儚き想い、されど永遠の想い
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481部分:最終話 永遠の想いその三
最終話 永遠の想いその三
その二人にだ。真理は言ったのだった。
「大丈夫です」
「いけますか」
「御一人で」
「はい、大丈夫です」
こう言ってだ。二人の支えをいいとしてだ。そのうえでだ。
一人で上体を起こして義正の水を受け取り。そうしてだった。
両手に持ったそれを口に近付けて飲む。ゆっくりと、だが確かに。
それを飲んでからだ。真理は義正に顔を戻して。
そのうえで。こう言ったのである。
「服を着替えてきます」
「そうしてですね」
「はい、桜はどうなっているでしょうか」
「咲いています」
遂にそうなったとだ。義正は微笑み真理に話した。
「ですから。いよいよです」
「観に行けるのですね」
「その為にですね」
「はい、着替えてきます」
まさにそうするとだ。真理は義正に述べた。そうしてだ。
その言葉を受けてだ。義正もだ。
静かな微笑みでだ。真理に話したのである。
「では。待たせてもらいます」
「そうしてですね」
「桜を観に行きましょう」
またこう真理に告げたのである。
「三人で」
「はい、それでは」
こうしてだった。真理はだ。
水を飲み終えてからベッドから出た。一人で歩けた。
だが婆やはずっと傍にいる。
その彼女に付き添われて部屋を後にしてだ。着替えに入るのだった。
その彼女を見送ってからだ。義正もだ。
後ろに立つ佐藤にだ。言ったのだった。
「では私もです」
「はい、着替えられますね」
「服は何がありますか」
「和服があります」
それがだというのだ。
「この前買ったばかりの」
「そうですか。和服ですか」
「それを着られますか?」
「はい」
そうするとだ。義正は頷いて答えた。
「是非それに」
「わかりました。それでは」
「それでどういった和服でしょうか」
「大人しいですが絹を使ったものでして」
「絹ですか」
「とても着心地がいいかと」
「そうですね。絹はです」
義正も絹についてよく知っていた。それでだ。
目を細めさせてだ。佐藤に述べたのである。
「着ているとそれだけで」
「さらりとしますね」
「それが絹のよさですね」
「そうです。そして絹は」
さらにだ。絹について述べていく彼だった。
「多くの命が関わるものですし」
「蚕達のですか」
「だからこそ余計に大切にして着なければならないものですね」
「そうですね。絹はただそれだけでできるものではありません」
「そうしたものですから」
余計にだとだ。義正は述べていく。
「有り難く着させてもらいます」
「それではお部屋に」
「はい、今から」
こうしたやり取りの後でだ。義正もだった。
晴れ着に着替えに向かった。それを受けてだ。
この部屋に集まっていた二人の親兄弟達もだ。静かに顔を見合わせてだ。
そのうえでだ。穏やかに部屋を去った。それを見てだ。
看護婦はだ。こう言ったのだった。
「本当にお外に出られるとは」
「私達も行くよ」
医師がだ。その彼女に述べてきた。
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