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英雄伝説~灰の軌跡~ 閃Ⅲ篇

作者:sorano
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異伝~終焉に諍う英雄達の来訪~第2話

同日、14:30―――



~クロスベル帝国・光と闇の帝都クロスベル・西門付近~



「これは……ヘイムダルと街道を結ぶ出入り口である”門”と比べても遜色がない立派な”門”だな……」

「一体どういう事でしょう……?以前の”特別演習”でもクロスベルを訪れましたがその時はこのような”門”は無かったのですが……」

「それも”リンさん達が知るクロスベル”と”私達が知るクロスベル”の”違い”が関係しているのでしょうね。……ユウナさん、念のためにお聞きしますが、クロスベルは以前からこのような”門”はありませんでしたよね?」

「あ、当たり前よ!というか、クロスベルでの”特別演習”の時にミュゼもⅨ組やⅧ組の人達と一緒にオルキスタワーの警備をする為にクロスベルを訪れたんだから、クロスベルにこんな”門”が無かった事くらい、ミュゼも知っているでしょう!?」

クロスベルと街道を結ぶ巨大な”門”に到着し、”門”を見たクルトは呆け、アルティナは困惑し、落ち着いた様子で質問してきたミュゼに対してユウナは疲れた表情で答えた。

「”特別演習”に”オルキスタワーの警備”、ね…………」

「まさかとは思うが来月に行われる”三帝国交流会”の事を言っているのかもしれないね……まあ、それはともかく。――――ようこそ、”光と闇の帝都”クロスベルに。」

ユウナ達の会話を聞き、エオリアと共に真剣な表情を浮かべていたリンは気を取り直して口元に笑みを浮かべてユウナ達に歓迎の言葉をかけた。その後ユウナ達はリンとエオリアの案内によって、遊撃士協会の支部に向かった。



~遊撃士協会・クロスベル支部~



「あら、リンにエオリアじゃない。お帰りなさい、どうやらその様子だと”星見の塔”の手配魔獣は予想よりも早く討伐できたみたい……って、あら?どうしてその娘達がここに……今月のトールズ第Ⅱ分校の”特別演習”はアルトリザスで、今日終わったばかりでしょう?なのに、どうして”新Ⅶ組”の娘達がクロスベルにいるのかしら?」

「?僕達の事をご存知なのですか?」

リン達が遊撃士協会の支部に入ると独特の口調を持つ受付の男性―――ミシェルはリン達と共にいるユウナ達に気づくと目を丸くし、ミシェルが自分達を知っているような口ぶりを不思議に思ったクルトはミシェルに訊ねた。

「フフ、遊撃士協会の情報網を舐めてもらっては困るわよ?けどおかしいわね……確か情報だと”新Ⅶ組”のメンツはユウナに黒兎のお嬢ちゃん、それにヴァンダールの次男だけだったはずだけど………」

「へ…………」

「どうやらその口ぶりですとミュゼさんとアッシュさんが”新Ⅶ組”に転属した事をご存知でない様子ですが………」

「いえ、恐らく”知らない”のではなく、”この世界の新Ⅶ組に私とアッシュさんはまだ転属していない時期”なのですから、独自の情報網を持つ遊撃士協会の受付の方もご存知でないのは当然かと。」

ミシェルの話を聞いたユウナが呆けている中、戸惑いの表情をしているアルティナにミュゼは自身の推測を口にした。

「君とアッシュが”まだⅦ組に転属していない時期”という事は……まさか、僕達は過去のクロスベルに飛ばされたのか!?」

「いえ、正確に言えば”過去の並行世界のゼムリア大陸”に飛ばされたかと。そうでなければ、帝国の属州化したクロスベルがエレボニアから独立したどころか”帝国”として建国している事もそうですが、私達が知らない事実をエオリアさん達は世間一般の事実として認識している事に説明がつきません。」

「へ、”並行世界”って……!物語とかに出てくる、同じ世界でありながら中身は全く違う世界っていうあれの事……?い、一体何がどうなっているのよ~!?アル、もしかしてヴァリマール―――ううん、”騎神”には並行世界の過去に飛ばす機能とかもあるの?」

