獣篇Ⅱ
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23 売り言葉に買い言葉 R-15指定 〈完結話〉
停めてある船まで阿伏兎を運ぶと、また子と万斉が私の迎えに来ていた。
それを見た神威が口を開く。
_「あ、きみたちはシンスケのところのお侍サンたちでしょ?零杏の迎えにでも来たノ?」
_「そうでござる。拙者らもちょうど地球に用事があってな、ついでなら、ということで晋助に命じられたでござる。」
_「そういうことッス。なんで零杏、船に帰るッスよ。」
二人に腕をとられる。まるで、連行されるようだ。
_「じゃ、私はこの辺で失礼するわね。ちなみにこの衣装はどうしたらいい?返すべき?」
_「いや、返さなくていいヨ。将来のために取っといたら?は…」
_「わかった、わかった。
じゃ、神威に阿伏兎、気をつけてね。」
鬼兵隊の船に乗り込む。
_「さ、出発するでござる。幸い、母船は近くにあるでござるから、すぐに着くでござるよ。」
_「晋助様がお待ちッス。帰ったらすぐ、部屋に戻るッス。」
_「分かりました。…ですが、なぜ私は腕をとられたままなのですか?」
_「いやッスか?」
また子が悲しい目をする。
え、なんかやりにくい…汗)
_「い、いや、嫌なわけではないし、むしろ嬉しいけど、腕がきつそうだな、って思っただけよ。気にしないで。」
_「そうッスか?嬉しいッス。帰るまで離さないッス!」
とか言って、ますます締め付ける腕の力が強くなる。
まぁ、いい。どうにでもなれ。
放っておくことにした。
_「もうすぐ着くでござるよ。」
はッとしてフロントガラスを見ると、前方近くに鬼兵隊の船が見えてきた。
_「当機はドッキング体制に入りました。ゲート付近へお急ぎください。」
とアナウンスが入ったので、また子と万斉に連れられ、船に戻った。
廊下を歩いていると、晋助の部屋の前に来た。万斉がノックすると、中から声がする。どうやらいるようだ。
ドアを開けて、中に入る。
_「零杏、よく戻ったなァ。
万斉、また子。よくやった。」
ん?どゆ意味?
_「え?」
だが、その間に、あっという間に万斉たちが退出してしまったので、聞こうにも聞けない状況だった。
逃げられないカナ?
さりげなく部屋を出ようとしたが、晋助にガッツリhold on された。
_「行かせねェ。もうしばらくは、お前を離したくねェ。お前は…」
_「オレのもんだ、って?」
_「よく分かってンじゃねェか。」
_「ハハーン)なるほど。
このままでは私が春雨にいったっきり戻ってこなかった、なんて最悪のシナリオでも考えてたんでしょ?ww」
_「さァな。」
知らない顔をしてみせる晋助。そしてしばらく明後日の方向を見ていたので、その隙に逃げだそ
うしたが、その手を捕まれてくるんとひっくり返されてキスをされた。
顎も固定されていて動かせないのに加えて、舌も入ってこようとする。
頑なに反抗し続けたら、キスは終わり、膝の下に晋助の細身で、でも筋肉質な腕に抱かれ、所謂お姫様抱っこスタイルになった。降ろしてもらえるようにじたばたするも、晋助には全然効かない。
_「ククク)結局おめェは女だなァ。」
してやったり、という悪い笑顔を浮かべている。
_「女ですがなにか?」
あえて、ツンとした態度を貫く。
こんなことした仕返しだ。
_「ほォ、あくまでオレに逆らう気がある、と捉えるぜ?」
_「じゃあ仮に逆らえば、何があるのですか?監禁でもするのですか?」
_「監禁…か。それもありだなァ。いいこと聞いた。」
敷いてあった布団の上に、放り投げられる。その勢いで転がり逃げようとしたら、腰を捕まれ、引き戻された。
_「オイ、また逃げようってかァ?」
_「いやいや、そんな訳…」
私の上に覆い被さる。
_「じゃァ、覚悟はできてんなァ?」
対策を考えろ、私!
_「い、いや…ただ、お風呂入ってからがいいんじゃないかな、って思いマス…私は。」
_「どうせなら、後から入った方がいいと思うぜェ?オラァ。」
ヤバいです、もうすでに封じ込められてマス。組み敷かれてマス。
顔が近い。欲に駆られた目をしている。
_「どうせ汗かくんだしよォ。」
ちょっと掠れた声で、耳元で囁く。思わずドキッとした我が身を殴りたい気分である。
キスの雨が降ってきた。苦しくて、彼の筋肉質な胸板を必死で叩くものの、結局邪魔だ、とほどいた自分の帯で縛られた。そうすれば抵抗もできめェ、としたり顔で耳元で囁く。
_「オレに逆らえばどうなるか、体に叩き込まねばなるめェ?」
ろくな抵抗もできないのも癪に触って抵抗してしまう。それが本当に危険な状況でも。
こちらも黒い笑みを浮かべて応戦する。
_「やれるもんならやってみればいい、」
その言葉を境に、戦いの火蓋は切られた。
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