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ランス END ~繰り返しの第二次魔人戦争~

作者:笠福京世
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第一部
序章(CP0第一周、結末Cエンド)
  第03話 魔軍の侵攻に宣戦布告などなくて

 
前書き
序章のテーマは、あくまでヘルマン側(のモブキャラ)から見た第二次魔人戦争です。 

 

LP8年9月後半 ヘルマン共和国  東部に位置する計画都市ゴーラク

 僕がゴーラクの都市守備隊の責任者(大隊長)に任命されてから3カ月。
 平穏だった日常は、終わりを告げた。それも唐突にだ。

 急遽、ゴーラクに設置された東部ヘルマン後方支援司令部。
 そこでは怒号と悲鳴に交じって様々な情報が飛び交っている。

 「コザック周辺の警備隊との連絡が取れました!」

 「スードリ13は魔軍により陥落。ポルゴZも同様です。
  第四軍は本拠地である要塞都市コザックの司令部を含めて壊滅状態です」

 「となる魔軍は、キナニ砂漠から侵攻してきたということか」

 状況は最悪で最低。何十万という魔物の大軍が、大陸の中心に位置するキナニ砂漠より侵攻。
 新兵を中心とした編成となっていた第四軍は瞬く間に壊滅した。
 司令部との連絡もつかず第四軍のコンドラチェンコ将軍が戦死したという不穏な噂も流れている。

 「はい。ゴーラク、アークグラード、ローゼスグラード、スードリ10を結ぶ街道は確保されています」

 「第四軍の救援に向かった第五軍は、都市奪還は不可能と断念。
  作戦は撤退支援に切り替えました」

 「アークグラードに南部からの難民が殺到。救援物資を送って欲しいとの連絡です」

 「第一軍の東部ヘルマンへの救援はまだか!」

 「第一軍の主力は、番裏の砦へと向かったそうです」

 「二方面から同時侵攻か……」

 「それと……ボドゥ将軍の戦死は誤報ではないそうです。
 現在、第二軍は副将だったトルストイ殿が率いているそうです」

 「……そんな」

 開戦当初、帝都ラング・バウの総司令部が殆ど機能しなかった。
 第二軍の将軍が戦死した。総参謀長が錯乱した。大統領秘書が雲隠れした。
 などなど様々な噂が、東部ヘルマンに流れて情報が錯そうした。
 ようやく総司令部は体制を整え、西部ヘルマンとの連絡が行きかうようになった。
 と思ったら、いきなり最悪の知らせだ。

 「リーザス国境との連絡も取れました」

 今は隣国からでも援軍が喉から手が出るほど欲しい。そんな状態だった。

 「リーザスにもヘルマンと同数規模の魔軍が侵攻したそうです」

 シーンっと室内が静まる。

 「ヘルマン、リーザスだけでなく……
  ゼス、自由都市を含め大陸の国家全てが、今や同じ状況です」

 今やヘルマンは壊滅寸前だ。
 ヘルマン革命や第七次HZ戦争時の混乱を体験していたが、それどこの騒ぎではない。

 「それじゃあ、このままだと人類が……」

 第一軍の女性士官。ヘルマン軍では貴重な魔法使いが途中で口を紡ぐ。
 しかし誰の頭にも「滅亡」の二文字がよぎった。

 「ということは各国にも魔軍の大部隊と共に魔人が?」

 「はい。リーザス軍は、魔人ラ・ハウゼルと魔人シルキィ・リトルレーズンと交戦したと」
 
 「またリーザスからの情報提供によると自由都市では、最初の会戦で魔人レイが目撃されたそうです」

 現在の大戦争は第二次魔人戦争として公文章に記録されている。
 第一次があると言っても、今から五百年以上前の話。おとぎ話の世界の物語だ。
 浮遊都市を浮かべ、聖魔教団の魔法使いが、魔法使いでないものを蛮人と呼び支配した時代。
 そういえば魔人レイの名前は、魔人が浮遊都市を堕とした昔話で聞いたことがあるな。
 ははは、もはや笑い話だ。乾いた笑いでもなければ、やってられない。