驚いている様子のクルトの推測を冷静な様子で否定したミュゼの説明を聞いたユウナは信じられない表情で声を上げた後アルティナに訊ね

「いえ、わたしも教官からそんな機能がある事は聞いた事がありません………というかそれ以前に幾ら騎神といえど、そのような非常識な性能は搭載していないかと。」

訊ねられたアルティナは疲れた表情で答えた。

「へ、”並行世界の過去”って……ハア……そう言った非常識過ぎる出来事は1年半前の件で終わりだと思っていたのだけどね………」

「というかむしろ、あの時以上の非常識な出来事じゃない……」

「やれやれ……どうやらあたし達はとんでもない事情を抱えた娘達を拾ったみたいだね。まあその件は一旦置いておくとして、まずはお互いの自己紹介を始めた方がよさそうだね――――」

一方ユウナ達の様子を見守り、ユウナ達が何者かを察したミシェルは表情を引き攣らせた後エオリアと共に疲れた表情で溜息を吐き、リンは苦笑した後気を取り直して提案をした。その後その場にいる全員は互いの自己紹介をした。



「なるほどね……新Ⅶ組のメンツの事情に多少の違いはあれど、ある程度は同じみたいね。」

「そうね……まあ、アルティナちゃんに関しては私達の世界のアルティナちゃんの事情と比べると全く違うけどね。」

「え…………」

「へ……こっちの世界のアルとあたし達の傍にいるあるの事情が全く違うってどういう事ですか?」

溜息を吐いたミシェルの言葉に続くように苦笑しながら答えたエオリアの答えを聞いたアルティナは呆け、ユウナは不思議そうな表情でエオリアに訊ねた。

「まず私達の世界のアルティナちゃんが新Ⅶ組に所属する前に所属していた組織はエレボニアの”情報局”じゃないもの。」

「ええっ!?」

「………ちなみにこちらの世界のアルティナは新Ⅶ組に所属する前はどのような組織に所属していたのですか?」

エオリアの答えを聞いたユウナが驚いている中クルトは質問を続けた。

「う~ん……”組織”というか、一般家庭に所属している……って言うべきかい?」

「”所属”なんて言い方をしたら、リィン君達が良い顔をしないのじゃないかしら?リィン君達にとってアルティナちゃんは家族同然の存在だもの。」

「それ以前に大貴族に昇格する事が確定しているシュバルツァー家は”一般家庭”じゃないでしょ。」

困った表情で答えたリンにエオリアとミシェルはそれぞれ苦笑しながら指摘し

「………………………」

「アルティナさんがリィン教官やエリゼ先輩――――”シュバルツァー家”の”家族同然の存在”、ですか?それは一体どういう事なのでしょうか?」

「しかも教官の実家―――”シュバルツァー家”が大貴族に昇格する事が確定しているとも仰っていましたが……」

リン達の会話を聞いていたアルティナは呆けた表情で黙り込み、ミュゼとクルトは困惑の表情でリン達に訊ねた。



「私達の世界のアルティナちゃんは様々な事情によってリィン君達――――シュバルツァー家に引き取られて、シュバルツァー家の使用人としての立場なのよ。ちなみにシュバルツァー家は”男爵”から”公爵”に昇格する事が確定しているわ。」

「な―――――」

「ええっ!?ア、アルが教官とエリゼさんの実家の使用人!?」

「しかもシュバルツァー家が”公爵家に昇格”する事が確定、ですか……一体何があってそのような事に……」

エオリアの説明を聞いたクルトは驚きのあまり絶句し、ユウナは信じられない表情で声を上げ、ミュゼは信じられない表情をし

「まあ、使用人とは言っても、リィン君達もそうだけど、リィン君達のご両親のシュバルツァー男爵夫妻も本当の家族のようにアルティナちゃんを可愛がっているらしいけどね。」

「………こちらの世界のアルティナの事情は僕達の世界のアルティナの事情とは随分違うんだな………」

「これも私達が知る世界と似て非なる世界―――並行世界である証拠、という事でしょうね。」

「………わたしが教官やエリゼさんの実家の使用人で家族………………あの、一体何があってこちらの世界のわたしはそのような事になっているのでしょうか?まさかこちらの世界のわたしは1年半前の内戦時、貴族連合軍の”裏の協力者”の一人として貴族連合軍に所属していなかったのでしょうか……?」

