塩賊
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第二章
「こんなにいい状況はないな」
「はい、全く以て」
「儲かって仕方がありませんね」
「朝廷が高い塩を売れば売るだけ我等が儲かる」
「しかも塩を売る我等を街や村ぐるみで守ってくれる」
「こんないいことはにですよ」
「本当に最高ですね」
下の者達も笑って話す。
「本当に」
「それはそうですね」
「このまま好きなだけ儲けられますね」
「もう朝廷はどうしようもないです」
「俺達のやりたい放題ですね」
「何だって出来そうですね」
「そうだな、何だってな」
それこそと言う黄巣だった、ここで。
「出来るな」
「ですね、本当に」
「塩があるんですから」
「皆塩がないと生きていけません」
「だから皆俺達から安い塩を買います」
「それで俺達は大儲けしてますから」
「もう何だって出来ますよ」
手下達は笑って言う、彼等は塩を売って銭を相当に貯めていてそこから兵糧も武器も多く仕入れていた。いざという時に備えてだ。
その兵糧や武器も見てだ、黄巣はふとだった。
かつて自身が科挙に落ちたことを思い出してだ、手下達に問うた。
「御前等今何でも出来るって言ったな」
「ええ、言いましたよ」
「確かに」
「人は塩がないと生きていられないですから」
「それがないとです」
「だから俺達好きなだけ儲けてるんですよ」
「面白い位に」
そこまで儲けているというのだ。
「本当に」
「ですから銭も腐るだけあってです」
「食いものも武器も貯め込んでます」
「朝廷の討伐軍とも戦えますよ」
「それこそ」
「そうだな、じゃあな」
黄巣はその荒んだ目を剣呑にさせてさらに言った。
「俺達が国を奪えるか?」
「国をですか」
「唐を倒すんですか」
「それが出来るっていうんですか」
「何でも出来るならな」
それこそというのだ。
「それも出来るか?」
「何でもならですね」
「唐を倒すこともですね」
「出来るならですね」
「それも」
「何か王仙芝って塩賊が叛乱起こしたって聞いてな」
こう手下達に言った。
「俺達もやってみるか」
「そうしてですか」
「唐を倒して国を奪う」
「そうしてやりますか」
「そうだ、俺達には塩がある」
その塩、山の様にあるそれを頭の中に浮かべて言った。
「これの力でな」
「叛乱起こしてですか」
「そうして長安まで攻め入ってですね」
「国を奪う」
「そうしてやりますか」
「ぞうするか?どっちにしろ俺達はお尋ね者だ」
それならとも言う黄巣だった。
「もう唐を潰してな」
「それで国を握る」
「そうしてやりますか」
「科挙を受けていたさ」
手下達にもこのことを話した。
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