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ドリトル先生と奈良の三山

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第十一幕その九

「私、そして奈良の他の神の使い達にとっても」
「神々もだね」
「まことに。本当に文献がありませんと」
 どうしてでもというのです。
「忘れてしまいます」
「その頃に生きていてもなのね」
「昔のことだから」
「人間みたいに忘れてしまうんだ」
「そうなの」
「全部忘れる訳ではないですが」 
 それでもというのです。
「大昔過ぎますと」
「成程ね」
「じゃあ卑弥呼さんのことは」
「ここって卑弥呼さんの町って言ってるけれど」
「邪馬台国とかね」
「どうだったか」
 首を傾げさせての返事でした、今の白鹿のそれは。
「わかっていません」
「確か三世紀位だよね」
「そうそう、卑弥呼さんってね」
「皇室の関係者だったとか言われてるよね」
「そうもね」
「どうだったでしょうか」
 本当に覚えていない感じの返事でした、今の白鹿のそれは。
「果たして」
「ああ、覚えてないんだ」
「三山のことと同じで」
「卑弥呼のことも」
「そうだったの」
「九州という説もありましたね」
 邪馬台国のあった場所はです。
「この近畿ではなく」
「うん、僕はまだそちらは本格的に研究していないけれど」 
 それでもとです、先生も言います。
「けれどね」
「それでもですね」
「うん、邪馬台国が近畿にあったかというと」
「否定されませんか」
「かなり有力な説みたいだね」
「そうですか」
「うん、ただ白鹿さんもその頃は」
 三世紀位はです。
「覚えていないというか」
「生まれていなかったですね」
「そうだよね」
「私は大体五世紀か六世紀に生まれた様です」
 その頃にというのです。
「そして弥生時代からです」
「記憶がはっきりしてきているね」
「そうですから」
「三山のことも邪馬台国のことも」
「記憶はかなり」
 実際にというのです。
「曖昧なのです」
「そうなんだ」
「はい」
 こう言うのでした。
「もっと言えばかなり忘れています」
「そういうことだね」
「ですから先生の論文を読ませて頂きたいのです」
「じゃあ頑張って書くね」
「宜しくお願いします、そして」
「そして?」
「奈良は如何でしたか?」
 先生にこうも聞いてきた白鹿でした。
「こちらは」
「素晴らしい場所だとしかね」
「言い様がありませんか」
「僕としてはね」
「学びがいがありましたか」
「そう、観光としてもね」
 こちらの見地からもというのです。
「素晴らしい場所だよ」
「食べものも結構いけるし」
「噂みたいに駄目じゃなかったわ」
「美味しかったわ」
「そちらも楽しめたよ」
「それは何よりです」
 白鹿は動物の皆にも応えました。 
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