ONEPIECE 空の王者が海を征す
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空の王者、狙われる
「聞こえてるかおっさん、猿達ィィィッッッ!!!黄金郷は、空にあったぞぉぉぉっっ!!!!」
天より降り注ぐ尊厳な声にも聞き間違えそうな程に厳かな鐘の音、その歌を聞くものは思わず息を飲みその歌声に酔いしれる。美しく甘美な鐘の音は天よりスカイピア全土へと響き渡っていく。低く厳かな音は重く聞く者の心へと染み渡りながらその記憶へと永久に残る記憶としてその存在を誇示し続ける。遥かな太古からある文明の栄華を誇示し証明した鐘の音。
「おやっさん……この音……!!」
「ああっ……こんなに響き渡る鐘は世界にたった一つだ…!へへっロマンじゃねえか」
「ハラハラしちまうぜ……!!」
自らの人生を壊した先祖へと挑戦と命と身体を削りながら海底へともぐり続けながらロマンを追い求め続けたモンブラン・クリケット、手下のマシラとショウジョウと共にジャヤで送り届けた麦わら海賊団のことを思いながら空を見上げていた時にその音は響き渡った。反射的に立ち上がり全神経敏感にその音を求めているかのようだった。
「(モンブラン・ノーランド……アンタは嘘つきじゃ、無かったんだな……)」
空に大きく浮かび上がった巨大な黒い人間の形をした影、それは何処か嬉しそうに飛び跳ねる少年のようだが自分達には見覚えがある気がした。何故なら頭に帽子を被っているからだ。麦わら海賊団も遭遇したという巨大な黒い怪物、それにはある言い伝えがあった。空にいる人間に強い光が当たった時に出来る影だと、つまらない幻想のような謂れだと忘れていたが如何やら真実だったようだ。大きく鐘の音とこの影が証明だ。
「俺の先祖は嘘つきじゃなかった……それを教えてくれたんだろ?ありがとうな、小僧……!」
『この島に到着し耳にしたのは、森から聞こえて来る奇妙な鳥の鳴き声とそれは大きな、大きな鐘の音だ。黄金からなるその鐘の音は何処までも、何処までも鳴り響き、あたかも過去の都市の繁栄を誇示するかのようでもあった。広い海の長い時間に咲く文明の儚きによせて、高々数十年全てを知るように語る我らには、それは余りにも重く言葉を詰まらせる。我らは暫しその鐘の音に立ち尽した』
「ああ……ノーランドの言う通り、すげぇ鐘の音だ……」
クリケットは安心したように地面に座りこみながらルフィ達の無事を喜びながらまだまだ鳴り響く鐘の音に酔いしれた。先祖が言い残した真実に浸るように。ルフィ達も鳴り響く音に酔いしれながらもクリケット達に鐘の音が届いている事を確信しながら勝利と安心の喜びに身を委ねた。一通り音色を全身で聞き終えるとレウスに乗り地上へと降下していった。その途中でルフィの鼻と食い意地が神官達の食料庫を発見しそこから運び出せるだけの食料を詰め込むとそのまま皆のいる遺跡へと駆け出して行きそこで皆と合流する事に成功した。
「レウスさぁんご無事でなによりです!!」
「ビビちゃんってぐびゃぁっ!!?」
「レ、レウスさん!?」
「バ、バックブリーカーふ、再び……」
思わず抱きついたビビによって既に身体がボロボロなレウスが悲鳴を上げた。それもその筈、動けたとはいえ古龍の攻撃を受けているのだから全身はガタガタのボロボロ、崩壊寸前と言っても過言ではないのにそこへ勢いよく抱き付けば崩れ落ちようとするのは必然である。
「い、医者ぁぁぁぁっっ!!!??」
「だからトニー君がお医者さんでしょ!?」
「そうだった!?」
「ど、如何でもいいからさっさと診て、くれ……」
大急ぎでチョッパーが診察と治療が開始される、落雷による火傷と一部の骨の骨折と打撲と切り傷。しかしそこまで酷いという事も無く寧ろゾロよりも怪我自体は軽いとの事。というのも身体の自己治癒力が以前よりも高まっているらしくそれによる回復で怪我の方は治って来ているとの事、問題は身体に蓄積している疲労のほうらしい。
「いやぁやっぱりランブルきついわ……慣れてきたけどそれでも身体に来るもんがある」
「トニー君の変形とはまた違った感じですもんね、形が変わるって言うよりもレウスさん自体が変わってるって感じですし」
「うん。それはやっぱり悪魔の実の差だと思う、幻獣種って俺も分からないけど不思議な生き物になるって事だから」
