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ガンダム00 SS

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epilogue in 2314 ⑸

 
前書き
チャウメイ少佐の機転のおかげで行動を許されたスワンズ達。彼らは二手に分かれて両国に働きかけようとするが……。
 

 
チャウメイ少佐が発した任務は、俺の予想と完全にかけ離れていた。

停戦監視団第5分隊の輸送艦にあるブリーフィングルーム。そこで我々は、チャウメイ少佐とモニター越しに作戦内容を伝えられていた。

『我々連邦軍はX国、Y国に対する軍事介入を行うことになる。そこできみたちには、各国に行って連邦軍による介入について伝えてほしい。班は私が編成してある。ファイルに挟んでいるので参照するように。以上だ』

全員がチャウメイ少佐に向かって敬礼する。モニターが音もなく消えた。

ロックウェル中佐がいなくなった今、この分隊の指揮は副官のトーマス・キャロル少佐が務めている。彼は言った。

「チャウメイ少佐は我々にチャンスを与えてくれた。これを活かさない手はないぞ。分かるな?」

軍事介入の通達を各国に出す。これは建て前に過ぎない。チャウメイ少佐は確かに俺の上申を断り、軍事介入路線を残したままだ。だが、チャウメイ少佐は俺たちが動ける環境を作ってくれた。

連邦軍が正式に乗り出す前に、両国を説得して紛争を止める。チャウメイ少佐は暗にそうすることを指示しているのだ。

キャロル少佐はファイルの中の紙を取り出し、班編成について説明する。

「今回の作戦に関し、大幅な変更がある。MSパイロット2名とその他3名の増員だ。各自確認しておけよ」

俺は隣から渡された紙を見て、自分の名前を発見する。だが、その役割はMSパイロットではなかった。

X国の交渉班に自分の名が組み込まれている。言い出しっぺとして前線に飛び込むことになる。

エド・マックス中尉が俺に言った。

「MSは最悪の事態を除いて使わない。今は連邦軍の介入を阻止するために働きかけることに集中するんだ」

「はい。全力で挑みます」

これまでのデータを振り返ると、イノベイター軍下にあるX国は紛争に意欲的ではない。今回のスパイ工作で痛手を受けたX国を、我々が説得できるかが鍵になる。

武力で表面的に解決する時代はもう終わりにしなければならない。そう思う人間が増える世界を求めて、俺はようやく一歩目を踏み出した。


俺たちX国交渉班は、ムンバイ基地所属の中型輸送艦で基地を飛び立った。今から3時間ほどでX国の首都に到着する予定だ。

中央管制室にて、班のリーダーであるフランク・コークマン大尉はメンバーを見回し、口を開いた。

「ここにいる7名の働きが両国の紛争解決に繋がる。各員、気を引き締めろよ」

コークマン大尉は増員メンバー2名の方を向き、笑みを湛えた。

「君たちMSパイロットにも期待している。いざとなったら頼む」

背の高い角刈りの男と小太りの男が大尉に敬礼する。彼らは亡きロックウェル中佐たちのための補充員だ。角刈りが言った。

「はッ。しかし、お言葉ですがこの部隊は基本的に戦わないと伺っております。我々の出番はないのでは?」

「物事に絶対はないぞ。現に、この件の発端は我が部隊のスクランブル出撃だ」

コークマン大尉の視線が俺を捉える。それから、やれやれというふうに目元を和らげた。俺は小さく目礼する。大尉も増員パイロットの発言を予測していたのだろう。

顔合わせを終え、俺は管制室を出る。自室へ戻ろうと通路を歩いていたとき、後ろから声をかけられた。

「アル・スワンズ少尉」

振り返ると、そこにいたのはコークマン大尉だった。俺は素早く敬礼する。コークマン大尉は手で敬礼を制する仕草を見せた。俺は直立の姿勢を取る。

「少尉、今回の役目はX国の戦闘姿勢を抑制し、連邦軍の介入を未然に防ぐことだ。もうしばらくでX国内に入る。それまでにX国関係者リストを見直しておくんだ」

「はッ」

「余裕があれば、増員パイロットにノーヘッドの運用について説明して……」

コークマン大尉の言葉は全て発せられることなく途切れる。艦が大きく揺さぶられたのだ。

艦内に放送が入る。

『10時の方向より敵を確認。MS4機、方角からしてY国の可能性があります。コークマン大尉、至急ブリッジへお越し下さい』

コークマン大尉が険しい表情を浮かべながら俺に言った。

「何の余裕もないようだな。少尉、ついてこい」

「はッ」

俺たちは微振動する艦の通路を早歩きする。コークマン大尉の苦々しい声が聞こえてきた。

「……我々の情報が敵に漏れている。バックの旧人類軍に、連邦軍のスパイがいるかもしれない」

「彼らは、我々の行動を嫌がっているということですか」

「ああ。少なくとも、Y国側に停戦の意思はないな」

それから、少しの間を空けてコークマン大尉は呟いた。

「X国内まで持ち堪えれば、我々の勝ちだ。それができなければ……」

この空域でやられたら、停戦を促す存在はいなくなる。つまり、戦争が起きる。


 
 

 
後書き
『epilogue in 2314』をご覧いただきありがとうございます。どういうわけか閲覧数が安定していて笑えます。
最後までおつき合いいただければと思います。よろしくお願いします。 
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