 開戦当初、東部ヘルマン方面で把握している軍の被害だけで五桁を軽く超えた。
 民間人の被害は軍の数倍、戸籍のない自由民を含めれば……もはや計算できない。
 各国が似たような状況なら開戦一か月後には、全人類の一割が死んでもおかしくはない。

 「とにかく状況は、もはや国家を超えて人類の総力戦です。
  北部のウラジオストック、ババロフスクから、ありったけの物資を集めて下さい」

 第一軍出身の東部ヘルマン後方司令官が落ち着いた声で指示を出す。
 内心は分からないが、司令官の声質に合わせて少しずつ、皆が冷静さを取り戻す。
 都市守備隊は後方支援司令部の指揮下に入った形だ。
 軍団規模とはいえないが、師団規模の大所帯だ。
 僕と同じ大隊長クラスの責任者も複数人いる。僕は黙ったまま静かに情報をまとめていく。

 「連絡の取れたコザック周辺の警備隊の責任者は?」

 「ルーベラン・ツェール中隊長です」

 中隊長が責任者ということは、大隊長は戦死か行方不明ということだ。

 「コザック周辺は、魔軍の勢力範囲内です。
  こちらから撤退を指示した方がよろしいのでは?」

 「いや、都市守備隊が臨時で指揮下にあるとはいっても下手に前線に口を挟まない方がいい」

 「そうだ。撤退支援を行っている第五軍に任せた方がいいだろう」

 たぶん後方から撤退の命令を出しても受け入れられない可能性もある。
 魔軍の勢力範囲内といっても計画都市外には多くの村や集落があり住民がいる。 
 中隊長ルーベランとは、顔見知り程度の付き合いだが分かる。
 彼女は住民を見捨てて逃げることを良しとするような性格ではない。
 真面目過ぎて、少々優柔が利かない。そんな性格をしていた。

 「とにかくアークグラードが最前線だ。ここが落ちれば西部との連携が難しくなる」

 「大変ですが難民は、ゴーラクまで退避させましょう」

 「そうだな。北部から集めた救援物資を送るにしても兵站の限度がある」

 「魔人バボラを監視しているローゼスグラードの第五軍から連絡がありました」

 開戦当初、ヘルマン南部には巨大な魔人バボラが出現した。
 小さな砦や村は文字通り踏み潰されたそうだ。
 無敵結界を備えた魔人に対してヘルマン軍では対抗する手段が何一つない。
 発言者に全員の祈るような視線が集まる。

 「魔人バボラはボーン周辺を中心にヘルマン中央部に出没しています。
  帝都ラング・バウからも、時々山越しに姿が目視できるそうです」

 少しだけホッとした息が漏れる。
 不謹慎だが東部ヘルマンに来なくてよかったと思っている者が多数いる。
 第四軍が壊滅し、魔軍を相手にするだけでも手一杯なのだ。

 「帝都が西と南から狙われてる形か」

 番裏の砦側に出現した魔人については、未だ正体が分かってはいない。
 しかし常日頃から魔軍を警戒し侵攻に備えていた第二軍が敗れたのだ。
 砦が突破され、将軍が命を落とすなど尋常ではない。
 ただの魔物将軍が率いる軍が襲っただけだとは、誰ひとり考えていない。

 「とにかく法王の要請により、来月の頭に各国首脳が集まることだけは決定した」

 現状では各国の首脳が国を離れるのは難しい。
 しかし各国が協力もせずに時だけが過ぎれば、今年中には各国が滅びるだろう。
 
 「それまでに何とか防衛の体制を整える」

 全員が頷く。連日連夜、ぶっ通しで働いているが文句はいえない。
 法王の率いるテンプルナイトの中隊が、密かにヘルマン北部の氷雪地帯に向かった。

 五カ月ほど前に氷雪地帯に向かうのを目撃された冒険者一行。
 その中に魔人を打倒する力を持った魔剣カオスの使い手がいるそうだ。
 自由都市の新興都市CITYに、個人で城を構える大陸最高レベルの冒険者。
 ヘルマン革命時には革命軍の精鋭部隊を率いた大将。
 噂ではリーザス、ゼスを始めとした各国の争乱にも関わり多大な貢献をしたと聞く。 
 地位も名声も望まぬ人物なのだろうか、その名を知るの者は少ない。

