| 携帯サイト  | 感想  | レビュー  | 縦書きで読む [PDF/明朝]版 / [PDF/ゴシック]版 | 全話表示 | 挿絵表示しない | 誤字脱字報告する | 誤字脱字報告一覧 | 

おぢばにおかえり

しおりを利用するにはログインしてください。会員登録がまだの場合はこちらから。 ページ下へ移動
 

24部分:第五話 彩華ラーメンその一


第五話 彩華ラーメンその一

                    彩華ラーメン 
 神殿から商店街を二人で歩いていますけれど。人目が気になります。
「誤解されないかしら」
「誤解って?」
「だから新一君と歩いてよ」 
 それが凄く不安です。こんなことで変に思われたら困るどころではありません。
「何て思われるか」
「あれ、僕は平気だけれど」
 新一君はそうでしょうけれど。それでも私は違うんです。
「先輩とデートだってはっきり言えるし」
「何でそう能天気なのよ」 
 それが不思議でなりません。
「私、初めてのデートだしやっぱり」
「僕だって初めてだよ」
「あれ、そうだったの」
 そういえば何か言っていたような。憶えていないですけれど。
「初めて同士でいいじゃない」
「そういう問題じゃなくてね」
 そう新一君に言い返します。
「私が言いたいのは。他の人達が私を見て」
「恋人同士と思われるとか?」
「それよ」
 それが凄く不安で心配なんです。
「誤解されたら困るわよ」
「いいじゃない、同じ大教会所属だし」
「たまたまでしょ」
 最初それ知った時はそれこそ我が目を疑いました、はい。
「同じ高校の先輩後輩だし」
「それもたまたまでしょ」
 入学式の時から全く。
「これも奇しきいんねんだって」
「悪いんねんね」
 はっきりとそう言えます。何でこんないい加減な子が。
「今もこうしてデートしてるし」
「仕方なくでしょっ」
 何か腹が立ってきました。
「新一君があんまりしつこいから」
「じゃあもっとしつこく言ってさ」
「今度は何よ」
 何か急に左手を見てきました。
「さっき言ってたさ、ほら」
「さっきって?」
「だからソフト」
 言われてやっと思い出しました。
「ソフトクリームね」
「好きね、ソフト」
 そういえばそうです。新一君は私と一緒の時はいつもソフトクリームを食べてるんです。商店街のソフトクリームをです。今ふと気付きました。
「太るわよ、食べ過ぎると」
「先輩もね」
 また余計な一言を。
「あまり甘いもの食べてると」
「そんなに食べてないけれど」
「けれど好きでしょ、甘いもの」
「まあそれはね」
 自覚してます。ドーナツもケーキも大好きです。あとチョコレートなんかも。太るのと虫歯には結構気をつけていたりします。やっぱり健康第一ですから。
「だけど新一君私より食べてない?」
「そうかな」
 自覚はないみたいです。
「まあ男と女の子じゃ食べる量が違うしね」
「それはね」
 これはわかります。
「そうだけれどね」
「まあとにかくソフトをね」
 そっちに話を戻してきました。
「食べようよ。口が寂しいし」
「わかったわ。じゃあ何がいいの?」
「バニラ」
 オーソドックスでした。
「白ね」
「今日の先輩の下着の色だよね」
「えっ、ちょっと」
 な、何で知ってるんでしょう。今日はズボンですし上着もちゃんと着て絶対にわからない筈なのに。
「何でそんなの知ってるのよ」
「あれっ、そうだったんだ」
 言った本人がかなり驚いた顔になっていました。
「冗談で言ったのに」
「えっ!?」
 ・・・・・・しまった。またやっちゃいました。
「そうだったの」
「当たり前じゃない。何で俺がそんなこと知ってるの」
「そうよね」
 ですよね。有り得ないです。
「驚いて損しちゃった」
「けれど今日の先輩白だったんだ」
 また楽しそうに言います。
「可愛い感じ?似合うと思うよ」
「どうでもいいでしょ、そんなの」
 出しちゃった言葉はもう返ってきません。自分でもとんでもない失敗をしちゃったってことはわかってます。よりによってこの子に。またしてもです。
「次その話出したらソフト買ってあげないから」
「そう言うと何かお母さんみたいね」
「それでもよ」
 ここは強引に押し切ることにしました。
「下着の色とかどうでもいいし」
「俺はそうじゃないけれど」
「新一君は関係ないのっ」
 これ以上この話をしても私が墓穴掘るだけです。とにかく終わらせることにしました。
 
ページ上へ戻る
ツイートする
 

全て感想を見る:感想一覧