更なる驚愕の事実を知ったクルトが戸惑っている中ミュゼは静かな表情で答え、呆然とした様子で聞いていたアルティナは我に返ると困惑の表情でエオリア達に訊ねた。そしてエオリア達はアルティナがシュバルツァー家の使用人になった経緯―――――”七日戦役”や”七日戦役”でのエレボニア帝国の戦争相手であるメンフィル帝国について説明した。



「………………………」

「ゼムリア大陸とは異なり、天使や悪魔、それに獣人や妖精と言った空想上の種族が実際に存在している事に加えて複数の”神”までも現存している世界――――”ディル=リフィーナ”の大国の一つである”メンフィル帝国”、ですか。」

「しかも14年前の”百日戦役”の結末すらもそのメンフィル帝国という国の存在でエレボニアはセントアークを始めとしたいくつかの領土を失う形になり、更に”七日戦役”という戦争でおよそ半分に当たる領土を手放している上和解の為に”ハーメルの惨劇”まで公表しているとはな……」

「正直な所、共通している部分はわたし達の世界の人物だけで国家の事情を含めればほとんど”別世界”と言ってもおかしくない世界ですね。リィン教官が旧Ⅶ組の出身ですらない上エリゼさんはアルフィン皇女殿下の御付きの方でもないのですから、この世界の教官やエリゼさん、わたしに関しては似ているのは容姿だけで性格等に関してはほぼ”別人”かもしれませんね。」

”七日戦役”やメンフィル帝国の事を知ったユウナは驚きのあまり口をパクパクさせ、ミュゼは真剣な表情で呟き、クルトは重々しい様子を纏って呟き、アルティナは疲れた表情で呟いた。

「ちなみにアタシ達の世界の灰色の騎士の坊やは好色家の一人としても有名でね。”七日戦役”の和解条約の一つとしてエレボニアのアルフィン皇女と既に結婚している上、他にも婚約者が8人もいるのよ?」

「えええええええええええええええっ!?きょ、教官が既に結婚していて、その相手がアルフィン皇女様で、しかもそこに加えて婚約者が8人!?」

「………どうやらこの世界の教官はとんでもなく不埒な存在になっているみたいですね。」

「というか皇女殿下を既に娶っている事に加えて8人も婚約者がいるなんて、色々と滅茶苦茶だな………」

「うふふ、まさに”英雄色を好む”、ですわね♪こちらの世界の私が羨ましいですわ………こちらの世界の教官でしたら、私の事も教官の伴侶の一人として受け入れてくださる事も容易でしょうし♪」

ミシェルの口から出た驚愕の事実にユウナは驚きの声を上げ、アルティナはジト目で呟き、クルトは疲れた表情で溜息を吐き、ミュゼはからかいの表情で答えた。

「ミュゼ、あんたね…………っていうか、あたし達の世界の教官の恋人はアリサさんとエリゼさんですけど………もしかしてその教官の8人の婚約者の中に二人も入っているんですか?」

「ええ、勿論その二人もいるわよ。――――しかもエリゼちゃんは数多くいるリィン君の妻の中でも正妻になる予定との事よ。」

「皇女殿下が先に教官の伴侶として嫁いでいらっしゃっているのにエリゼさんが”正妻”、ですか………」

「まあ、教官のエリゼさんに対する普段の接し方を考えるとある意味納得ですね。」

「ふふ、先に教官と結婚なさった姫様を差し置いて教官の”正妻”になるなんて、私達の世界のエリゼ先輩と姫様が知れば、どのような反応をなさるでしょうね♪」

ミュゼの発言に呆れた後疲れた表情で訊ねたユウナの質問に答えたエオリアの答えを聞いたクルトは信じられない表情をし、アルティナはジト目で呟き、ミュゼは小悪魔な笑みを浮かべた。

「まあ、リィン君自身は自分が世間から”好色家”とみられている事に大変不本意……というか、『何でそんな風にみられるんだ……誤解だ!』と頭を抱えて叫んだ事もあるそうだけどね。」

「誤解も何も、ロイド先輩みたいに本物のハーレムを築いているんだからその通りじゃない………っていうか、よくよく考えてみるとあたし達の世界の教官の周りの女性事情も変わらない気がしてきたわ……他の旧Ⅶ組の女性の大半の人達もそうだけど、クレア教官やアルフィン皇女様、それにトワ教官も怪しいし………」