 戦乱の時代、人々は英雄を求めた。
 魔王を打倒す、勇者を望んだ。この災厄は平凡な身に余る。

 政変で、HZ戦争で、黒死病で、革命で、何度も地獄を見たつもりだった。
 ヘルマンは革命を乗り越え、明るい未来を掴んだと……誰もが思っていた。

 しかし、それはつかの間の夢だった。これからが人類にとっての悪夢の始まり。
 残念なことに、それこそが長い歴史の中で創造神が望んだ正夢だった。

 
一方、その頃――

 ランス一行はコールドスリープ装置から目覚める。

 「うわあ! イカマンだ!」

 目を覚ますと、目の前には一匹のイカマン。
 巨大戦艦遺跡の周辺の壁は、何故か歳月を重ねたようにボロボロになっている。
 主の目覚めを待っていた魔人サテラのガーディアンの岩肌にも違和感がある。
 
 外に出てヘルマンの帝都ラング・バウまで戻る。
 巨大戦艦遺跡の中に、ホルスの姿は何処にもなかった。
 
 「なんじゃっっっっっっっっじゃ、こりゃああああああああ!」

 流線形の建物が並ぶ異質な都市。それはランスたちの知るラング・バウではない。
 しかし、何よりも違いは……そこらを歩くのは人間ではなくイカマン。
 いたるところをイカマンが歩き、店を開き、働き、生活を営んでいた。

 そこに人間の姿は一切ない。
 
 「い、イカマンばかりですね……ランス様……」

 「ど、どうなっているのだ……」

 ランスはコールドスリープ装置の中で、遙か未来のもしもの夢を見ていた。

*ゲームデータ*

時系列 ランスⅩ Trun0 巨大戦艦遺跡の冒険(ジャハルッカス戦の前)
プレイヤー ランスX初プレイ(チュートリアル気分なので分岐は気分で選ぶ)

ゴーラク都市守備隊の大隊長
Lv18 ヘルマンの若者(光属性/突撃(弱)/若者の可能性)―オリキャラ(主人公)
 
第四軍の参謀に抜擢された前大隊長―モブキャラ(開戦時に戦死) 
第四軍の教練を担当していたLv30ヘルマン騎士(開戦時に戦死)
戦争前にヘルマン参謀長クリームにプロポーズするというフラグを立てた第二軍のボドゥ将軍(開戦時に公式で戦死)

今回のワンポイント

秘書も言っています。マニュアルにも書いてありました(うろ覚え)
分岐で迷ったらセーブが、ランスⅩの基本です。ちなみに私は一週目は何も考えてませんでした。
コールドスリープ装置の中で五か月後に目覚めなかったルート。私が見たのは二周目でした。
イカマンたちがメインプレイヤーとなったルドラサウム大陸の未来の可能性の一つ(創造神を何を思うのか)
ランスⅩを遊ぶのに必要なのは「ガメオベア(Gameove)」を楽しむ精神。
分岐の選択肢のなかで「これはアカンやろ」と思っても、あえてそこに踏み込む力があれば、物語が膨らみます。
私は良くも悪くも「失敗を恐れる日本人」なところがあるので最初は無難な選択肢ばかり選んでました。
周回を重ね、数多くのBADイベントを重ねるたびに「これくらいはセーブして早めに回収すればよかった」と何度も思います。
 
 

 
後書き
オリキャラは名前も設定の詳細も作っていますが、第一章までモブの一人として書くつもりです。
構想は第二部まで、プロットは序章の終わりまで作って書き始めてから公開しています。 
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