天国と地獄<中世ヨーロッパパロディー>
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15 嘘から出た誠
_「で?この戦いが零杏にとって不利であることも、全て承知の上でこんな茶番をやってんですかィ?」
_「ええ。そうですわ。
お姉様が王の座に着くのは許せませんの。」
_「だがそれも、上手くいくかは分かんねェぜ?ホラ、見てみろよ。
あの神威相手にここまで対抗できたヤツはいるか? 」
と、土方が顎をしゃくる。
戦いのほうを見ると、零杏が神威をねじ伏せている。
_「零杏ッ!?」
長い脚を組み替えて、麗奈はのんびり眺めていた。
_「ま、全てはどこまで零杏お姉様が持ちこたえられるか、に懸かってますわ。」
_「てめェッ!」
と、銀時が怒鳴る。
試合終了の合図がなった。
どうやら今回は零杏が勝ったようだ。
_「そんなはずがないわ…
お姉様が勝てるわけがないのよ、
あの神威に。」
もうすでに戦いで疲れきった零杏は、この試合を続けるべきか、
それともここで試合をやめるか…
窮地に立たされていた。
だが、外野から銀時たちの叫び声が聞こえてきた。
_「零杏ッ!負けるんじゃねェェェッ!お前はやればできる子だッ!」
と、銀時。
_「オレたちのことは考えるなッ!
お前はただ、自分のことだけを考えてりゃいいんだッ!」
と、土方。
_「そうですぜィ!?零杏は、悪魔族なんかに負けるようなヤツじゃねェェェッ!
ぶっ潰してやれやィッ!」
と、総悟。
ありがとう、
ありがとう皆…
_重なる影 見えない絆で
支えあい生きてゆく_
どこかで聞いたような歌が頭にかかる。
そう、私は負けるわけにはいかない。
なんとしてでも、天使族に勝利を!
次は、空中戦である。
箒を持って、宙を舞う。
またもや激しい戦いになったが、今回も勝てそうだ。よし、このまま…という時に、私は不意に飛んできた攻撃を面と向かって食らってしまった。とっさに箒を握りしめ、なんとか体制を整えたが、神威はまだ攻撃をやめない。
激しい戦いが続く。この戦いに勝てば、自動的に勝ちが決まったようなものだ。負けるものか。
30分後、ようやく戦いに終止符か打たれた。勝ったのは、私である。
こんなにもトントン拍子に進むのは、なんか怖いが、考えると余計ドツボにはまりそうなので、考えないことにした。次の戦いにだけ、意識を持っていくことにした。
とりあえず、勝つべ試合には勝てたので、戦いは終わった。閉会の合図なのか、今まで座っていた麗奈が立ち上がった。だが私は、戦いが終わってホッとしたのか、その場に座り込んでしまった。
麗奈が口を開いた。
_「只今の結果、零杏の勝利。
だから、人質たちは返します。」
力の入らない脚に鞭打って、解放された皆のもとに駆け寄る。
_「お帰りなさい、みんな!」
抱き合った。だが、神威は立ちすくんだままだった。神威のもとに歩いていく。側まで行って、手を差し出す。
_「なんだヨ、その手は。」
_「休戦の証よ。お互いにいい勝負だった。でも、今日は、運が良かったわ。じゃあね、」
握手しあった。
手を離してから、その場を去った。
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