「……教官の事情はともかく教官自身の性格や考え等に関してはわたし達の世界の教官と一致しているかもしれませんね。」

エオリアの説明を聞いて冷や汗をかいて表情を引き攣らせたユウナは呆れた表情で呟き、アルティナはジト目で呟いた。



「まあ、真面目な話をすると”七日戦役”勃発の件でメンフィル帝国内でのアルフィン皇女の立場は正直、かなり不味い立場だって話だったからね。それを考えると自国の跡継ぎの皇女の専属侍女長を務めている事で自国の皇族や貴族達の信頼がある灰色の騎士の義妹を差し置いてアルフィン皇女を正妻にするなんて、メンフィル帝国からすればそっちの方が絶対に許容できない話だっただろうね。むしろ、アルフィン皇女自身にとってはその方がよかったと思うよ。和解条約の件で灰色の騎士とアルフィン皇女の結婚が決まるまでに灰色の騎士は既に6人もの婚約者がいて、その事によってアルフィン皇女は灰色の騎士の妻としての序列は低い妻として灰色の騎士に嫁いだお陰で皇族の重圧や責任から解放された上、メンフィル帝国内での社交界みたいなメンフィル帝国の上流階級達が集まるパーティーとかにも出席する必要もないからね。」

「……それは………」

「えっと………どうして、教官の妻としての序列が低いお陰でパーティーとかにも出席しなくていい事がアルフィン皇女様にとって良い事なの?」

静かな表情で語ったリンの説明を聞いて事情を察したクルトが複雑そうな表情を浮かべている中事情がわからないユウナは不思議そうな表情で自身の疑問を口にした。

「先程”七日戦役”の説明でシュバルツァー卿を頼ってユミルに避難していた姫様がユミルに滞在し続けていた事が原因でアルバレア公が雇った猟兵達がユミルを襲撃したという話があった事は覚えていますわよね?メンフィル帝国からすればユミルに滞在していた姫様は、猟兵達が自国の領土を襲撃した”元凶”の一人として見ているでしょうから、その件を踏まえるともし姫様がメンフィル帝国内での社交界等に出席をすれば、メンフィル帝国の上流階級の方達からは厳しい目で見られたり時には嫌味等を言われたりする可能性もあるのです。」

「通常伴侶がいる貴族が社交界等に出席する場合同行するのは正妻で、他にも側室や妾がいても、同行させるのは正妻以外だとせいぜい序列が2位や3位の女性だ。さすがに9人もの伴侶がいる貴族は聞いた事はないが………少なくても妻としての序列が7位の皇女殿下がメンフィル帝国の社交界等に出席する必要はないから、リンさんは”良かった”って言っていたんだ。」

「な、なにそれ………アルフィン皇女様は被害者なのに、何でそんな風に見られなくちゃならないのよ……!あたし、貴族や皇族のそういう所が全く理解できないわ!」

ミュゼとクルトの説明を聞いたユウナは怒っている様子で答えた。

「ちなみに先程から気になっていたのですが、ミシェルさん達はリィン教官の事をよくご存知のような口ぶりですけど………こちらの世界のリィン教官はミシェルさん達――――クロスベルの遊撃士協会の関係者達とも親交があるのですか?」

「親交があるも何も彼、所属していた期間は短かったけど”特務支援課”が再開されてからIBCによる各国に対する”資産凍結”が行われるまで”特務支援課”に所属していたんだから、支援課の坊や達と一緒に彼もアタシ達と連携して協力する事があったのよ?」

「…………………え。」

「こちらの世界のリィン教官はランドルフ教官やティオさんがかつて所属していた”特務支援課”に……………」

アルティナの質問に対して答えたミシェルの答えを聞いたユウナは一瞬固まった後呆けた声を出し、クルトはユウナを気にしながら驚きの表情で呟いた。



「えっと……ミシェルさんは教官が”特務支援課”が再開されてから配属されたって言っていましたけど、それって”特務支援課”の増員としてワジ先輩やノエル先輩も特務支援課に配属された頃ですか……?」

「ええ、そうよ。そう言えばさっき灰色の騎士の坊やが支援課のリーダーの坊やみたいにハーレムを築いているって言っていたけど………もしかして、そっちの世界の支援課のリーダーの坊やもハーレムを築いているのかしら?」

