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レーヴァティン

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第四十六話 忍の者その六

「一つやることがある」
「奥さんに別れを告げるのか」
「ちょっとの間家を出るってな」
「伝えるか」
「そうするわ、その間待っててくれや」
「そういえばであります」 
 峰夫は家の中を見回した、土間と畳が印象的な日本古来の家だ。耕平はその家の中にいるがいるのは彼だけだ。 
 それを見てだ、峰夫は耕平に言った。
「貴殿だけであります、今家にいるのは」
「そやろ、それがしは今まで家の中で縄を作ってたんや」
「そうだったでありますか」
「かみさんはよその家の草履作りの手伝いに行っててな」
 それでというのだ。
「今はおらんわ」
「左様でありますか」
「もうそろそろ帰って来るやろ、それでや」
「奥方が帰られたら」
「まあ時々こっちには帰って来るけどな」
「まずは十二人全員集める」
 英雄は耕平に今の旅の目的を話した。
「そしてだ」
「それからでござるな」
「旗揚げをするがな」
「その時にかみさんを迎えられる家も」
「建てることになるわ」
「わかったわ、その時まではや」
 耕平も英雄の言葉を聞いて頷いて言った。
「旅に出るな」
「それまでがあるからな」
「それでだな」
「話しとくわ」
「それでなのですが」
 今度は謙二が耕平に聞いた。
「奥方も結城殿のことは」
「勿論話してるで」
「それでご存知なのですか」
「そやで」
 実際にというのだ。
「それやからな」
「お話をすれば」
「もう通じるからな」
「ではお別れの挨拶ですか」
「少しの間のな、それでそれがしのかみさんはな」
 ここでこれまで以上に陽気な声になった耕平だった、その陽気な声で英雄達にこうした話もしたのだった。
「めっちゃ可愛いんや」
「そうなのか」
「一回見たらびっくりするで」
「そこまでの美人か」
「美人っちゅうか可愛いな」 
 これが耕平の返事だった。
「そうした意味でやからな」
「会ってみろというか」
「そや」
 笑って仲間となった者達に話した。
「まあ見てみいや」
「そこまで言うのなら見せてもらう」
 英雄は腕を組み確かな声で耕平に応えた。
「是非な」
「ああ、もうすぐやで」
 笑って応えた耕平だった、そして実際にすぐにだった。
 一人の女が来た、その女はというと。
 背は一三〇程であどけない顔立ちに大きな目と紅の小さな唇、白い顔である。非常に整って可愛らしい感じだ。
 黒髪は長く伸ばしていて人形の様だ、着物も帯も赤で実によく似合っている。その少女を見てだった。
 すぐにだ、英雄は耕平に問うた。
「奥さんか」
「そうやで」
 耕平は英雄に明るい笑顔で答えた。
「わいのかみさんや」
「はじめまして、妻です」
 その少女も陽気に言ってきた。
「主人のことは聞いています」
「そうか、一つわかったことがある」
 英雄は耕平に顔を戻して彼に言った。 
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