ルフィ達が食料を馬鹿食いしているのを見ながらレウスはビビと自分の事に付いて語り合っていた。どうやらビビもレウスとキリンとの戦いの最中は僅かに意識があったらしくランブルを使った際の姿を見ていたがチョッパーの形態変化とはまた違う何かを感じずにはいられなかった。
「兎も角、今はゆっくりさせて貰うよ……流石に疲れたよ」
「そうですね、でも凄いワクワクする冒険でした!」
「ははっビビちゃんにとっては今回の事も冒険か。いいねぇ若い子は」
「ほらほらレウス!何年寄りぶってるのよアンタも食べなさいよ!」
「分かったよナミちゃん」
その日の夜から数日、麦わらの一味が主催した宴が催された。冒険の成功とエネルに勝利した事を祝いと400年も続いた怨恨を消し去り新たな道を進むスカイピアとシャンディアの事を祝福する宴が……。
数日続いた宴も終わりを告げ皆が疲れ寝静まった頃、ルフィが黄金を奪って逃げる事を提案しそれを一味は受託。英雄で居続ける事など海賊らしくないというルフィの発案に皆は賛成だった、それに黄金が手に入るのならば貧乏な航海ともおさらば出来るというもの。黄金を確保し逃げるまでそれぞれが空島でやりたいことをするという自由時間を得た、レウスは一人でこのアッパーヤードの開放を目指していたゲリラの長老に会いに行っていた。
「聞きたい事は何だろうか、私が話せる事ならば良いのだが」
エネルを倒し鐘を鳴らしたという事もあり此方への感情は好意的、共に宴もした仲という事もあり長老も協力的。何を聞きたいかはレウスの中で決まっていた。
「この島で俺は雷を司る奴と遭遇した。その幻獣について知りたいんだ」
「……もしや空の幻獣の事か」
空の幻獣、それがこの空でのキリンの名前。確かに幻獣という響きはマッチしている。あれ程に神々しく美しい獣もそうはいない。
「空の幻獣は滅多に姿を見せない、正しく幻のような存在。私も見た事はないが……それと遭遇したのか」
「ああ……あいつはずっとこの島に?」
「言い伝えによれば400年、大戦士カルガラが健在のより居たという。その時から幻のような存在とされ出会った者には力を与えるとされている」
400年も昔からキリンはこの島で生きていたという事になるがそうなる、古龍というのはそれだけ長寿ということなのだろうか。だとしても可笑しくはないが力を与えるというのはどこか納得が言った気がする。
「だが気を付けられよ。幻獣に出会ったものは運命が捻じ曲がるという言い伝えも存在する、お主も出会った事で何か起こるかも知れんぞ」
「運命か……」
自分の運命など既に狂っている気がする、この世界に来ているという時点で。だがそれがまた捻じ曲がったのならばどのような事が起こるのかを知りたいという欲求もあるのも事実。
「上等だ、どんな運命でも来やがれってんだ」
そのまま長老に感謝をし皆の所に戻ると大量の黄金を確保した皆に出くわし思わず彼も笑顔になった。これでナミから鱗を剥がされて金策にされるという事も無くなるからである。そしてロビンが戻ると走り出し空島から去る為にメリー号へと駆け出して行った。
「DEAD OR ALIVEね……どうせなら生け捕りの方を選ぶのが当然」
波に揺られる船が一隻、その甲板の上で椅子に腰掛けながら紅茶を嗜みながら手配書を見つめている影が一つ。見つめている手配書は二枚、その内の一枚にはある海賊の写真と名が刻まれている。そしてもう一枚にも同じように写真と名が刻まれているがそれはやや異なっていた。
「ONLY ALIVEって当然か、彼女は一応被害者なんだし?」
『砂漠の王女 ネフェルタリ・ビビ』
ビビに関する手配書までもが製作されるのは至極当然の事と言える。表向きでは彼女はレウスによって誘拐拉致された王女という事になっている。そんな彼女を確保する為に生け捕りのみにし賞金をつけるのは当然と言えるがそれを見ていた人物は直ぐに別の手配書に目を向ける。
「空の王者、レウス……ふふっそう、この人なのね……私の目標は……ぁぁいいわね。滾ってきちゃう……」
艶っぽい声を上げつつも身体を抱きしめるその人物、興奮を覚えつつも身体に力が入っていく。すると影が徐々に変化して行き異形の物へと変わっていく……そしてそれは真っ直ぐと恋する乙女のように恍惚として表情でレウスの手配書を見続ける。
「早くお会いしたいですわ……私の旦那様……♡」
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