ユウナの問いかけに頷いたミシェルはある事が気になり、苦笑しながら訊ねた。

「ええ………一応現時点で正式にお付き合いしている相手はエリィ先輩と(イン)さんですけどティオ先輩やノエル先輩もいつかエリィ先輩達みたいにロイド先輩と付き合う事を目指している話を聞いた事がありますし、レン先輩も正直怪しいんですよね………」

「へ………”レン”って、まさかとは思うけど菫色の髪の小悪魔な性格をしていて、あらゆる才能に恵まれている女の子の事を言っているのかしら?」

ユウナの説明から意外な人物の名前が出た事に驚いたミシェルは一瞬呆けた後ユウナに確認した。

「あ、はい。レン先輩は支援課にいた期間はマクダエル議長の暗殺未遂事件が起こるちょっと前あたりからD∴G教団事件解決後一端支援課が休止したあたりですけど、1年半前のクロスベル動乱の時に仲間の人達と一緒に駆けつけてロイド先輩達に合流して、クロスベルを覆っていた結界を守っていた結社の”執行者”や”蛇の使徒”を退けた後クロスベルの解放や碧の大樹の攻略にも力を貸してくれたんです。」

「驚いたわね………まさか、あの”殲滅天使”が”特務支援課”に所属していたなんてね。しかも支援課やクロスベルの危機に駆けつける程仲間想いな性格をしているなんて、こっちの”殲滅天使”を知っている側としたら正直想像できないわ。」

「そんな事よりもティオちゃんに加えてあのレンちゃんまで支援課にいた事が重要よ!クッ、世界は違えど可愛い女の子達がいろどりみどりなのは一緒だなんて、可愛い女の子達に恵まれている支援課の運が羨ましいわ……!」

「ハア………こんな時くらいその悪い癖を抑える事はできないのかい?………しかしそっちの世界では一体何があってあの”殲滅天使”が特務支援課に所属していたんだろうねぇ……」

ユウナの口から出た驚愕の事実にミシェルは目を丸くし、本気で羨ましがっているエオリアの様子にユウナ達が冷や汗をかいて表情を引き攣らせている中呆れた表情で溜息を吐いたリンは苦笑した。



「………”殲滅天使”?その異名はレン先輩の妹さんの異名で、あたし達の世界のレン先輩自身の異名はそんな異名じゃないですよ?」

「あら?そちらの世界の殲滅天使―――いえ、”レン”には妹がいて、その妹の異名が”殲滅天使”なのかしら?」

「はい、レン先輩そっくりの双子の妹さんで名前は偶然にもあたしと同じ”ユウナ”って名前です。何でも昔は元結社の”執行者”で恐らくその関係だと思うのですけど実の姉のレン先輩との仲も相当悪かったらしくて、D∴G教団事件解決後色々あって仲直りした上レン先輩の実家――――ブライト家の一員になったそうです。あ、それと”パテル=マテル”っていう結社が開発した騎神や機甲兵クラスの人形兵器の操縦者でもあります。」

「ちなみに”ブライト家”とは恐らくそちらの”ブライト家”と同じだと思うのですがリベールの英雄―――”剣聖”カシウス・ブライトの実家です。」

新たな驚愕の事実がユウナとアルティナの口から出るとミシェル達は冷や汗をかいて表情を引き攣らせ

「なんていうか………改めてその娘達の世界はアタシ達の世界とは全然違う事が思い知らされたわね………」

「そうね……レンちゃんに双子の妹がいて、その妹が元結社の執行者兼パテル=マテルの操縦者である事もそうだけど、その妹やレンちゃんがまさかカシウスさんやエステル達の家族になっているなんて、一体何があってそうなったのか本気で知りたくなってきたわね………」

「ちなみにそっちの世界の”殲滅天使”……じゃなかった。”レン”はどんな異名を持っているんだい?ユウナの口ぶりだと、そっちの世界の”レン”も異名を持っている程の有名な存在なんだろう?」

