで、変化自在な彼女の剣筋と、発想力豊かで、なおかつそれを実行できるレベルとスキルの高さで、いつでもインフェルノ・ドラゴンの予想をはるかに上回る。それ故に、ドラゴンの果てしないHPをこの短時間で、ここまで削ることができたのだろう。



「っ…!せあっ!」


 ドラゴンのわずかなスキをついて、片手剣 重単発技 ヴォーパルストライクをありったけの力を込めて目に叩き込む。ヴォーパルストライクは、片手剣スキルの熟練度が950にならないと使えないという、片手剣のソードスキルの中でもトップクラスの威力を誇る。しかも射程範囲が長い。



 ヴォーパルストライク特有のジェット音が洞窟に響き渡る。そして、それはインフェルノ・ドラゴンのHPが、最後の一本に差し掛かった合図の音でもあった。













 



 再び踏み場に戻ったリアに襲い掛かったのは、彼女が全く予想もしなかったことだった。ドラゴンは、ぐっと背筋を伸ばすと、その翼を広げ…


「……っ‼‼」


 思い切り仰ぎ始めたのだ。それはまさに竜巻のようで、リアが今まで経験してきた強風の中でもダントツの強さだ。いや、このレベルを体験したことがある人がいるとすれば、それは恐らく竜巻に巻き込まれたことがある人だけだろう。胸当てしか金属防具を付けておらず、あとはすべて布装備のリアは、いとも簡単に、まるで紙屑のように、真上に吹き飛ばされた。



 隙間なく垂れさがる石柱に触れる前に、リアは空中で一回転すると、その石柱を蹴り、その体は仮想世界の重力加速によってドラゴンのもとに突っ込んでいく。あのままいっていたら、石柱にぐさりと体が突き刺さっていただろう。軽業スキルを上げておいてよかったと、心からリアは思った。













 リアの剣が赤色に染まる。そして、それはジェット音を纏った。そう、ヴォーパルストライクである。







 が、その時、不意にリアの背筋に嫌なものが走った。それが当たるのは心底嫌だが、こればかりは外れたことがないのだ。





 見る見るうちに距離は縮まり、ドラゴンの頭まであと数メートル…というところで、驚くべきことに、ドラゴンは、ふっと、その頭を右にずらしたのだ。









 リアの体は、受け止めるべき足場がなくなったことで、燃え滾るマグマがその体を包み込み、高い水しぶきならぬマグマしぶきを上げた。
 
 

 
後書き
 はい、いかがでしたでしょうか。戦闘シーンは苦手なので、いろいろと変な点があるかとは思いますが、スルーを希望しますww(それなのに、なんでSAOの二次創作なんて書き始めたのかっていうww)





 そして、なんといっても今回の伏線で一番大きいのは、リアが“兄さん”と呼ぶ人の存在。原作を読んでいる方ならすぐにわかりますよね?そうです、あの方です。ツカサとリア、そしてその人との関係にも今後ご注目です!
 

 いやはや、リアが、リアがぁぁぁ‼‼というところで、今回はお話を止めさせていただきましたwさて、リアはどうなるのでしょうか。





 次回もお楽しみに! 
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