おぢばにおかえり
しおりを利用するにはログインしてください。会員登録がまだの場合はこちらから。
ページ下へ移動
21部分:第四話 大学の中でその四
第四話 大学の中でその四
「行こう、デートに」
「それでも行くのね」
この神経には参ります。本当に図太いというか。
「うん。何処がいいかな」
「言われるとちょっと」
困ってしまいます。そこまでは全然考えていませんでした。
「甲子園とかは?」
「おぢばから離れるじゃない」
何でそこでそんなのが出るのやら。甲子園は高校の時応援で随分行きました。天理高校は野球部が強いんで。カチワリが美味しいですよね。
「おぢばじゃないと駄目よ。甲子園なんて一泊じゃない」
「それもいいかも」
「よくないっ」
また言ってやりました。
「ふざけたこと言うと巨人帽被らせて一塁側に行かせるわよ」
「先輩、そりゃないんじゃない?」
「だったらふざけないのっ」
本当に。手間がかかる子です。
「怒ってるんだから、私」
「はいはい、りっぷくはそこまで」
すぐに友達からおみちの言葉で突っ込みが入りました。
「機嫌をなおしてデート開始ね」
「ちっちも笑って」
皆で私に対して言ってきます。
「にっこりと。笑顔は表札よ」
「わかってるけれど」
おみちの言葉を出されると。どうにも言えません。
「阿波野君もね・・・・・・ってもう笑ってるか」
「僕はいつも笑顔ですよ」
本当に何処までも晴れやかな笑顔です。憎々しいまでに。
「先輩と一緒なら」
「うう・・・・・・」
「そういうことで。じゃあちっち」
「私達はこれでね」
「って何処に行くのよ」
姿を消そうとする皆に対して問いました。
「ってデートなのに私達がいてどうなるのよ」
「ねえ」
当然といった調子で私に言います。
「ささ、後は若い人達だけで」
「仲良くね」
「お見合いじゃないのよ」
何かすっごい引っ掛かる言い方をまた。こんなのばかりですけれど。
「それに私達コンパだし」
「軽く飲んでくるから、これから」
「あっ、そっちもいいですね」
何故かここで新一君が笑顔になります。
「お酒飲めますね」
「未成年が何言ってるのよ」
彼、お酒大好きです。詰所で何かと飲んでいます。梶本さんや井本さんの御主人と。皆が勧めるんですがそもそも彼も断りません。それについても困った子です。
「お酒なんて。そんなのだから山村先生にも睨まれるのよ」
「まあまあ」
「まあまあじゃなくてね」
何で彼に対してはこんなにお説教するのか。自分でも不思議なんですが。
「そんな態度がほこりになるのよ」
「先輩は厳しいなあ」
「そう?」
「ねえ」
後ろで皆が新一君の言葉に首を傾げます。
「正直ちっちは優しいわよ」
「それでもまあ」
何故かまた私の方を見て笑ってきます。
「阿波野君だけには別かも」
「諸般の事情でね」
「事情って」
また変な言葉が出て来ました。
「何なのよ、また」
「それはまあ言わないってことで」
「ねえ」
「じゃあ後は僕の予想ですね」
それで新一君が変なこと言うのはいつも通りですけれど。それにしても。
「そういうことで」
「じゃあ阿波野君」
「デート頑張ってね」
「はいっ」
ここで新一君に言うのが。すっごく腑に落ちないです。
「頑張ります、絶対に」
「別にそんなのいいわよ」
私が言う言葉も決まっていました。
「期待していないし」
「そういう時こそやるのが猛牛野球なんだけれど」
「全然知らないわ」
そもそもパリーグは。私あまり知らないです。
「期待していようがしていなかろうが絵になる野球をするチームなら知ってるけれど」
「ああ、阪神」
「そういうこと」
やっぱり阪神はいいですよね。あの勝っても負けても、しかもどんな勝ち方負け方でも絵になるって。そんな球団阪神しかありませんよね。
「やっぱりそれよ」
「じゃあデート場所は野球部の練習を」
「それもちょっと」
何か余り気分が乗りませんでした。
「今は見たくないわ」
「じゃあラグビー部?」
「それもねえ」
そっちもあまり見たくない気分でした。気が乗りません。
「悪いけれど」
「じゃあ何処にしようかな。ええと」
「じゃあアーケードでも歩いたらいいじゃない」
ここで友達の一人が私達に言ってきました。
ページ上へ戻る