獣篇Ⅱ
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21 太陽を敵に回していいことは一つもない。
_「なんだ、この光はァァッ!」
よし、上手くいったようだ。
_「お前なんぞに、オレたちの灯は消せやしねェ!」
天井が開き始めた。
_「お前なんぞに、この光は消せやしねェ!」
_「こ、これはッ…!この光はッ…!まさかぁッ…!…太陽ッ…!」
鳳仙が、苦しみ悶える。
銀時の一撃が、鳳仙に届いた。
_「我が天敵よ。久しぶりに会っても菜にも変わらぬなァ。遥か高みからこの夜王を見下ろしおって。ん全く…!なんっと忌々しい!だが、なんと美しい姿よ。」
神威が傘をさして、鳳仙の元に行くのを、後ろから、皆の後ろから見つめる。
_「人とは哀れなものだねェ。己に無いものほど欲しくなる。届かぬものにほど手を伸ばす。夜王に無いもの…それは光。旦那ァ、あなたは太陽のせいで渇いていたんじゃない。あなたは、太陽がないことに渇いていたんだ。誰よりも疎み、憎みながらも、誰よりも羨み、焦がれていたんだ。オレたちが決して手に入れることのできない太陽に。冷たい戦場ではなく、暖かい光の下で生きることに。決して消えない、その目の光に!故にその光を奪った女たちを己のいる夜へ、この常夜の国へ引きずりこんだ。そして、それでもなお消えぬ光を、憎み愛したんだ。」
その間に、衣装と髪と仮面を片付けて、きっちり仕舞うように魔法をかけて、下に来ていた第七師団の衣装姿になる。そして、手にはお馴染みのあの傘。
_「フフフフフ)
愛…?一体そんな言葉、どこで覚えてきた?神威。そんなもの、わしが持ち得ぬのは貴様が一番よく知っているはずだ。わしと同じ道を歩む貴様であれば、神威。お前はわしと同じだァ。戦う術しか知らん。欲しいものは全て戦って力ずくで奪う。気に食わぬ者も全て戦って、力ずくでねじ伏せる。愛も憎しみも、戦うことでしか表現する術を知らぬ。神威、お前もいずれ知ろう。年老い、己が来た道を振り返った時、我らの道には何もない。本当に欲しいものを前にしても、それを
抱き締める腕もない。爪を立てることしかできぬ。引き寄せれば引き寄せるほど、爪は深く食い込む。手を伸ばせば伸ばすほど、遠く離れてゆく。…なぜ、こんなにも焦がれているのに…わしは渇いてゆく…?見えん!もう何も……ひ、日輪…。」
_「なぜ…お前さえもわしを嫌う…?なぜ…お前さえわしを拒む…?なぜ…こんなにも焦がれているのに…わしは渇いていく…?見えん…もう何も。……ひ、日輪…」
_「やっと…見せてあげられた。ずっと…見せてあげたかった。この空を、あなたに。言ったでしょ?きっとお日様と、仲直りをさせてあげる、って。あたし、知ってたのよ、ずっと。どんなに威張り腐ったって、どんなにひどいことしたって、あなたは夜王なんて大層なものじゃないことくらい。あなたはただ、こうしたかったのよね?こうして日向で居眠りしたかっただけな普通のおじいちゃんなのよね?ただそれだけなのに、なのに…こんな馬鹿げた街まで造って。皆を敵に回して…バカな人。ホントに…バカな人…。」
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