おぢばにおかえり
しおりを利用するにはログインしてください。会員登録がまだの場合はこちらから。
ページ下へ移動
25部分:第五話 彩華ラーメンその二
第五話 彩華ラーメンその二
「わかったわね」
「わかったよ。じゃあバニラね」
「ええ」
結局新一君にバニラおごることになりました。私も同じバニラを頼んで二人並んで歩きながら食べだしました。ソフトは相変わらず美味しくてとても甘いですけれど。
「これから下りるんだよね、商店街を」
信号のところで待ちながら私に声をかけてきました。
「ここからずっと」
「だってミスタードーナツ行くんでしょ?」
そう新一君に言いました。
「だったらやっぱりこのまま」
「何かさ、かなりお腹空いたし」
ここで急に言ってきました。
「ラーメン食べたくなったんだけれど」
「ラーメン!?」
「うん。駄目かな」
「別にいいけど」
ラーメンですか。何か大学の食堂で結構食べているんであれですけれど。
「けれどあれよ」
ちょっと気になることがあったんで。それを新一君にも言います。
「あそこ行くのならちょっと早いわ」
「早いかな」
「そうよ、五時からじゃない」
こう言いました。
「ちょっとそこまでは」
「じゃあさ。駅の向こうに行かない?」
「駅の向こう?」
「そこにもあるじゃない」
新一君はこう私に言ってきました。
「お店が」
「ああ、そういえばそうね」
言われて思い出しました。ありました。
「遠いけれど」
「遠いのは別にいいわ」
私はそう新一君に言葉を返しました。
「ほら、途中に詰所あるからそこで自転車借りて」
「そういえば先輩今日は自転車じゃないんだ」
「ええ、ちょっとね」
実は学校にはいつも自転車なんですけれど今日は違いました。気分を変えて歩いていっただけなんですけれど。たまにこうした日もあります。
「じゃあ先輩の自転車で行こうよ」
「新一君は?」
「だから大丈夫なんだって」
根拠が全くないとしか思えない笑みを私に向けて言ってきました。
「そこはね。僕に任せてよ」
「新一君に?」
話を聞いただけですっごく不安になる一言でした。
「大丈夫なの?」
「いいからいいから」
私の話なんて全然聞かずに。話を続けます。
「じゃあそれでね」
「ええ」
思いきり不安ですが頷きました。
「わかったわ。そのかわり変なことしないでよ」
「変なことって?」
「わからなかったらいいわ」
そういえば別に。自転車で何かできるわけでもないですね。自分で言った言葉が変だったって気付きました。
「じゃあまずは詰所ね」
「そうよ。ラーメン食べるんならね」
こうしてとりあえず詰所に行くことになりました。そこで私の自転車を出すと。
「僕が運転するから」
新一君はこう言ってきました。
「えっ、新一君の自転車は?」
「そんなのいらないし」
何かまた変なことを言います。
「二人乗りでいこうよ」
「二人って」
「俺が運転するからさ」
勝手に話を決めちゃってます。
「いいよね、それで」
「私の自転車なんだけれど」
抗議めいた口調で言い返しました。
「何でそれで新一君が?」
「じゃあ先輩が運転する?」
不意に私に言ってきました。
「先輩が」
「それは当然でしょ」
私はきっぱりと言い返しました。
「私の自転車なんだし」
「けれど僕が後ろに乗るんだよ」
それも勝手に決めちゃってます。だから私の自転車なのに。
「先輩が運転して。無理じゃない?」
「うっ」
確かにその通りです。私小さいし彼は大きいし。それで私が運転するっていうのははっきり言って無理があるなんてものじゃありませんです。
「だからだよ」
「新一君が運転するのね」
「今度はバイクでね」
「バイクは駄目でしょ」
天理高校はバイクは絶対駄目です。ひょっとして。
「わかってるの?」
「まあ免許も持ってないけれどね。大学は入ったらサイドカーでも」
「サイドカー?」
また変わったのを持ち出してきました。
ページ上へ戻る