我に返ったミシェルは疲れた表情で溜息を吐き、エオリアは苦笑し、ある事が気になったリンは興味本位の様子でユウナ達に訊ねた。

「えっと確か………”戦天使の遊撃士(エンジェリック・ブレイサー)”って異名で呼ばれているサラさんやアガットさんと同じA級正遊撃士です。」

「――それと兄上や教官達―――旧Ⅶ組の人達からの又聞きになるのですが………レンさんは”八葉一刀流”に彼女の義兄にあたる”焔の剣聖”が”八葉一刀流”と共に修めている剣術である”アルバート流”、そして”アルゼイド流”と15歳という若さで3つもの異なる剣術の”免許皆伝”を修めている正に”武”の才能に愛されていると過言でもない双剣士で、その事から”小剣聖”、”菫風の双剣姫”とも呼ばれていて剣士としてもとても有名な存在です。」

「加えて”戦天使の遊撃士(エンジェリック・ブレイサー)”は剣術以外にも様々な武装の使い手でもあり、剣術の他には双銃、魔導杖(オーバルスタッフ)、そして体術に関しては教官も修めている”八葉一刀流”の体術に加えて”泰斗流”も修めているとの事です。」

「な――――そっちの”レン”は遊撃士―――それもA級正遊撃士で”八葉一刀流”を含めた3つもの剣術を”免許皆伝”している事に加えて、銃に魔導杖、更には泰斗流まで扱えるのかい!?」

「さっすがレンちゃん!世界は違えど、可愛い事が最強である事を証明しているわね!」

「そんな驚愕の事実を知ってもアンタは全然ブレないわねぇ…………それにしてもそちらの世界の”レン”は戦闘能力に関してはこっちの世界の”レン”を上回っているのじゃないかしら?………って、今”レン”の義兄に当たる”焔の剣聖”って名前が出て来たけど、まさかその人物もブライト家の人物なのかしら?」

ユウナとクルト、アルティナの説明を聞いたリンは信じられない表情で声を上げ、嬉しがっている様子のエオリアに呆れたミシェルは溜息を吐いた後ある事に気づいた。



「はい。――――”焔の剣聖”ルーク・ブライト。年齢は30歳前後の男性でリィン教官と同じ”八葉一刀流”と彼自身が元々修めていた”アルバート流”の二つの剣術を修めているA級正遊撃士で、レンさん同様S級正遊撃士候補だとの事です。」

「なお、ルーク・ブライトはブライト家に来るまでの経緯が不明で、”百日戦役”末期劣勢になった帝国軍によるロレント襲撃時に現れて逃げ遅れたロレントの市民達の避難誘導等を行い、その後ブライト家の養子になったとの事です。」

「へ~……そっちの世界のブライト家も一家揃って凄腕の遊撃士揃いで、S級候補である事まで一緒だなんてね……そう言えば、アナタ達の口ぶりだとそっちの世界の灰色の騎士の坊やは旧Ⅶ組に所属していたみたいだけど……どうして旧Ⅶ組がそっちの世界の”レン”を知っているのかしら?」

クルトとアルティナの説明を興味ありげな様子で聞いていたミシェルはある事を思い出してユウナ達に訊ね

「!……え、えっと……それは………」

「――――レンさんは旧Ⅶ組のメンバーでもあった為、教官達もレンさんの事をよくご存知なのです。」

ある事情を思い出したユウナが気まずそうな表情で答えを濁しているとミュゼが静かな表情でミシェル達にとって再び驚愕の事実となる情報を答えた―――――
 
 

 
後書き
え~……今回の話で閃Ⅳの布石となる為に登場したユウナ達の世界は原作軌跡シリーズではなく、まさかの世界だと気づいたと思います(ガタガタブルブル)そして閃Ⅳも当然書くつもりで某世界観のユウナ達を登場させた訳ですから………もしかしたらまさかのキャラ達同士による共闘、共演が実現するかもしれません(ぇ)ちなみに現時点で閃Ⅳ参戦を予定している光と闇の軌跡側のクロスオーバーキャラは戦女神陣営並びに神採り陣営の一部、それと空を仰ぎて雲高くシリーズのキャラ達です(冷や汗)なお、帝都クロスベルのBGMは魔導巧殻の”胎動 ~帝国の未来を見据えて~”で、ユウナ達が自分達の世界のレン達の事を話し始めた時のBGMはアビスの”Crimson pride”か”The last chapter”だと思ってください。


 
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