おぢばにおかえり
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114部分:第十六話 色々と大変ですその一
第十六話 色々と大変ですその一
色々と大変です
ひのきしんに部活に寮生活に学校に。順番が滅茶苦茶になっているかもですがとにかく何を取っても天理高校での生活は本当に大変です。体重が減ったみたいな。
「体重が減っても背が伸びないのよねえ」
「自分で言ってどうするのよ」
佐野先輩に言われました。小柄でショートヘアの人です。可愛い感じですが特に印象的なのはその目です。垂れ目ですぐにわかるんです。広島の教会の娘さんです。時々広島弁が出ることも。
「けれど一年の時は皆そうよね」
「ハードですから」
「一年は皆じゃけえね」
ここで広島弁が出ました。最初聞いた時は私もびっくりしました。奇麗な人が急に凄い言葉出すんだなって。けれど慣れてみるとそれ程でも。おぢばでは方言を聞くことも多いんです。
「それはね。けれど二年になればね」
「違うんですか」
「三年になればもう全然よ」
こうも言われました。佐野先輩も三年生です。長池先輩や高井先輩と一緒です。それにしても思うんですが私にしろ私の周りの人達にしろ何か名前が変に決まっているような。何年か前から中村っていう私の名前から『ノリ』って言われたりします。近鉄が優勝した時は大騒ぎでした。あと長池って阪急の選手がいたそうです。私はそこまでは全然知らなかったりするんですけれど。
「平気になるからね」
「そうなんですか」
「私も一年は大変だったしね」
やっぱり先輩もそうだったみたいです。
「けれど一年だけだからね」
「わかりました」
皆から言われます。殿上人扱いの三年生の人からの言葉です。
「二年生になれば随分変わるわよ」
「学校では全然それはわからないですよね」
「寮だからわかるのよね」
「はい」
本当にその通りです。寮がメインになっています、明らかに。
「ところで美紀はどう?」
「長池先輩ですか」
「そうよ。優しい?」
それを尋ねてきました。何か長池先輩についてはいつもこう聞かれます。その度に同じ言葉を返しているんですけれど。本当にいつもです。
「怖くない?」
「怖くなんかないですよ」
私はいつもの返事をしました。
「とても優しいですよ」
「そう、よかったわ」
佐野先輩はそれを聞いてほっとしたように笑いました。
「美紀もね。短気なところがあるから」
「いえ、全然ですけれど」
これもよく言われます。どうしてかわからないですけれど。
「けれど優しいのね。よかったわ」
「親切ですし。それにとても奇麗で」
「奇麗よね、本当に」
そう言う佐野先輩もかなり。何か先輩には奇麗な人が多いと思います。宮城から来たっていう真木先輩なんかもとても奇麗です。
「色白いし目キラキラしてるし」
「スタイルもいいですし」
「私なんかよりずっと背が高いし」
これは私も同感です。本当に羨ましいです。
「羨ましいわ」
「先輩もですか」
「ええ、ちっちもなのね」
背の低い者同士。それはとても感じます。
「背が低いのは」
「そうですよね。物凄いコンプレックス感じて」
「まあそれを言うのは止めましょう」
先輩からストップがかかってきました。
「言っても仕方ないしね」
「そうですよね。努力はしてるんですけれど」
「私だってあれよ」
先輩はその垂れた目に困った色を見せながら仰います。
「バナナだっていつも食べてたけれど」
「バナナをですか」
「ええ、バナナをね」
バナナを食べると背が高くなるんでしょうか。初耳です。
「いつも食べていたんだけれど。授業中でも」
「それはまずいんじゃ」
幾ら何でも授業中に何かを食べるのは。そういえば高井先輩もそんなことを仰っていたような。
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